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#079 伊方原発3号機運転差止

仮処分申立却下即時抗告事件

広島高裁決定 記事・社説(論説)・決定要旨

2017.12.13

 

◉  記 事

伊方原発の運転差し止め 広島高裁が仮処分 
18年9月まで 2017.12.14 日本経済新聞

 四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島市の住民らが求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、2018年9月30日まで運転を差し止める決定をした。熊本県の阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合は安全が確保されないとして「新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理だ」と結論付けた。

 11年3月の東京電力福島第1原発事故後、原発の運転を差し止める高裁の司法判断は初めて。

 伊方原発3号機は定期検査のため停止中。18年1月の再稼働を予定していたが、仮処分決定は直ちに効力が生じるため、決定が覆らない限り運転は再開できない。四国電は異議申し立てや決定の効力を止める執行停止の手続きを取る方針。

 野々上裁判長は、原子力規制委が福島原発事故後に策定した新規制基準の合理性は認めた。その上で火山の安全性審査の内規で「過去最大の噴火規模を想定する」としていると指摘。伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山の危険について「約9万年前の過去最大の噴火規模を想定した場合、火砕流が伊方原発敷地に到達する可能性が小さいとはいえず、立地は認められない」と判断した。

 仮処分は訴訟に比べると証拠調べの手続きに制約がある。このため、訴訟が係争中の広島地裁が異なる判断をする可能性を考慮に入れ、運転差し止めの期間を18年9月末までとした。

◉  社 説(論説・主張)

朝日新聞 2017.12.14

 火山列島の日本で原発を稼働することへの重い問いかけだ。

 愛媛県四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分決定を、広島高裁が出した。熊本県阿蘇山が巨大噴火を起こせば、火砕流伊方原発に達する可能性が否定できない、との理由だ。

 周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい。国の原子力規制委員会電力会社は決定を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 新規制基準の内規である「火山影響評価ガイド」は、原発から160キロ以内に火山がある場合、火砕流などが及ぶ可能性が「十分小さい」と評価できなければ、原発の立地に適さないと定めている。

 また、巨大噴火の時期や規模の予測はできないというのが多くの火山学者の見方だが、これについては、規制委は予兆があるはずだとの立場をとり、電力会社に「合格」を与えてきた。

 広島高裁は、巨大噴火が起きることは否定できないとする火山学者らの見解を踏まえ、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山で9万年前と同規模の噴火が発生したら、原発が被災する可能性は「十分小さい」とはいえないと指摘。規制基準を満たしたとする規制委の判断を「不合理」だと結論づけた。

 火山ガイドに沿った厳正な審査が行われていない、という判断である。

 司法からの疑義は、今回が初めてではない。

 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)をめぐる昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定は、巨大噴火の発生頻度は低く「無視し得るものと容認するのが社会通念」として運転差し止めを認めなかった。だが、ガイドが噴火を予測可能としていることは「不合理」と断じていた。

 火山リスクの審査のあり方の不備が、繰り返し指摘されている事実は重い。規制委は、火山学者の意見に耳を傾け、根底から練り直すべきだ。

 数万年単位の火山現象のリスク評価が難しいのは事実だ。決定は、社会は自然災害とどう向き合うべきか、という根源的な問いを投げかけたといえる。

 巨大な災厄をもたらす破局的噴火が起これば、日本列島の広範囲に壊滅的な被害が及ぶ。原発だけ論議してどれほど意味があるか、という見方もあろう。

 しかし福島第一原発の事故の教訓は、めったにないとして対策をとらなければ、取り返しのつかない被害を招くというものだった。再稼働を進める政府は教訓に立ち返り、火山国で原発が成り立つかも検討すべきだ。

読売新聞  2017.12.14

 伊方差し止め 再び顕在化した仮処分の弊害

 

 世界で最も厳しいとされる規制基準に沿い、原子力発電所の安全対策を講じる電カ会社にとっては、新たな対応を迫られる司法判断だろう。

 広島高裁が、愛媛県の四国電力伊方原子力発電所3号機の運転を来年9月末まで差し止めるよう命じる仮処分を決定した。広島市と松山市の住民の申し立てを退けた広島地裁の決定を覆した。

 10月から提起検査に入っている3号機は、来年1月に運転再開予定だった。四電は決定を不服として、執行停止などを広島高裁に申し立てる方針だ。当分、運転再開は見通せない状況となった。

 証拠調べをを十分に行わずに短期間で判断する仮処分は、効力も即座に生じる。高度な知見を要する原発訴訟への適用には慎重であるべきだ、とかねて指摘されてきた。その弊害が改めて顕在化した。

 3号機は一昨年7月、原子力規制委員会の安全審査に合格した。福島第一原発事故の経験を踏まえた新規制基準に基づく。

 この審査結果について、高裁は、地震や津波に比べて、火山の危険性に関する判断が非合理的だとして運転を認めなかった。

 高裁が問題としたのは、原発から約130キロ離れた熊本県の阿蘇山だ。1万年に1度程度の破局的な噴火が起きれば、火山灰などの噴出物が大量に飛来し、火砕流が到達する可能性さえ、ゼロではない、との見解を示した。

 規制委は、原発の原則40年の運転期間に照らせば、破局的噴火の可瞼性は極めて小さい、として運転を認可した。ゼロリスクに固執しない常識的は判断だった。

 原発に限らず、破局的噴火を前提とした防災対策は存在しない。殊更にこれを問題視した高裁の見識を疑わざるを得ない。

 ただし.高裁が新規制基準の運用上の弱点を突いた、との見万もできるのではないか。

 新規制基準は、地震や津波などの自然災害に対して、最大規模を想定した上で安全性を確保で老る強度を求めている。過剰とも言える活断層評価はその代表例だ。

 一方で、火山噴火では、発生する可能性が小さいと判断されれば.原発の設置が認められる。

 高裁は、地震、津波と火山でリスク判断を使い分けている基準の運用方法に疑問を投げかけた。火山噴火にだけ甘いのではないのか、という問題提起だろう。

 火山リスクが争点の訴訟は、九州電力玄海、川内両原発でも起こされている。規制委には、基準の在り万の再検討も求められる。

 

 

毎日新聞 2017.12.14

 伊方原発差し止め命令 噴火リスクへの重い警告

 原発の安全性への疑問が、司法界に広がっていることの証しだ。国や電力会社は重く受け止めるべきだ。

 昨年再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について、広島高裁が運転差し止めを命じる仮処分決定を出した。高裁では初となる。

 伊方原発から約130キロ西に阿蘇がある。四電は噴火で約15センチの火山灰が積もると想定したが、決定はこの想定を過少だと判断した。

 そのうえで、伊方原発を安全審査で合格させた原子力規制委員会の判断は不合理だと結論付けた。

 世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされたと言えよう。

 東京電力福島第1原発事故を受けて定められた新規制基準に基づき、電力会社は、原発から160キロ圏の火山の影響調査を義務づけられた。原発の運用期間中に噴火が起きて、火砕流や溶岩流が到達する恐れがあると評価されれば、立地不適格で原発は稼働できない。

 阿蘇は約9万年前に巨大噴火(破局的噴火)を起こし、世界最大級の陥没地形(カルデラ)ができた。

 四電は、より小規模の噴火を想定し、火砕流などが阿蘇から到達する可能性は十分に低いと評価した。規制委も認めた。

 一方、広島高裁は、現在の火山学には限界があり、過去最大規模の噴火を想定すべきだと指摘。原発の敷地に火砕流が到達する可能性は低いとは評価できない、と判断した。

 この決定に従えば、現在稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)も停止の対象となるだろう。

 周辺には、阿蘇のほか鹿児島湾など、複数のカルデラがあり、巨大噴火の影響を受ける危険性が全国の原発の中で最も高いとされる。九電は四電と同様に、運用期間中にそうした噴火が起きる可能性は十分低いと評価し、規制委も了承していた。

 日本で巨大噴火が起きるのは1万年に1回程度とされている。だが、頻度が低いからといって対策を先送りすれば、大きなしっぺ返しを受けることを、私たちは福島第1原発事故で学んだはずだ。

 政府や電力会社は、原発の火山対策について、さらに議論を深めていく必要がある。

日本経済新聞 2017.12.14

 原発の火山対策への警鐘だ

 四国電力の伊方原子力発電所3号機(愛媛県)について、広島高裁は来年9月末までの運転差し止めを命じる仮処分を下した。

同原発は原子力規制委員会の安全審査に合格し、昨年8月に再稼働していた。東京電力福島第1原発事故後にできた規制基準に適合した原発に対し、高裁が差し止めを命じたのは初めてだ。

 いまは定期検査のため停止中で、四国電は来年1月に運転再開を予定していた。だが仮処分は直ちに効力をもつため、当面の運転再開は見通せなくなった。

 原発の差し止めを求める申請は各地で起きているが、広島高裁の判断は時限措置がつく点を含め、変則的といえる。

 高裁は差し止めを命じた根拠として、火山の大規模噴火に対する四国電の想定が甘く、規制委の審査も不十分だと指摘した。

 伊方原発の約130キロ西には阿蘇山がある。ここで最大級の噴火が起きた場合、火砕流が原発の敷地に到達する恐れがあり、立地自体が不適切とした。

 ただ、この問題は広島地裁で審理中の訴訟で争点になっている。地裁での判断を待つために、高裁は運転差し止めに期限をつけた。

 四国電や規制委は、高裁が噴火対策に憂慮を示した点は重く受けとめるべきだ。差し止め期間を、噴火対策を改めて点検する猶予期間とみなし、広島地裁の訴訟などで説明を尽くす必要がある。

 一方で、広島高裁は規制基準や安全審査の妥当性をめぐっては、規制委が専門的・技術的知見から総合的に判断しており、「合理的と認められる」とした。

 原発の差し止め申請ではこれまでも国の安全審査の妥当性や、安全性を立証する責任は誰にあるか、住民の避難計画は適切かなどが争点になってきた。だが、裁判所が正反対の決定を下すこともあり、判断の根拠もまちまちだ。

 仮処分で原発が即座に止まれば電力供給に及ぼす影響は大きい。判例を重ねて、司法判断に一定の目安ができるのが望ましい。

 

産経新聞(主張) 2017.12.14

伊方停止の決定 阿蘇の大噴火が理由とは

 再稼働済みの四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)に対し、広島高等裁判所が運転停止を命じた。

 広島地方裁判所は、地元住民から出された運転差し止めの仮処分申請を3月に却下していた。高裁判断は、これを逆転させたものである。

 同高裁は、運転を認めない理由として、伊方原発から130キロの位置にある阿蘇山の巨大噴火を挙げた。

 9万年前の破局的噴火の規模なら、火砕流が到達する可能性は否定できないとした。

 あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか。

 高裁は、逆転決定の理由の中で、想定したレベルの破局的噴火の発生確率が「日本の火山全体で1万年に1回程度」であることを認めている。

 また、その種のリスクを、無視し得るものとして容認するという社会通念が、国内に定着しているという常識論も述べている。

 その一方で、原子力規制委員会が策定した火山事象の安全審査の内規に、破局的噴火の火砕流が含まれていることを、運転差し止めの根拠とした。

 全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定といえる。

 しかも、広島地裁で審理中の本訴訟の行方をながめ、異なる判断がなされる可能性もあるとして、運転停止期間を「来年9月30日まで」と限定する自信のなさだ。

 仮処分の決定なので、四国電力は現在、定期検査中の3号機の運転ができなくなった。

 同社は「到底、承服できるものではない」として異議申し立てを表明した。電力の安定供給を担う事業者の立場では当然である。

 原発の再稼働とともに、運転差し止めを求める仮処分の申請が各地裁などで相次いでいる。その結果は分かれているが、抗告審での高裁判断は、耐震強化などの対策を施した原発の安全性を認めたものとなっていた。

 今回の広島高裁の決定は、こうした大勢に水を差す対応に他ならない。規制委の安全審査に合格した原発への仮処分自体、そもそも不適切ではないか。

 高裁の判断は、今後の各地裁でのよりどころとなるべきであるにもかかわらず、混乱を助長するものとなった。極めて残念だ。

河北新報 2017.12.14

 伊方原発差し止め決定/高裁も立地に厳格な判断

 四国電力伊方原発(愛媛県)の3号機を巡って、広島高裁がきのう、火山の噴火による影響を理由に運転を差し止める決定を行った。

 これまで原発の運転差し止めは地裁の判決や仮処分決定で認められたケースはあったものの、上級審の高裁では初の差し止め判断。全国の高裁はこれまで「行政追認」が目立ち、地裁判断を覆してきたが、福島第1原発事故後の新規制基準を厳格に適用して、差し止めの結論を導いた。

 過酷な原発事故に見舞われた以上、司法も事故以前のように漫然と国などの言い分を認めることはできないはず。安全性の実質を可能な限り追い求める責任は極めて重くなっている。

 伊方3号機については、広島県の住民らが運転差し止めの仮処分を申し立てた。広島地裁はことし3月に却下。住民側は広島高裁に即時抗告していた。

 争点になったのは津波や噴火の影響。地裁は「原子力規制委員会の判断に不合理な点はない」と追認したのに対して、高裁は一転、九州の阿蘇カルデラの噴火による影響を指摘して差し止めを認めた。

 伊方原発は九州に近い四国の西端にあり、阿蘇までの距離は約130キロ。今回の決定によると、新規制基準では原発から160キロ以内の火山を対象に、3段構えで影響を評価しなければならない。

 まず、原発の稼働期間(約40年)で火山活動の可能性を見積もる。十分小さいと判断できない場合は噴火規模を推定する。それも不可能なら過去最大の噴火を想定し、火砕流が到達する可能性が十分小さくなければ、立地は認められない。

 阿蘇は約9万年前に起きた巨大噴火を想定することになり、そのケースだと「火砕流が伊方に到達する可能性は、十分小さいと評価できない」と判断された。

 四国電力にとっては厳しい想定かもしれないが、広島地裁は「『限定解釈』をして、判断基準の枠組みを変更」したというのが高裁の立場。結局、新規制基準適合という原子力規制委員会の判断は不合理と結論づけた。

 原発と自然災害との関わりは、さまざまな議論があるだろう。どこまでの規模を想定するかが焦点になるが、こと原子力に対しては、考え得る限り最大の災害にも備えるという発想が不可欠。重大な原発事故は、とてつもない影響を及ぼすからだ。

 福島の事故後、原子力に厳しい見方を示す司法判断が目立ち始め、関西電力の大飯、高浜両原発(いずれも福井県)でも、地裁で差し止め判決などが出されている。

 「高裁の壁」は厚く、差し止めが確定したケースはまだない。ただ、法律や基準を厳密に評価するのは、司法の最低限の役割。安全性の確かな手応えのためには、さらに深く追究する姿勢が必要だ。

秋田魁新報 2017年12月14日

 伊方原発差し止め 極めて重い高裁判断だ

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁は13日、運転を差し止める決定をした。原発再稼働や運転を禁じる司法判断は、これまで地裁ではあったが、高裁では初めてであり、影響は大きい。
 伊方3号機は昨年8月に再稼働し、現在は定期検査中で停止している。四国電力は来年1月に送電を再開し、2月には営業運転に入る見通しだったが、事実上不可能になった。
 高裁が運転差し止めの理由として示したのは、火山噴火による危険性だ。過去の例を挙げながら、阿蘇山(熊本県)から約130キロの距離にある伊方原発について「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断。新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理だとし、「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論付けた。
 原発運転に関し火山の影響を指摘した意義は大きい。噴火が起きた場合、被害は広範囲に及ぶ可能性が高い。桜島がある鹿児島県・川内原発は大丈夫かという議論にもつながりそうだ。原発再稼働を進める政府や各電力会社は今回の決定を重く受け止めなければならない。
 住民側弁護団は「思いが通じ、瀬戸内海が守られた」と話した。一方、四国電力は「到底承服できない」と述べ、高裁に異議申し立ての手続きを取る方針だ。原子力規制委は「新基準は不変ではなく最新の知見を取り入れ改善していく」としたものの、高裁決定による今後の判断への影響は否定した。
 決定では特段触れていないが、今回住民側が、原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の算出に当たって、原発近くを通る国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」や、南海トラフ巨大地震の影響が過小評価されていると主張したことにも目を向けたい。特に中央構造線断層帯は昨年の熊本地震を機に活発化することも懸念されており、警戒が必要だ。
 伊方原発は細長い半島に位置しており、事故発生時には住民が孤立する恐れもあるなど避難上の課題も指摘されている。安全が確保されているとは言い難く、今回の決定を機に見直しを図るべきだろう。
 福島第1原発事故後、原発に不安を訴える住民が運転差し止めを求める訴訟は各地で相次いでいる。伊方3号機に対する同様の仮処分は、松山地裁の却下決定を受けた高松高裁での即時抗告審のほか、大分地裁と山口地裁岩国支部で争われており、今後の決定が注目される。
 広島高裁の決定は、火山国で地震の多い日本で原発が絶対安全だと保証することの難しさを浮き彫りにした。安倍政権は原発を重要な基幹電源と位置付けているが、安全面を考え脱原発依存にかじを切る必要がある。

福島民報

 論説での論評なし。

福島民友

 社説での論評なし

茨城新聞(論説) 2017.12.14

 伊方原発差し止め決定 再稼働政策見直しの契機に

 大事故の危険があるとして広島市の住民らが、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転差し止めの決定を下した。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の司法判断は初めてだ。

 事故から間もなく7年、国や電力会社がここへきて加速させている原発の再稼働路線に対し、司法が周辺住民の意見をくみ上げ、厳しい判断を突きつけたことを政策決定者らは深刻に受け止める必要がある。

 決定は、九州・阿蘇山の大噴火が伊方原発に与える影響について原子力規制委員会や四国電力が行った評価の不十分さを指摘しており、九州電力をはじめとする他地域の原発の安全性評価にも反省を迫る内容となった。

 東電の事故後、規制委は、活動する可能性が否定できない火山が原発から半径160キロ以内にある場合、火砕流や火山灰などの影響を評価し、必要に応じて対策を求める「火山影響評価ガイド」を定めた。

 規制委は、ガイドに基づいて、伊方原発から約130キロの場所にある九州の阿蘇カルデラが大規模な噴火をした際でも、火砕流が原発に到達する可能性は十分に小さいと評価。2015年7月、3号機が「原発の新規制基準を満たしている」と結論付け、再稼働に道を開いた。これに対し、3号機が再稼働した昨年8月以降、周辺の4地裁・地裁支部で住民らが運転停止の仮処分を申請。差し止めを認めなかった今年3月の 広島地裁決定に対し、住民側が高裁に即時抗告していた。

 高裁は決定の中で、火山噴出物の量や火山降下物の厚さなどに関する四国電力の想定が「過小である」と認定。「伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理」だと断じた。

 「まるで福島原発事故などなかったかのように、原発を再稼働させる動きが加速している」とする住民の危機感を司法が受け止め「生命、身体に対する具体的危険の存在」を認めた形だ。

 国のエネルギー政策について、今回の決定が持つ含意は大きい。

 経済産業省は現在、14年に定めた国のエネルギー基本計画の見直し作業を進めている。

 現在の原発を取り巻く状況を見れば「30年度に電力供給の20〜22%を原子力で賄う」との目標達成が困難だと指摘する識者は多いが、経産省はこの目標を見直さない方針を早々に表明。それどころか次期計画の中で、原発の新設や建て替えの重要性に言及することを検討、原発の経済性をアピールし再生可能エネルギーの問題点を指摘する情報をホームページに掲載するなど、原発への傾斜を強めている。

 来年に予定していた再稼働が困難になり、経営状況が悪化するとの懸念から四国電力の株価は暴落した。今回の決定は、規制委のお墨付きを得た原発でさえ、大きな「司法のリスク」を抱えていることも示した。

 経産省などの政策決定者も電力会社の経営者も、今回の決定を、既得権益を重視する旧態依然としたエネルギー政策とその決定手法を見直し、市民の意見や世論を反映させたエネルギー政策を日本で実現するための契機とすべきだ。

東京新聞・中日新聞 2017.12.14

伊方差し止め 火山国の怖さを説いた

 阿蘇山の巨大噴火が起きたら、火砕流が到達する可能性が否定できない-。広島高裁は四国電力の伊方原発の運転差し止めを命じた。自然の脅威を甘く見る風潮こそ、3・11は戒めていたが。

 「火山ガイド」と呼ばれる原子力規制委員会が策定した安全性審査の内規がある。例えば、原発から半径百六十キロ以内に位置し、将来、活動の可能性がある火山については、その活動が小さいかどうか調査する。

 小さいと判断できないときは、噴火規模を推定する。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定し、設計対応不可能な火砕流が原発に到達する可能性が小さいかどうかを評価する。

 その可能性が小さいと評価できない場合は原発の立地は不適となり、原発を立地することは認められない-。以上がガイドだ。当たり前のことが書いてある。

 火山である阿蘇山(熊本)から、伊方原発(愛媛)までの距離は約百三十キロであり、同ガイドの範囲内である。だから過去最大の噴火を想定し、火砕流が原発まで達する可能性も評価せねばならない。広島高裁はいう。

 <火砕流が伊方原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価することはできないから、原発の立地は不適であり、原発を立地することは認められない>

 最大級の噴火でない場合も点検している。その場合でも大量の火山灰が降り積もることになり、やはり原発を動かすことも、そもそも立地も不可となる。何と明快な論法であろうか。

 だが、同じ火山ガイドをテーブルに置いて、同じ問題意識を持ちながら、正反対の結論になってしまった裁判所がある。昨年四月の福岡高裁宮崎支部である。

 九州電力・川内原発(鹿児島県)の運転差し止めの求めを退けた。巨大噴火の時期や規模はだれも予測することはできない。だが火山ガイドに従って論理展開せず、同支部は原発政策を「社会通念」で認めてしまった。

 火山国であるゆえに、今回の決定は広がりを持つ。火砕流を伴う噴火は九州、東北、北海道でありうる。火山灰であれば、全国どの原発でもありうる。

 福島第一原発の事故後、初めてとなる高裁レベルの原発運転差し止めの司法判断だ。理詰めの決定ではあるが、思い知らされるのは、われわれが世界有数の地震国、火山国に住んでいるということだ。

新潟日報 2017.12.14

 伊方差し止め 福島事故風化への警鐘だ

 住民の命や暮らしを守るためには、どのような「想定外」も許されない。それが、東京電力福島第1原発事故が突き付けた教訓である。

 福島事故の風化が懸念される中、原発の安全確保の徹底を求め、安易な再稼働を戒める重みのある司法の判断といえよう。国や電力会社は真摯(しんし)に受け止めなければならない。

 広島高裁は、愛媛県伊方町にある四国電力伊方原発3号機について運転を差し止める仮処分を決定した。

 決定は直ちに効力を持つ。対象期間は来年9月30日までだ。3号機は定期検査中で来年1月の稼働再開を目指していたが、事実上不可能となった。四国電力は異議申し立てなどを行う。

 仮処分は広島市の住民らが申し立てたものだ。広島地裁はことし3月に仮処分を認めない決定を下し、住民側が高裁へ即時抗告していた。地裁の決定が覆ったことになる。

 注目したいのは、福島事故以降、高裁段階で原発の再稼働や運転を禁じる初めての司法判断が示されたことである。その意味でも、今回の決定が持つ意義は大きい。

 主な争点は、原発の耐震設計の目安となる基準地震動で電力側が出した結果の合理性、福島事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準による審査の在り方、近隣の火山噴火による危険性などだった。

 野々上友之裁判長は、原発が熊本県の阿蘇カルデラから130キロに立地していることを重視し、「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」とした。

 火山の危険性に関して新規制基準に適合するとした規制委の判断は不合理と指摘し、「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論付けた。

 火山以外については新基準の合理性などを認めた適合性判断も妥当としたものの、「火山噴火と原発」の問題が改めてクローズアップされたといえる。

 伊方3号機の運転差し止めでもう一つ注視したいのは、立地県から離れた広島市の住民が申し立てたことだ。

 伊方原発3号機の仮処分は、広島地裁に加え、大分地裁、山口地裁岩国支部と立地県以外でも申し立てられた。事故による広域被害への心配から起こされたものだ。

 福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁じた昨年3月の大津地裁決定も広域被害の恐れを指摘し、立地県外の住民の主張を認めた。

 福島事故は、原発の過酷事故が広域的な混乱を生み、風評被害など立地地域や立地県以外にも大きな影響を及ぼすことを明らかにした。

 それを踏まえれば広域被害への懸念は当然だ。国や電力会社は、不安にきちんと向き合うことが不可欠である。

 来春、未曽有の原発事故から7年になる。「福島」を風化させない-。その大切さを、もう一度胸に刻みたい。

信濃毎日新聞 2017.12.14

 伊方差し止め 原発ありきに重い一石

 広島高裁が、愛媛県の四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める決定を出した。

 福島第1原発の事故後、同様の訴訟や仮処分の申し立てが各地で起きている。福井地裁と大津地裁が運転を差し止めた例があるが、高裁が禁じたのは初めてだ。

 政府と電力大手は、設備面の適合性を見るだけの原発の新規制基準を唯一のよりどころにし、避難計画は自治体に丸投げ。住民の理解を得る責任も十分に果たしていない。再稼働ありきの姿勢を改めなければならない。

 伊方3号機の仮処分は、松山地裁、広島地裁、大分地裁、山口地裁岩国支部で申し立てられた。広島地裁が今年3月、差し止めを認めない決定をしたため、住民側が即時抗告していた。

 火山噴火の危険性が焦点の一つになった。

 住民側は、近隣の火山が噴火した際の降灰や火砕流の影響を過小評価していると主張。広島高裁の裁判長は、伊方原発敷地内の地質調査などに基づき、熊本県の阿蘇カルデラで大規模な噴火が起きた場合、「(伊方に)火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、原発の立地には適さない」と指摘している。

 広島地裁は「破局的噴火の発生可能性が相応の根拠で示されたとは言えない」として退けていた。火山被害の評価については、当の専門家が、噴火の予知が困難なこと、前兆現象で噴火規模はつかめないことを認めている。

 高裁は、中央構造線断層帯や南海トラフ巨大地震の影響評価も過小だ、とした住民側の訴えは認めず、規制基準や規制委の審査に合理性があると判断した。

 災害時の影響が想定内に収まるとの確証があるわけではない。

 避難計画にも不安がある。瀬戸内海の離島の住民は「逃げ場がない」と危機感を募らせる。伊方原発は佐田岬半島の付け根にあるが、半島の先端側に住む5千人に孤立の恐れがあるという。

京都新聞 2017.12.14

 伊方原発抗告審  懸念踏まえた差し止め

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転禁止を求め広島市の住民らが申し立てた仮処分抗告審で、広島高裁は運転を差し止める決定を出した。

 差し止め理由の柱は、火山噴火が原発に与える危険性である。

 広島高裁は、阿蘇カルデラ(熊本県)が噴火すれば火砕流が原発を直撃する可能性が小さいとはいえない、と指摘した。

 根拠として、約9万年前の最大級の噴火で火砕流が原発敷地内に届いていた可能性を挙げ、原発の立地として不適格とした。

 さらに、火山の危険性について新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断を「不合理」と断定した。

 約130キロ離れた阿蘇カルデラの火砕流が直撃するとの想定には「奇異である」という指摘もあるが、万が一、という住民の懸念を踏まえての判断ではないか。

 東京電力福島第1原発の事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の判断は初めてだ。

 福島原発事故の原因はいまだ解明されていない。国は原発の再稼働にかじを切ったが、多くの国民は懸念を持っている。9万年前の噴火を根拠にしたのは、住民のわずかな不安にも政府や電力会社は応えるべきという意味だろう。

 事故時に危険性が住民に及ぶかどうかの立証責任は電力会社側にある、とした点も重視したい。

 過去の原発裁判では、原告・住民側が主に立証責任を求められてきたが、情報を独占している側の責任を重視するのは、製造物責任の観点からも当然だ。

 原発から約100キロも離れた広島市の住民が訴える被害可能性を認めたことも注目すべきだろう。大津地裁が昨年3月に認めた約70キロ圏を上回る広さだ。原発から離れた自治体も被害想定や避難計画の策定が必要と読み取れよう。

 一方で広島高裁は、四国電が算出した地震の揺れ(基準地震動)の信頼性や避難計画、新規制基準による審査については合理性があると判断した。

 伊方原発は「日本一細長い」という佐田岬半島の付け根にある。中央構造線断層帯が近くを走り、南海トラフ巨大地震の震源域に入る。阿蘇の噴火が断層に影響するという指摘もある。

 計画では内陸に向かうか船で大分県に避難する。だが訓練は想定通りに進まなかった。各地でも避難計画の有効性が問われる実態があるが、政府や電力会社は改善に後ろ向きだ。高裁はこうした現実にも言及してほしかった。

神戸新聞 2017.12.14

 伊方原発仮処分/住民の不安を受け止めた

 原子力発電所で事故が起きれば、広い範囲で人々の命や暮らしが脅かされる。各地で上がる不安の声を受け止める判断がきのう、広島高裁で示された。

 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機について、高裁は運転を禁じる仮処分決定を出した。原発の再稼働や運転を巡っては福井と大津の地裁が差し止めを命じたが、いずれも高裁の段階で覆っている。

 その高裁が今回、初めて運転を禁じた。新たな規制基準に照らして合格させた原子力規制委員会に対し、火山の影響を重く見て「不合理」と断じた。重い決定である。今後の司法判断に与える影響は大きいだろう。

 仮処分は直ちに効力を発揮し、停止期間は来年9月末までとした。3号機は定期検査のため停止中で来年1月に再稼働を予定していたが、不可能となった。四国電力は異議を申し立てることを明らかにした。

 決定の根拠となったのは、阿蘇カルデラの大規模噴火の危険性だ。伊方原発から海を挟んで約130キロ離れるが、原発敷地内の地質調査やシミュレーションの結果から「約9万年前の噴火で火砕流が到達した可能性は小さくない」とした。

 原発が火砕流に襲われたらどうなるかは容易に想像できる。高裁は「住民の生命、身体への具体的な危険が推定される」とした上で  「原発の立地に適さない」との結論を導き出した。伊方原発は近くに中央構造線断層帯が走り、南海トラフ大地震の影響も危惧される。

 日本列島では、大きな地震や火山活動が各世紀に4~6回は起きてきた。多くの地球物理学者は「大災害はいつ起きても当たり前と認識すべき」と指摘する。それを考慮すれば、今回の決定はもっともな判断だ。

 広島高裁は火山以外では、新基準や規制委の適合性判断に合理性を認めた。ただ、専門性や行政の裁量にとらわれず、率直に疑問をただした高裁の姿勢は評価できる。

 伊方原発を巡る仮処分は、高松高裁や大分地裁、山口地裁岩国支部でも争われている。一つの原発に対し、どれだけ広い地域の住民が危機感を募らせているか。国と電力会社はその訴えに、真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 福島の事故では避難途中に亡くなった高齢者もいたのに、十分に検証されていない。そもそも事故原因さえ分かっていない。にもかかわらず、国は原発利用に固執し、電力大手は利益優先で再稼働に前のめりになっている。

 生命を守り生活を維持する利益は人格権の根幹であり、人格権を超える価値は見いだせない―。大飯原発の運転を差し止めた3年前の福井地裁の判決を思い出す。脱原発への道筋をはっきりと打ち出す時に来ている。

中国新聞 2017.12.14

 伊方原発差し止め決定 リスクの想定考え直せ

 火山大国の日本て炉原発を線働する限り、絶対的な安全はあり得ない。そのことを、私たちは改めて認識さねばならない。

 広島高裁がきのう、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を禁じる決定を下した.広島市と松山市の住民が置転差し止めの仮処分を申し立てた即時抗告審である.東京電力福島第1原発の事的後、原発の運転を禁じた司法判断は、高裁では初めてであり画期的だ。

 決定は約130キロ離れた阿麓山(熊本県)が過去最大級の噴火をした場合、原発が影響を受けないとはいえないとした。火山噴火を含めた多様なリスクを想定し、万がであっても住民に危険が及ぶ恐れがあれば、原発を運転すべきではないということだろう。評価したい。

 伊方原発は瀬戸内海を狭んで広島市から約100キロの距離にある。そ のすぐ近くの海底には、国内最大規模の活断層「中央構造線断層帯」が走る。地震による過酷事故や、その場合の瀬戸内海ヘ影響などがかねて不安視されてきた。

 今回の決定は原子力規制委員会の新規制基準に基づき、四電が示した最大の揺れや津波の想定の合理性は認めたものの、火山噴火の影響評価を問題視している。

 事故後規制委は安全性審査の内規「火山影響評価ガイド」を定めた。活動の可能性が否定できない火山が原発から160キロ圏内にある場合、火砕流や火山灰などの影響を評価して、必要に応じた対策を求めている。

 規制委は阿蘇山が大規模な噴火をした際でも火砕流が原発に到達する可能性は十分に小さいとみて、2015年に3号機の再稼働に道を開いた。

 高裁が過去最大規模として検討したのは約9万年前の噴火である。つまり何万年かに1度であってもリスクがある以上は被害を前提にすべきだという考えに立っているといえよう。

 決定は、四電による火山灰や火砕流の想定は過少とし、伊方原発町立地は不適で、認められないとした。その上で規制委の判断を「不合理である」と断じ、「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れ」を認めている。原発再稼働の動きが加速する中、周辺の住民たちが抱く不安を、司法が受け止めたのだろう。

 福島の事故を受け、安全対策に「想定外」があってはならないと、国も電力会社も胸に刻んだはずである。ひとたび原発事故が起これば被害は甚大なだけに、わずかな確率であってもリスクには対応策を講じなくてはならない。人命を第一に考えれば当然のことである。

 伊方原発3号機は定期検査のため10月から停止中で、四電は来年1月に発送電を再開し、2月の営業運転を目指していた。しかし今後決定を覆す司法判断が出るか、決定が差し止め期間とした来年9月末を過ぎるまでは動かすことができない。

 原発再稼働にかじを切った政府や電力会社にとっては大きな打撃だろう。四電は異議申し立ての手続きを取る方針を明らかにしている。

 だが今すべきは、再稼働を急ぐことではない。決定に誠実に向き合うことだ。地震や火山噴火がしばしば起こるこの国で、原発を推し進める政策を問い直す機会にしてほしい。

山陽新聞 2017.12.14

 伊方原発差し止め 上級審が発した重い警告

 福島原発事故後、高裁段階で初の、原発の運転を止める厳しい司法判断である。

 広島市の住民らが、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、広島高裁がきのう訴えを認める決定をした。一審の広島地裁が却下し、原告側が即時抗告していた。

 現在、原発は定期検査で停止中だが、来年9月30日まで再稼働を禁じた。

 決定は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離に原発がある点を重視し、「火砕流が到達する可能性が小さいとはいえない」とした。火山が運転に影響を与える可能性があり、立地には適さないというわけである。

 この火山の影響を、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断したことは不合理であり、「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論づけた。

 一方で、火山以外については新基準は合理的で、基準に適合するとした規制委の判断は合理的とした。

 上級審での今回の判断を、再稼働を進めてきた電力会社や安倍政権は重く受け止めるべきではないか。

 伊方原発は数々の懸念が指摘されてきた。細長い佐田岬半島の付け根にあるため、事故が起これば西側の約5千人が孤立する恐れがある。近くには国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が通り、熊本地震で活発化しないか心配されている。今回の決定を受け、住民の不安は増していることだろう。

 福島原発事故後、再稼働する各地の原発に対しては、住民らから訴えが次々と起こされている。2014年には福井地裁で関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の運転を認めない判決が、15年には同地裁で高浜原発(同)3、4号機の運転を禁止する決定が出た。

 しかし、大飯原発は控訴審中で、高浜原発の決定は別の裁判長による異議審で取り消された。伊方を含むその他の原発では住民側の訴えが地裁で退けられる判断が続いている。一連の流れに、高裁決定は大きな警鐘を鳴らしたといえよう。

 伊方原発を巡っては広島のほか、地元の愛媛や大分、山口県でも争われているのが特徴である。事故となれば、県境を越える広域被害が発生するからだ。瀬戸内海の深刻な汚染も心配され、岡山、香川県沖へも放射性物質が拡散する可能性はある。健康被害や漁業、環境への影響は計り知れないものがあろう。

 同様に、再稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県)でも火山による危険性が拭えていない。十分な安全確保が原発を動かす大前提である。少しでも不安のある原発には厳しい目を向けたい。あらためて原発再稼働は慎重な上にも慎重な検討が必要だ。

高知新聞 2017.12.14

 【伊方原発】運転差し止め決定は重い

 原発の安全性について、あまり注目されてこなかった角度から司法が疑問を呈した。

 広島の住民らが四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、来年9月末まで運転停止を命じる決定をした。

 最大の理由は、阿蘇の巨大噴火の危険性だ。火砕流が到達する可能性が十分小さいとは言えないとして、立地を不適とした。

 3号機は昨年8月に再稼働し、ことし10月から定期検査のため停止している。来年1月に運転を再開する四電の計画は事実上不可能になったといってよい。

 原発の再稼働を巡っては、伊方を含め、各地で運転差し止めの仮処分申請が相次いでいる。地裁段階では判断が分かれているが、高裁が運転停止を命じたのは初めてだ。

 火山は全国各地に存在する。大きな課題を突き付ける、重い決定といえよう。政府や電力企業、安全審査を担う原子力規制委員会も深く受け止める必要がある。

 決定で広島高裁は、約9万年前に阿蘇で発生した「カルデラ噴火」に触れ、四電の火砕流シミュレーションの甘さを指摘した。研究では、この時の噴火は火砕流が100キロ先まで到達し、山口県に達したことも分かっている。

 阿蘇の火砕流が海を越えて伊方に到達する危険性は、簡単に想像できるものではない。違和感を持つ人もいるだろう。

 思い返したいのは東京電力福島第1原発事故だ。大津波の襲来を過小評価し、悲劇を招いた。自然の脅威を謙虚に受け止めることが大きな教訓である。火山の影響も軽んじることはできない。

 だが、原発回帰は進んでいる。規制委トップが新規制基準に適合しても「絶対安全とは言わない」と主張している中で、だ。決定はこうした現状に改めて疑問を投げ掛けるものでもあろう。

 広島高裁は他方で、地震や津波など火山被害以外の新規制基準、四電の想定は「合理的」とした。

 伊方原発は北側に巨大活断層の中央構造線が走る。原告は、四電が耐震設計の目安となる基準地震動を過小評価しており、新規制基準の実効性の不十分さも主張してきた。

 決定は、地震と火山とでは明らかに判断が異なっている。大きな疑問を残したといえよう。

 伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を巡っては、今後も司法判断が続く見込みだ。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審のほか、大分地裁、山口地裁岩国支部でも審理が続いている。

 四電は広島高裁に対し、早急に異議申し立ての手続きを取る方針だ。裁判長は近く定年退官するため、新裁判長による審理が注目される。

 福島第1原発事故のような惨劇を繰り返してはならない。安全を求める住民の当然の権利に対し、司法の責任は重い。

愛媛新聞 2017.12.14

 伊方3号機差し止め 噴火の危険重視した司法の警告

 危険性の評価に不十分な点がある限り、原発を動かしてはならない―。高裁の全国初の差し止め決定が発した「警告」は、極めて重い。

 松山市と広島市の住民が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は火山の及ぼす危険性を重く見て、運転を差し止める決定をした。

 3月の広島地裁決定は、原発には「極めて高度な安全性」は求められておらず、最新の科学的知見を基にした災害予測で安全を確保すれば「社会が容認する」とした。ある程度の安全で許されるといった、住民の不安に向き合わない乱暴な論理は決して容認できない。7月の 松山地裁決定でもその論を踏襲、司法の独立性が危惧されていた。流れを変え、命を守る司法の責務を果たす決定を評価する。

 判断の焦点は、火山の危険性だった。野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断。四電の想定を過小と指摘し「原子力規制委員会の判断は不合理」で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と断じた。

 規制委の火山影響評価が不合理だという点については、昨年の九州電力川内1、2号機差し止め仮処分を巡る福岡高裁宮崎支部の決定でも示されていた。火山灰が及ぼす危険についても九電玄海3、4号機など各地の原発で指摘されている。安全性が立証されない以上、運転を差し止めると踏み込んだことで、他の原発にも多大な影響を及ぼそう。

 決定は、予測不可能な自然災害に対しても可能な限りの安全策を求めたもので、基本姿勢を問うたと言える。国や電力会社は指摘を肝に銘じ、つぶさに検証し直さなければならない。

 また、原発から約100㌔離れた広島市の住民にも広域被害の恐れを認めた点も意義深い。関西電力高浜3、4号機に関して昨年、大津地裁が半径70㌔圏に当たる滋賀県の住民の申し立てを認めた決定より、さらに範囲が拡大した。立地自治体以外でも事故の当事者であることは東京電力福島第1原発事故で明らかになっており、「地元」の同意があれば再稼働できる仕組みや避難計画も早急に再検討する必要がある。

 伊方原発に関しては愛媛、香川、大分、山口の4県の地裁や高裁で仮処分申請や訴訟を審理中だ。丁寧に審理し、全国の原発をも見直す契機にしたい。

 福島の取り返しのつかない事故で「想定外の事態」という言い訳が通用しないことを思い知って、6年9カ月。原点に立ち返るべき時機である。被爆地広島で、放射性物質に苦しむ人々をこれ以上出さないための判断が下された。その重みを、国と電力会社は胸に刻み、原発ありきのエネルギー政策を根本から転換しなければならない。

徳島新聞 2017.12.14

 伊方原発差し止め  安全性を重視した判断だ

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を差し止める決定を下した。

 東京電力福島第1原発の事故後、高裁が原発の再稼働や運転を禁じる判断を示したのは初めてである。

 これにより、定期検査後の来年1月に運転を再開させる四電の計画は、事実上不可能となった。

 原発の再稼働に積極的な政府は、司法の判断を重く受け止めなければならない。

 争点となったのは、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の合理性や、原子力規制委員会が策定した新規制基準による審査の在り方、火山が噴火した際の危険性などである。

 高裁は、基準地震動や審査の在り方については、一審の広島地裁と同じく、合理的だと認めた。

 特筆されるのは、火山の影響による危険性が否定できず、伊方は原発の立地に適さないと断じたことだ。

 規制委は、火山活動に関する安全性を審査するに際して、「火山ガイド」という内規を定めている。

 それによると、電力会社は原発から160キロ以内にある活火山が、原発の運転期間中(原則40年)に噴火する可能性が十分に小さいかどうかを判断しなければならない。

 判断できない場合は、運転期間中に発生する噴火の規模を推定し、それもできなければ、過去最大の噴火規模を想定して、火砕流が到達する可能性が十分に小さいかどうかを評価するとしている。

 決定は、伊方原発から約130キロの阿蘇カルデラについて、現在の火山学では、運転中に噴火する可能性も噴火規模の推定もできないと指摘。その上で、約9万年前に起きた噴火規模で火砕流が到達するかどうか検討する必要があるのに、四電の地質調査やシミュレーションでは、可能性が十分に小さいとは評価できないと結論付けた。

 広島地裁は、破局的噴火が発生する可能性が「相応の根拠で示されたとは言えない」として、住民の訴えを退けた。それとは逆に、高裁は、危険性が小さいと判断できなければ立地は認められないとしたわけだ。

 原発は、過酷事故がひとたび起きれば取り返しのつかない事態になる。火山ガイドを厳格に適用し、安全性をより重視した判断は理解できる。

 今回の決定は、近くに桜島がある九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などの安全性にも、疑問を投げ掛けたと言える。

 火山の影響は「十分に小さい」として、再稼働に「合格」を出した規制委の判断も改めて問われよう。

 伊方原発を巡っては、高松高裁と大分地裁、山口地裁岩国支部でも、運転差し止めの仮処分が争われている。安全重視の決定が続くのか、注目したい。

佐賀新聞 2017.12.14

 伊方原発差し止め決定 再稼働政策見直しの契機に

 大事故の危険があるとして広島市の住民らが、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転差し止めの決定を下した。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の司法判断は初めてだ。

 事故から間もなく7年、国や電力会社がここへきて加速させている原発の再稼働路線に対し、司法が周辺住民の意見をくみ上げ、厳しい判断を突きつけたことを政策決定者らは深刻に受け止める必要がある。

 決定は、九州・阿蘇山の大噴火が伊方原発に与える影響について原子力規制委員会や四国電力が行った評価の不十分さを指摘しており、九州電力をはじめとする他地域の原発の安全性評価にも反省を迫る内容となった。

 東電の事故後、規制委は、活動する可能性が否定できない火山が原発から半径160キロ以内にある場合、火砕流や火山灰などの影響を評価し、必要に応じて対策を求める「火山影響評価ガイド」を定めた。

 規制委は、ガイドに基づいて、伊方原発から約130キロの場所にある九州の阿蘇カルデラが大規模な噴火をした際でも、火砕流が原発に到達する可能性は十分に小さいと評価。2015年7月、3号機が「原発の新規制基準を満たしている」と結論付け、再稼働に道を開いた。

 これに対し、3号機が再稼働した昨年8月以降、周辺の4地裁・地裁支部で住民らが運転停止の仮処分を申請。差し止めを認めなかった今年3月の広島地裁決定に対し、住民側が高裁に即時抗告していた。

 高裁は決定の中で、火山噴出物の量や火山降下物の厚さなどに関する四国電力の想定が「過小である」と認定。「伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理」だと断じた。

 「まるで福島原発事故などなかったかのように、原発を再稼働させる動きが加速している」とする住民の危機感を司法が受け止め「生命、身体に対する具体的危険の存在」を認めた形だ。

 国のエネルギー政策について、今回の決定が持つ含意は大きい。

 経済産業省は現在、14年に定めた国のエネルギー基本計画の見直し作業を進めている。

 現在の原発を取り巻く状況を見れば「30年度に電力供給の20~22%を原子力で賄う」との目標達成が困難だと指摘する識者は多いが、経産省はこの目標を見直さない方針を早々に表明。それどころか次期計画の中で、原発の新設や立て替えの重要性に言及することを検討、原発の経済性をアピールし再生可能エネルギーの問題点を指摘する情報をホームページに掲載するなど、原発への傾斜を強めている。

 来年に予定していた再稼働が困難になり、経営状況が悪化するとの懸念から四国電力の株価は暴落した。今回の決定は、規制委のお墨付きを得た原発でさえ、大きな「司法のリスク」を抱えていることも示した。

 経産省などの政策決定者も電力会社の経営者も、今回の決定を、既得権益を重視する旧態依然としたエネルギー政策とその決定手法を見直し、市民の意見や世論を反映させたエネルギー政策を日本で実現するための契機とすべきだ。

南日本新聞 2017.12.14

 [伊方差し止め] 火山を巡る議論に一石

 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の判断は初めてである。四国電力と政府は、上級審の決定を重く受け止めるべきだ。

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、運転を差し止める決定をした。

 期間は来年9月30日までで、現在定期検査中の3号機が来年1月に再開する計画は、事実上不可能となった。

 福島原発事故の原因解明が十分とは言えない中、住民の不安を受け止め、原発再稼働に前のめりな政府の方針にも疑問を突きつけた司法判断といえる。

 注目は、火山と原発の立地を巡る議論に一石を投じたことだ。

 野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に約130キロの距離にあることを重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」と判断した。

 その上で、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとしたのは不合理で「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れが推定される」と結論づけた。

 火山以外は新基準や規制委の適合性判断に合理性があるとした。

 火山噴火は、九州電力川内原発の近隣住民も共通して抱く懸念材料である。高裁は、原発の火山対策について規制委に再考を求めたといえよう。

 伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分の申し立ては、立地する愛媛県にとどまらず、広島、大分、山口県にも広がった。

  背景にあるのは、稼働中の関西電力高浜3、4号機を停止させた大津地裁決定だ。その後、大阪高裁で取り消されたが、広域被害の恐れを指摘したことで、立地県外の住民の主張でも認められることが広く知られた。福島原発事故を顧みれば、広い地域の住民が事故時の影響を心配する声を上げるのは当然だろう。

 伊方原発周辺では、南海トラフ巨大地震や、長大な活断層「中央構造線断層帯」が近くを通っていることを懸念する声もある。

さらに、細長い半島の付け根に原発が立地し、事故時の避難計画の実効性への不安も根強い。

 松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審と大分地裁、山口地裁岩国支部が今後どんな決定を下すか、注目される。

 四国電は広島高裁に異議申し立ての手続きを取る方針だ。だが、決定を軽視することなく、住民の疑念とあらためて誠実に向き合うところから始めるべきだ。

熊本日日新聞 2017.12.15

 伊方原発差し止め 再稼働政策見直す契機に

 日本のような火山列島で、原発の安全な運転が可能なのか-。そんな根源的な問いだ。
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について、広島高裁が運転差し止めを命じる決定を出した。原発が阿蘇カルデラから約130キロの距離にある点を重視し、大規模噴火で火砕流が到達する可能性が小さいとはいえないとして、「立地には適さない」と判断した。
 政府は東京電力福島第1原発事故後にできた新規制基準を「世界一厳しい」とし、これに適合した原発は再稼働を進める方針だが、火山対策の不十分さが浮き彫りとなった形だ。
 福島の事故で原発の安全神話は崩れ、住民らが運転差し止めを求めて係争中の訴訟や仮処分の申し立ては全国で約40件。複数の地裁で運転差し止めを命じる判決や仮処分決定が出たが、高裁段階では覆った。高裁が運転を禁じる判断を示したのは初めてだ。
 高裁決定は、原子力規制委が策定した「火山影響評価ガイド」を基に四国電が行った地質調査やシミュレーションを検討。阿蘇で約9万年前と同じような大規模噴火が起きれば火砕流が敷地内に流れ込んだり、火山灰で機器が使えなくなったりする恐れがあるとし、四国電の想定は「過小」とした。新規制基準に適合するとした規制委の判断も「不合理」と断じ、「住民らの生命、身体に対する具体的な危険の恐れ」を認めた。
 桜島や新燃岳といった活火山を抱える九州電力川内原発(鹿児島県)など、火山と原発の議論に影響を及ぼすのは間違いあるまい。原発から約100キロ離れた広島市の住民にも被害の恐れを認め、住民の避難計画や再稼働への同意範囲の問題にも一石を投じた。
 数万年に一度の巨大噴火にどう向き合うか。「想定外」と切り捨てるのは簡単だが、現実に起きれば甚大な被害をもたらす。火山専門家の間に「その時期や規模の予知は困難」という指摘がある以上、国や電力会社は住民の不安を正面から受け止める必要がある。
 政府は原発の再稼働を進め、2030年度にはその発電量を全体の20~22%にまで引き上げる方針だが、今回の決定をこうした「原発ありき」の政策を見直す契機とすべきだ。

◉  広島高裁の決定要旨  (決定全文はこちら

 【主文】

 2018年9月30日まで伊方原発3号機を運転してはならない。

 【司法審査の在り方】

 仮処分を申し立てた住民らは、伊方原発から約100キロの広島市、約60キロの松山市に住むなど、放射性物質が放出されるような事故が起きた際、重大な被害を受ける地域に住む者と言える。そのため、被害を受ける具体的危険がないことは、四国電が立証する必要がある。新規制基準に不合理な点がなく、伊方原発が基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点がないと示すことで立証できる。

 【火山による危険性以外の争点】

 基準地震動策定や過酷事故対策、テロ対策の合理性など、火山の影響による危険性以外の争点について新規制基準は合理的で、伊方原発が基準に適合するとした規制委の判断も合理的と認められる。

 【火山の影響による危険性】

 原発の立地評価について、規制委が策定した「火山影響評価ガイド」は(1)原発から半径160キロ圏内の活動可能性のある火山が、原発の運用期間中に活動する可能性が十分小さいかどうかを判断(2)十分小さいと判断できない場合、運用期間中に起きる噴火規模を推定(3)推定できない場合、過去最大の噴火規模を想定し、火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価(4)十分小さいと評価できない場合、原発の立地は不適となり、当該敷地に立地することは認められない--と定める。

 伊方原発から約130キロ離れ、活動可能性のある火山である熊本県・阿蘇カルデラは、現在の火山学の知見では、伊方原発の運用期間中に活動可能性が十分に小さいと判断できず、噴火規模を推定することもできない。約9万年前に発生した過去最大の噴火規模を想定すると、四国電が行った伊方原発周辺の地質調査や火砕流シミュレーションでは、火砕流が伊方原発の敷地に到達した可能性が十分小さいと評価できない。立地は不適で、敷地内に原発を立地することは認められない。

 広島地裁決定は、破局的噴火については、原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原発の安全性確保の上で、自然災害として想定しなくても、安全性に欠けないと示した。確かに、現在の火山学の知見では、破局的噴火の発生頻度は国内で1万年に1回程度とされ、仮に阿蘇で起きた場合、周辺100キロ程度が火砕流で壊滅状態になり、国土の大半が10センチ以上の火山灰で覆われるなどと予測されているが、そのような災害を想定した法規制はない。発生頻度が著しく小さく、破局的被害をもたらす噴火で生じるリスクは無視できるものとして容認するのが日本の社会通念とも考えられる。しかし、高裁の考える社会通念に関する評価と、火山ガイドの立地評価の方法・考え方の一部に開きがあることを理由に、地裁決定のように、火山ガイドが考慮すべきだと定めた自然災害について、限定解釈をして判断基準の枠組みを変更することは原子炉等規制法と新規制基準の趣旨に反し、許されない。

 火山ガイドが立地評価の次に評価すべきだと定め、火山が原発の運用期間中に影響を及ぼす可能性の評価「影響評価」についても、四国電による阿蘇カルデラの噴火による降下火砕物の想定と、これを前提として算定された大気中濃度の想定も過少だと認められる。

 

 【結論】

 火山の影響による危険性について伊方原発が新規制基準に適合するとした規制委の判断は不合理で、申立人らの生命、身体に具体的危険があることが事実上推定されるから、申し立ては立証されたといえる。

 伊方原発は現在稼働中であるから、差し止めの必要性も認められる。

 本件は仮処分であり、現在係争中の本訴訟で広島地裁が異なる判断をする可能性を考慮し、運転停止期間は18年9月30日までとする。