Historical Archives

#061-1 県民健康調査における中間取りまとめを踏まえた県の対応について

(平成 28 年 12 月 27 日 福島県県民健康調査課)

資料 : https://docs.com/iwashita-tetsuo-1/...

県民健康調査における中間取りまとめを踏まえた県の対応について

平成 28 年 12 月 27 日

県民健康調査課

1 基本調査

 

 ① 本調査で得られた線量推計結果や当時の行動記録は、事故後 4 か月間の外部被ばくに限られた データであるが、今後被ばくによる健康影響を長期的に見守っていく上での基礎となるものである。

 ② 本調査で得られた線量推計結果(事故後 4 か月間の外部被ばく実効線量:99.8%が 5mSv 未満等) は、これまで得られている科学的知見に照らして、統計的有意差をもって確認できるほどの健康 影響が認められるレベルではないと評価する。

 ③ 代表性の検証により、これまでに集計、公表している外部被ばく線量の分布が県民全体の状況 を正しく反映し、偏りのないものとなっていることが確認されたことから、更なる回答率の向上 を目標とするよりも、自らの被ばく線量を知りたいという県民に対し窓口を用意するという方向 にシフトすべきである。

 

 

 <県の対応>
 ・新聞広報など県民全体の回答率向上を目指した取り組みは平成 27 年度までで終了し、平成28 年度からは甲状腺検査会場での「書き方相談コーナーの設置」のみ継続している。

 ・線量評価を希望する県民に対しては、継続して線量推計を行っていく。

 

2 甲状腺検査

 

 ◇ 先行検査(一巡目の検査)を終えて、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統 計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている。このこ とについては、将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを多数診断してい る可能性が指摘されている。

  これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小 さいこと、被ばくからがん発見までの期間が概ね 1 年から 4 年と短いこと、事故当時 5 歳以下からの 発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がないことから、総合的に判断して、放射線の影響とは 考えにくいと評価する。

  但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、影響評価のた めには長期にわたる情報の集積が不可欠であるため、検査を受けることによる不利益についても丁寧 に説明しながら、今後も甲状腺検査を継続していくべきである。

 ① 放射線被ばくの影響評価には、長期にわたる継続した調査が必須である。

 ② 事故初期の放射性ヨウ素による内部被ばく線量の情報は、今回の事故の影響を判断する際に極め て重要なものであり、こうした線量評価研究との連携を常に視野に入れて調査を進めていくべきである。

 

 <県の対応>

 ・環境省が実施する「東京電力福島第一原子力発電事故における住民の線量評価に関する包括研究」において、事故初期の内部被ばく線量の再評価を行っている。
 ・第 23 回検討委員会において、当該研究班から研究の進捗状況について報告して頂いた。今後も研究の進捗状況を注視するとともに、適宜情報共有を図っていく。

 ③ 今後、仮に被ばくの影響で甲状腺がんが発生するとして、どういうデータ(分析)によって、影響を確認していくのか、その点の「考え方」を現時点で予め示しておくべきである。

 

 <県の対応>

 ・甲状腺検査評価部会中間取りまとめの報告を受け、福島県立医科大学への委託業務の一環として「放射線被ばくの影響に関する調査研究」に取り組んでおり、当該調査研究の進捗状況について第 23 回、第 24 回検討委員会にて報告したところであり、今後も随時報告していく。

 ・すでに進めている調査デザインのほかに、どのような評価方法あるいは考え方を示せるの か検討委員会で検討をお願いしたい。

 ④ 放射線の影響を受けやすいという観点からは、検査対象者の中で、特に、事故当時の乳幼児にお ける検査結果は重要なものである。

 <県の対応> ・事故当時 0~5 歳であった年代の今後のがん発症の状況について注視していく。

 ⑤ 県外への転出等が増加する年代に対する受診案内の確実な送付を徹底すべきである。

 

 <県の対応>

 ・就職・進学などにより親元を離れる高等学校卒業予定者等に対して、検査の目的、意義等 について理解してもらうため、啓発活動を行っている。

 ・住所変更があった場合は県民健康管理センターにご連絡していただくよう「甲状腺通信」にハガキを同封しているほか、電話またはホームページからの入力により手続が行えるようにしている。

 ・検査案内が返戻された場合は、住所移転状況を確認し、対象者へ案内が確実に届くよう努めている。

 ⑥ 個々の甲状腺がんの原因の特定は困難であるものの、集団として捉えた場合、二次検査を受ける 患者の多くは、今回の甲状腺検査がなければ、少なくとも当面は(多くはおそらく一生涯)、発生 し得なかった診療行為を受けることになると考えられるため、甲状腺検査を契機として保険診療に 移行した場合の経済的負担を解消する施策は継続すべきである。

 <県の対応>

 ・甲状腺検査の二次検査後に生じた経済的負担に対して支援を行うため平成 27 年 7 月から甲 状腺検査サポート事業を開始したところであり、継続した支援を行っていくこととしている。

 ⑦ 今回の原子力発電所事故は、福島県民に、「不要な被ばく」に加え、「不要だったかもしれない甲 状腺がんの診断・治療」のリスク負担をもたらしている。しかし、甲状腺検査については、事故に よる被ばくにより、将来、甲状腺がんが発生する可能性が否定できないこと、不安の解消などから 検査を受けたいという多数県民の意向もあること、さらには、事故の影響による甲状腺がんの増加 の有無を疫学的に検討し、県民ならびに国内外に示す必要があることなどを考慮しなければならな い。

 <県の対応>

 ・福島県立医科大学に委託し、「放射線被ばくの影響に関する調査研究」を含め、疫学的な分 析を論文として、学会や学術誌を通して公表していく。

 ⑧ 甲状腺検査については、県民の理解の促進を図り、受診者等の同意を得て実施していくという方 針の下で、利益のみならず不利益も発生しうること、甲状腺がん(乳頭がん)は、発見時点での病 態が必ずしも生命に影響を与えるものではない(生命予後の良い)がんであることを県民に引き続 きわかりやすく説明したうえで、被ばくによる甲状腺がん増加の有無を検討することが可能な調査 の枠組みの中で、現行の検査を継続していくべきである。

 <県の対応>

 ・一次検査同意書(検査のお知らせ)の見直しを行い、3 巡目検査からは、検査の目的の詳し い説明及び甲状腺がんと超音波による甲状腺検査の特性を記載したうえで、検査の同意・ 不同意の確認欄を設け、対象者の意思確認を明確に行うこととにした(別紙参照)。

 ・また、その同意書の見直しについて、詳しい説明を記載した「甲状腺通信」(第 6 号-平成 28 年 8 月)を発行した。

 ・甲状腺検査に対する説明の充実を図るため、公共施設等の一般会場において検査結果説明 ブースを設置しているほか、平成 28 年 4 月から、甲状腺検査結果や医学的なお問合せに対 する甲状腺検査医学専用ダイヤルを設置している。

 ・引き続き、学校において出張説明会及び出前授業を実施し、検査への理解を図っていく。

 ⑨ 甲状腺検査の対象者やがんと診断された者の置かれた状況に鑑み、カウンセリング等の精神的な サポートを充実させていくべきである。

 

 <県の対応>

 ・二次検査対象者については、福島県立医科大学において「甲状腺ケア・サポートチーム」 を立ち上げ、心配や不安に対する、こころのケア・サポートに努め、「WEB 相談」による 質問・相談を受け付けるなどの対応を行っている。

 ・保険診療移行後についても病院のチームと協力しながら、継続して支援を行っている。 ・対象者への不安については、県内外の検査機関にも理解を得ながら、甲状腺ケア・サポートチームの充実及び甲状腺検査医学専用ダイヤルの活用等により、必要なサポート体制 の構築を進めていく。

 

3 健康診査

 

 ① 白血球数・分画の結果から、放射線の直接的な影響については、現在のところ確認されていない。 一方、循環器危険因子(肥満、高血圧、脂質異常、糖尿病、腎機能障害、高尿酸血症)の増加がみ られ、放射線の間接的な影響(避難等による生活環境の変化などによる健康影響)が考えられるこ とから、これらについては対策を一層重視していくべきである。

 

 

 <県の対応>

 ・避難区域等市町村において健診結果説明会及び健康セミナーを開催するとともに、今年度 からは更に多くの方に対応するため、市町村が実施する行事において健康セミナーのコー ナーを設置し、医師による講話、健康相談、血圧・血糖測定などを行い、今後の健康管理 に役立てていただくこととしている。

 ・福島県立医科大学から対象市町村の広報誌を利用した健康コラムの配信を行っている。 ・県民の健康への関心や取組意欲の向上を図るため、健康づくりにおけるインセンティブ付 与の仕組を構築するとともに、市町村や企業等と連携した減塩と野菜摂取に関する普及啓 発を行うなど、食・運動・社会参加を三本の柱に、健康をテーマとする県民運動と連携しながら、健康づくり事業を推進していく。

 

 ② 乳幼児の採血については、保護者の十分な理解に基づく希望がある場合にのみの限定的な実施に留めるべきである。

 

 <県の対応>

 ・小児健康診査は従来から、「小児健康診査のお知らせ」で希望に基づく任意の受診である点 について広報してきたが、平成 28 年度より、「受診録兼結果報告書」に採血の希望の有無 の欄を設けた。

 

4 こころの健康度・生活習慣に関する調査

 

 ①  避難地域等の居住歴がある県民の心理状況を把握し、電話等による支援を行ってきたことは評 価される。一方、毎年調査票が送付され回答を求められる心理的負荷や現行調査のアプローチか らのみではハイリスク非回答者への支援に結びつかないことを今後一層考慮していくべきであ り、県市町村や関係機関による総合的なメンタルヘルス対策に移行していくべきである。

 

 ② 避難等による生活環境の変化などによる健康影響がメンタル面でも認められており、こうした 放射線の間接的な影響への対策を一層重視していくべきである。

 

 ③ 「次世代への影響」といった極めて長期的な影響を心配している方が未だ半数近くいることか ら、引き続き、心配について聞き取りの機会を増やし、健康調査の結果も含め求められる情報を 丁寧に説明する努力が必要である。

 

 <県の対応>

 ・回答内容から、相談・支援の必要があると判断された場合は「こころの健康支援チーム」による電話支援をし、必要な場合は登録医師の紹介等を実施している。

 ・緊急の支援や継続した支援が必要な場合は、市町村やふくしま心のケアセンター等の関係 機関や、県の避難者支援・メンタルヘルス部門と連携し、要支援者情報の引き継ぎ等、継続的な支援が実施されるよう体制を整えている。
 ・平成 26 年度調査より、回答者に対し個々の調査結果に加え、調査結果に応じた健康へのアドバイスを記載した個別通知を送付している。

 ・電話支援等が必要な方及び調査に関する住民の声を把握することを目的に、平成 27 年度調査票の自由記載内容の分析を行った。

 ・放射線への不安に対しては、福島県立医科大学でのよろず健康相談事業のほか、県医師会等に委託している「放射線と健康」理解促進事業等を通して相談体制の充実に努めている。

 

5 妊産婦に関する調査

 

 ①  震災後の妊産婦の置かれた状況や心理状況を把握し、電話等による支援を行ってきたことは評価 される。妊娠・出産を希望する方が、安心して妊娠・出産できるようにするため、支援の在り方を 含め、今後の調査の方向性を引き続き検討していくべきである。

 ② 若い世代が自信をもって県内で妊娠・出産できるように、本県における先天異常の発生率等を継 続的に把握し、一般的なレベルを超えていないことなど妊娠・出産にかかる正確な情報を積極的に 発信していく必要がある。

 <県の対応>

 ・検討委員会での意見を踏まえながら今後の調査の方向性を継続して検討していく。

 ・先天異常の発生率については、本調査で継続的に把握するとともに、日本産婦人科医会が実施している先天異常モニタリングの情報も併せて注視していく。

 ・情報発信については、平成 26 年度以降、調査票送付時に、過去の調査結果や相談窓口等記載したパンフレットを対象者・調査協力医療機関・市町村へ送付しており、継続して実施 していく。

 

6 調査結果の活用について

 ①  個人情報保護も重要であるが、データの市町村における活用の促進についても検討が必要であり、 市町村保健事業等個人の健康管理の取組との連携に活用すべきである。

 <県の対応>

 ・市町村の希望により各調査の集計結果等を送付していると共に、福島県立医科大学において市町村ごとにデータの分析を行って市町村保健事業に生かしていただくようにしている。

 ・各調査結果について、避難区域等の市町村職員を対象とした結果説明会を実施している。

 ② 調査結果が国内外の専門家にも広く活用されるよう、データの管理や提供のルールを定める必要がある。

 

 <県の対応>

 ・検討委員会の下に「学術研究目的のためのデータ提供に関する検討部会」を設置し、本年5 月より検討を開始している。

 ③ 3 調査結果等について国際的にも正しく評価されるようにすべきであり、適宜英語などでのリリー スを充実させるべきである。

 

 <県の対応>

 ・県のウェブサイトにおいて9カ国語(日本語を含む)で県民健康調査を紹介し、情報発信を行っている。

 ・福島県立医科大学放射線県民健康管理センターホームページに英語ウェブサイトを設け、県民健康調査に関する説明や検討委員会の資料について掲載している。

 ・福島県立医科大学による調査研究については、国際的にも評価されるために、英語論文での発信などを行っている。なお、概要については日本語文でも福島県立医科大学ホームページで確認できるようにした。

 

7 他の調査との連携

 ① 甲状腺がんのみならず、各種がんの発生状況を捉えるため、がん登録の精緻化を加速させ、その 結果を適宜公表していくべきである。

 <県の対応>
 ・平成 22 年 3 月から地域がん登録事業を実施し、平成 28 年 1 月から「がん登録等の推進に関する法律」に基づき、全国がん登録事業を実施している。

 ・福島県立医科大学に委託し、がん登録に係る情報を収集しており、情報を精査、整理し、今後公表する予定としている。

 

【毎日新聞記事】2016.12.28

  東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会は27日、2014年4月から実施中の2巡目の甲状腺検査で、今年9月末までに新たに10人ががんと診断されたことを明らかにした。2巡目のがん確定は44人で、1巡目の結果を含めると計145人となる。

 甲状腺検査は原発事故時、県内に住んでいた18歳以下の人を対象に11年から1巡目を実施。2巡目からは事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万人を対象にしている。今年5月からは3巡目も実施されている。

甲状腺検査を巡っては手術が不要ながんを見つけ、心身に負担をかける「過剰診断」との指摘があり、県に対し規模縮小を求める要望も寄せられている。福島市で同日開かれた検討委の会合で、星北斗座長(同県医師会副会長)は「科学的議論は独立して行われるべきだ」と述べ、甲状腺がんについて科学的な知見を集める第三者的な組織の設置を県に求めた。