2313.12.7(土)
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これでいいのか
47 News 日めくり 2013.12.7
「結論ありきで賛成意見だけを集め、国民の声を聴いたという既成事実をつくった」「安倍政権は数の力で法案をどんどん通した」
これは、今回の特定秘密保護法案強行採決のことを言ったのではない。6年前、第1次政権を安倍首相が投げ出した時の市民や識者による政権批評だ。第1次安倍政権は2007年通常国会で野党が同意しないままの不正常採決を17回繰り返した。こうした「安倍流」の強硬路線の体質は今回もまったく変わっていない。変わったのは、そうした政権を再び選んだ私たちの方なのだ。経済が上向くことに期待を寄せ、強権的な政治の記憶をかなたに押しやってしまったのだ。
この6年の間、政権交代があり、東日本大震災、福島第1原発事故があった。そういうことも私たちは忘れてしまったのか。
特定秘密保護法の問題点については、さまざまなところで指摘されているので、ここでは一点だけ指摘しておきたい。同法が成立した6日。経済産業省は原発を「重要なベース電源」と位置付けるエネルギー基本計画の素案を提示した。原発政策の根本的な転換である。原発の新増設には触れずに、将来の新増設にも可能性を残した。
特定秘密保護法が定義する「テロリズム」の対象に原発情報が含まれると多くの人が指摘する。原発事故が起きた際に放射性物質がどのように拡散する恐れがあるのか、その原発は外からの衝撃にどこまで耐えられるように出来ているのか、既存の原発はもとより、新増設が計画された際には、そうした情報はテロ対策を名目にことごとく秘密に指定される可能性がある。使用済み核燃料の輸送ルートなども秘密にされる恐れが強い。
福島県では、第1原発事故のために今も約14万人が県内外で避難生活を余儀なくされている。故郷を追われ、子育てにおびえ、帰るめども立たないまま、完全な廃炉には50年、100年かかると言われている。あの事故から私たちは放射線から身を守るには正確な情報が不可欠だと学んだのではなかったのか。政府が発信する情報だけに頼らず、自ら調べ、政府に働きかけて情報を引き出し、命を守るために行動する。だがその行動が、罪に問われる可能性があるとしたら―。
震災からわずか2年半余。なにごともなかったかのように時の政権が強硬な姿勢をとり続ける。これでいいのだろうか。本当にこれでいいのだろうか。(2013年12月7日 47NEWS 吉野克則)