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#048-4 国連海洋法条約

(United Nations Convention on the Law of the Sea)

§161〜§209

2016.7.12

C 理事会

第161条 構成、手続及び投票

理事会は、総会が選出する機構の36の構成国で構成される。その選出については、次の順序によって行う。

a.統計が入手可能な最近の5年間に、深海底から採取される種類の鉱物から生産された産品について、世界全体の消費量の2パーセントを超える量を消費した締約国又は世界全体の輸入量の2パーセントを超える量を輸入した締約国のうちから4の理事国。ただし、いかなる場合にも、一の理事国は東欧地域の社会主義国から選出するものとし、また、一の理事国は最大の消費国をもって充てる。

b.直接に又はその国民を通じて、深海底における活動の準備及び実施に最大の投資を行っている8の締約国のうちから4の理事国。ただし、少なくとも一の理事国は、東欧地域の社会主義国から選出する。

c.その管轄の下にある地域における生産を基礎として、深海底から採取される種類の鉱物の主要な純輸出国である締約国のうちから4の理事国。ただし、少なくとも2の理事国は、自国による当該鉱物の輸出がその経済に重要な関係を有している開発途上国から選出する。

d.開発途上国である締約国のうちから特別の利益を代表する6の理事国。代表される当該特別の利益には、人口の多い国、内陸国又は地理的不利国、深海底から採取される種類の鉱物の主要な輸入国、当該鉱物の潜在的な生産国及び後発開発途上国の利益を含む。

e.理事会全体の議席の衡平な地理的配分を確保するという原則に従って選出される18の理事国。ただし、各地理的地域からこの(e)の規定により少なくとも1の理事国を選出するものとする。この規定の適用上、地理的地域とは、アフリカ、アジア、東欧(ただし、社会主義国に限る。)、ラテン・アメリカ並びに西欧及びその他をいう。

2 総会は、1の規定に従って理事国を選出するに当たり、次のことを確保する。

a.内陸国及び地理的不利国が、総会において代表される程度と合理的に均衡のとれる程度に代表されること。

b.1の(a)から(d)までに定める要件を満たしていない沿岸国(特に開発途上国)が、総会において代表される程度と合理的に均衡のとれる程度に代表されること。

c.理事会において代表される締約国の集団が指名する機構の構成国がある場合には、当該機構の構成国によって当該集団が代表されること。

3 選出は、総会の通常会期に行われる。各理事国は、4年の任期で選出される。ただし、第1回の選出においては、1に定める各集団の理事国の半数は、2年の任期で選出される。

4 理事国は、再選されることができる。もっとも、輪番制による議席の交代が望ましいことに妥当な考慮が払われるべきである。

5 理事会は、機構の所在地で任務を遂行し、機構の業務の必要に応じて会合する。ただし、年3回以上会合するものとする。

6 理事会の会合の定足数は、理事国の過半数とする。

7 各理事国は、一の票を有する。

a.手続問題についての決定は、出席しかつ投票する理事国の過半数による議決で行う。

b.次に掲げる規定の適用に関して生ずる実質問題についての決定は、出席しかつ投票する理事団の3分の2以上の多数による議決で行う。ただし、当該多数が理事団の過半数であることを条件とする。

次条2の(f)から(i)まで、(n)、(p)及び(v)並びに第191条

c.次に掲げる規定の適用に関して生ずる実質問題についての決定は、出席しかつ投票する理事国の4分の3以上の多数による議決で行う。ただし、当該多数が理事国の過半数であることを条件とする。

次条1、同条2の(a)から(e)まで、(l)、(q)から(t)まで、(u)(契約者又は保証国による不履行の場合)、(w)(ただし、(w)に規定する命令は、8(d)に定めるコンセンサス方式による決定によって確認される場合を除くほか、30日を超えて拘束力を有することができない。)及び(x)から(z)まで、第163条2、第174条3並びに附属書IV第11条

d.次に掲げる規定の適用に関して生ずる実質問題についての決定は、コンセンサス方式によって行う。

次条2の(m)及び(o)並びにこの部の規定の改正の採択

e.(d)、(f)及び(g)の規定の適用上、「コンセンサス」とは、正式の異議がないことを意味する。議長は、理事会に対する提案の提出から14日以内に、当該提案を採択することに対する正式の異議があるか否かを判断する。理事会の議長は、提案を採択することに対する正式の異議があると判断した場合には、意見の相違を調停し、コンセンサス方式による採択が可能となるような操業を作成することを目的として、その判断の後3日以内に、9を超えない理事国から成り、理事会の議長を委員長とする調停委員会を設置し、招集する。調停委員会は、迅速に作業を行い、その設置の後14日以内に理事会に対して報告する。調停委員会は、コンセンサス方式による採択が可能となるような提案を勧告することができない場合には、その報告において、そのような提案に対して異議が申し立てられている理由を明らかにする。

f.(a)から(d)までに規定していない問題であって、機構の規則及び手続その他により理事会が決定を行うことが認められているものについては、当該規則及び手続に明記されている(a)から(d)までのいずれかに定める手続に従って決定する。いずれの手続によるかについて当該規則及び手続に明記されていない場合には、理事会が、可能なときは事前に、コンセンサス方式によって決定する(a)から(d)までのいずれかに定める手続に従って決定する。

g.問題が(a)から(d)までのうちのいずれに規定する問題に該当するかについて疑義が生ずる場合には、場合に応じ、より多くの多数による議決を必要とする問題又は、コンセンサス方式を必要とする問題に該当する可能性があるときは、同方式を必要とする問題に該当するものとして取り扱う。ただし、その問題について適用されることとなる議決の方式によって理事会において別段の決定が行われる場合は、この限りでない。

9 理事会は、理事国でない機構の構成国の要請がある場合又は理事国でない機構の機成国に特に影響を及ぼす事項が審議される場合に当該構成国が理事会の会合に代表を出席させることができるようにするための手続を定める。当該代表は、審議に参加することができるが、投票することはできない。

第162条 権限及び任務

1 理事会は、機構の執行機関であり、機構の権能の範囲内のあらゆる問題又は事項について、機構の従うべき個別の政策を、総会が定める一般的な政策及びこの条約に即して定める権限を有する。

2 理事会は、1に定める権限を行使するほか、次のことを行う。

a.不履行の事実について総会の注意を喚起すること並びに、機構の権能の範囲内のあらゆる問題又は事項について、この部の規定の実施を監督し及び調整すること。

b.機構の事務局長の選出のための候補者の名簿を総会に提案すること。

c.事業体の総務会の総務及び事業体の事務局長の選出のために候補者を総会に推薦すること。

d.適当な場合には、経済性及び効率に妥当な考慮を払い、この部の規定に基づく理事会の任務の遂行に必要と認める補助機関を設置すること。当該補助機関の構成については、衡平な地理的配分の原則及び特別の利益に妥当な考慮が払われることを条件として、当該補助機関が取り扱う関連する技術的事項について資格及び能力を有する者で構成することの必要性に重点を置くものとする。

e.議長の選出方法に関する規則を含む理事会の手続規則を採択すること。

f.総会の承認を条件として、機構のためにかつ機構の権能の範囲内で国際連合又は他の国際機関と協定を締結すること。

g.事業体の報告を審議し、勧告付して総会に送付すること。

h.年次報告及び総会が要請する特別の報告を総会に提出すること。

i.第170条の規定に基づいて事業体に指示を与えること

j.附属書III第6条の規定に従って業務計画を承認すること。理事会は、法律・技術委員会によって業務計画が提出された日から60日以内に、理事会の会期中に次の手続に従って当該業務計画について決定を行う。

i.委員会が業務計画の承認を勧告した場合において、いずれの理事国も14日以内に議長に付し附属書III第6条の要件を満たしていない旨の具体的な異議を書面によって申し立てないときは、当該業務計画については、理事会によって承認されたものとみなす。異議が申し立てられたときは、前条8(e)に定める調停手続を適用する。調停手続の終了時においても当該異議が維持されている場合には、理事会(当該業務計画を申請した国又は当該業務計画の申請者を保証している国が理事国である場合には、これらの国を除く。)がコンセンサス方式により不承認とすることを決定しない限り、当該業務計画については、承認されたものとみなす。

ii.委員会が業務計画の不承認を勧告する場合又はいかなる勧告も行わない場合には、理事会は、出席しかつ投票する理事国の4分の3以上の多数による議決で当該業務計画の承認を決定することができる。ただし、当該多数が当該会期に出席する理事国の過半数であることを条件とする。

k.(j)に規定する手続を準用して、附属書IV第12条の規定に基づいて事業体が提出する業務計画を承認すること。

l.第153条4の規定並びに機構の規則及び手続に従って深海底における活動の管理を行うこと。

m.第150条(h)に規定する経済的な悪影響からの保護を行うため、経済計画委員会の勧告に基づき同条(h)の規定に従って必要かつ適当な措置をとること。

n.経済計画委員会の助言に基づき、第151条10に規定する補償制度又は経済調整を援助するその他の措置について総会に勧告すること。

o.

i.開発途上国及び完全な独立又はその他の自治的地位を獲得していない人民の利益及びニーズに特別の考慮を払って、深海底における活動から得られる金銭的利益その他の経済的利益の衡平な配分並びに第82条の規定に基づいて行われる支払及び拠出に関する規則及び手続を総会に勧告すること。

ii.総会によって承認されるまでの間、法律・技術委員会又はその他の関係する補助機関の勧告を考慮して、機構の規則及び手続(これらの改正を含む。)を暫定的に採択し、暫定的に適用すること。これらの規則及び手続は、深海底における概要調査、深海底における探査及び開発並びに機構の財政管理及び内部運営に関係するものとする。多金属性の国境の探査及び開発に関する規則及び手続の採択を優先する。多金属性の団塊以外の資源の探査及び開発のための規則及び手続については、当該資源に関し機構の構成国が当該規則及び手続を採択することを機構に要請した日から3年以内に採択する。すべての規則及び手続は、総会によつて承認される時又は総会の表明する見解に照らして理事会によって改正される時まで、暫定的に効力を有する。

p.この部の規定に基づく活動に関連して機構が行い又は機構に対して行われるすべての支払の状況を検討すること。

q.附属書III第7条の規定により必要とされる場合には、生産認可を申請した者のうちから同条の規定に従って選定を行うこと。

r.総会の承認を得るため機構の年次予算案を総会に提出すること。

s.機構の権能の範囲内のあらゆる問題又は事項に関する政策について総会に勧告すること。

t.第185条の規定に基づき構成国としての権利及び特権の行使を停止することに関して総会に勧告すること。

u.不履行がある場合に、海底紛争裁判部において機構のために手続を開始すること。

v.(u)の規定に基づいて開始された手続における海底紛争裁判部の決定に関して総会に通報し、とるべき措置につき適当と認める勧告を行うこと。

w.深海底における活動から生ずる海洋環境に対する重大な害を防止するため、緊急の命令(操業を停止し又は調整するための命令を含む。)を発すること。

x.海洋環境に対し重大な害を及ぼす危険性のあることを実質的な証拠が示している場合に、契約者又は事業体による開発のための鉱区を承認しないこと。

y.次の事項に関する財政上の規則及び手続の案を作成するための補助機関を設置すること。

i.第171条から第175条までの規定に基づく財政管理

ii.附属書IIIの第13条及び第17条1(c)の規定に基づく財政上の措置

z.この部の規定、機構の規則及び手続並びに機構との契約の条件が遵守されているか否かを決定するために深海底における活動を査察する査察員に対し指示を与え及び査察員を監督するための適当な制度を設けること。

第163条 理事会の機関

1 理事会の機関として次のものを設置する。

a.経済計画委員会

b.法律・技術委員会

2 各委員会は、締約国が指名した候補者のうちから理事会が選出する15人の委員で構成される。ただし、理事会は、必要な場合には、経済性及び効率に妥当な考慮を払い各委員会の委員の人数を増加させることについて決定することができる。

3 委員は、その属する委員会が権限を有する分野についての適当な資格を有していなければならない。締約国は、委員会の任務の効果的な遂行を確保するため、関連する分野についての資格と共に最高水準の能力及び誠実性を有する候補者を指名する。

4 委員の選出に当たっては、衡平な地理的配分及び特別の利益が代表されることの必要性に妥当な考慮を払う。

5 いずれの締約国も、同一の委員会につき2人以上の候補者を指名することができない。いかなる者も、二以上の委員会で職務を遂行するために選出されることはできない。

6 委員は、5年の任期を有する。委員は、一の任期について再選されることができる。

7 委員の任期満了前に、委員の死亡、心身の故障又は辞任があった場合には、理事会は、当該委員と同一の地理的地域又は利益の分野から、その残任期間について委員を任命する。

8 委員は、深海底における探査及び開発に関するいかなる活動についても、金銭上の利害関係を有してはならない。委員は、その属する委員会の任務を遂行する場合を除くほか、産業上の秘密、附属書III第14条の規定に基づいて機構に移転された財産的価値を有するデータその他機構における職務上知り得た秘密の情報をその職を退いた後も開示してはならない。

9 委員会は、理事会が採択する指針及び指示に従ってその任務を遂行する。

10 委員会は、その任務の効率的な遂行のために必要な規則を作成し、承認を得るために理事会に提出する。

11 委員会の意思決定手続は、機構の規則及び手続において定める。理事会に対する勧告には、必要な場合には、委員会における意見の相違についての要約を添付する。

12 委員会は、通常、機構の所有地で任務を遂行し、その仕席の効率的な遂行の必要に応じて会合する。

13 委員会は、その任務の遂行に当たり、適当な場合には、他の委員会、国際連合若しくはその専門機関の権限のある機関又は対象となる事項について権限を有する国際機関と協議を行うことができる。

第164条 経済計画委員会

1 経済計画委員会の委員は、鉱業、鉱物資源に関する活動の管理、国際貿易、国際経済等についての適当な資格を有していなければならない。理事会は、すべての適当な資格が委員会の構成において反映されることを確保するよう努力する。委員会には、深海底から採取される種類の鉱物の自国による輸出がその経済に重要な関係を有している開発途上国から少なくとも2人の委員を選出する。

2 経済計画委員会は、次のことを行う。

a.理事会の要請に基づき、深海底における活動に関しこの条約の定めるところに従って行われた決定を実施するための措置を提案すること。

b.輸入国及び輸出国の双方の利益、特にこれらの国のうちの開発途上国の利益を考慮に入れて、深海底から採取される鉱物の供給、需要及び価格の動向並びに供給、需要及び価格に影響を与える要因を検討すること。

c.関係締約国による注意の喚起を受けて、第150条(h)に規定する悪影響をもたらすおそれのある事態について、調査すること及び理事会に適当な勧告を行うこと。

d.深海底における活動によって悪影響を受けた開発途上国のための補償制度又は経済調整を援助するその他の措置を、総会に提出するために、第151条10の規定に基づいて理事会に提案すること。委員会は、総会によって採択された当該補償制度又は経済調整を援助するその他の措置を個別の事実に適用するために必要な勧告を理事会に行う。

第165条 法律・技術委員会

1 法律・技術委員会の委員は、鉱物資源の探査、開発及び製錬、海洋学、海洋環境の保護、海洋における鉱業及び関連する専門分野に関する経済的又は法律的事項等についての適当な資格を有していなければならない。理事会は、すべての適当な資格が委員会の構成において反映されることを確保するよう努力する。

2 法律・技術委員会は、次のことを行う。

a.理事会の要請に基づき、機構の任務の遂行に関して勧告すること。

b.深海底における活動に関する書面による正式の業務計画を第153条3の規定に基づいて検討し、理事会に適当な勧告を提出すること。委員会は、附属書IIIに定める基準のみに基づいて勧告し、その勧告に関して理事会に十分な報告を行う。

c.理事会の要請に基づき、適当な場合には深海底における活動を行う主体又は関係国と協議し及び協力して、当該活動を監督し、理事会に報告すること。

d.深海底における活動が環境に及ぼす影響についての評価を作成すること。

e.海洋環境の保護につき、その分野において認められた専門家の見解を考慮して、理事会に勧告すること。

f.深海底における活動が環境に及ぼす影響についての評価を含むすべての関連する要素を考慮して、第162条2(o)に規定する規則及び手続を作成し、理事会に提出すること。

g.(f)の規則及び手続を常に検討し、必要又は望ましいと認める改正を随時理事会に勧告すること。

h.認められた科学的方法により、深海底における活動に起因する海洋環境の汚染の危険又は影響についての観察、計測、評価及び分析を定期的に行うための監視計画を作成することに関して理事会に勧告すること、現行の規則が適切でありかつ遵守されることを確保すること並びに理事会が承認した監視計画の実施を調整すること。

i.この部及びこの部に関連する附属書に基づき、特に第187条の規定を考慮して、海底紛争裁判部において機構のために手続を開始するよう理事会に勧告すること。

j.(i)の規定によって開始された手続における海産紛争裁判部の決定を踏まえて、とるべき措置について理事会に勧告すること。

k.深海底における活動から生ずる海洋環境に対する重大な害を防止するため、緊急の命令(操業を停止し又は調整するための命令を含む。)を発するよう理事会に勧告すること。理事会は、勧告を優先的に取り上げる。

l.海洋環境に対し重大な害を及ぼす危険性のあることを実質的な証拠が示している場合に、契約者又は事業体による開発のための鉱区を承認しないよう理事会に勧告すること。

m.この部の規定、機構の規則及び手続並びに機構との契約の条件が遵守されているか否かを決定するために深海底における活動を査察する査察員に対し指示を与え及び査察員を監督することに関し、理事会に勧告すること。

n.生産量の上限を計算すること及び、生産認可を申請した者のうちから理事会が附属書III第7条の規定に従って必要な選定を行った後、第151条の2から7までの規定に従って機構のために生産認可を発給すること。

3 法律・技術委員会の委員は、監督及び査察の職務を遂行するに当たり、締約国又は他の関係当事者の要請があつた場合には、当該締約国又は他の関係当事者の代表者を同伴する。

D 事務局

第166条 事務局

1 機構の事務局は、事務局長及び機構が必要とする職員で構成される。

2 事務局長は、理事会が推薦する候補者のうちから総会によって4年の任期で選出されるものとし、再選されることができる。

3 事務局長は、機構の首席行政官である。事務局長は、総会、理事会及び補助機関のすべての会合において首席行政官の資格で行動するものとし、また、これらの機関が委託する他の運営上の任務を遂行する。

4 事務局長は、機構の活動に関し、総会に対して年次報告を行う。

第167条 機構の職員

1 機構の職員は、機構の運営上の任務を遂行するために必要な資格を有する科学要員、技術要員その他の要員で構成される。

2 職員の採用及び雇用並びに勤務条件の決定に当たっては、最高水準の能率、能力及び誠実性を確保することの必要性に長大の考慮を払う。その考慮を払った上で、できる限り広範な地理的基礎に基づいて職員を採用することが重要であることについて妥当な考慮を払う。

3 職員は、事務局長が任命する。職員の任命、報酬及び解雇の条件は、機構の規則及び手続による。

第168条 事務局の国際的な性質

1 事務局長及び職員は、その職務の遂行に当たって、いかなる政府からも又は機構外のいかなるところからも指示を求め又は受けてはならない。事務局長及び職員は、機構に対してのみ責任を負う国際公務員としての立場に影響を及ぼすおそれのあるいかなる行動も慎まなければならない。締約国は、事務局長及び職員の責任の専ら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者がその責任を果たすに当たってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。職員による義務の違反は、機構の規則及び手続に規定する適当な行政審判所に付託される。

2 事務局長及び職員は、深海底における探査及び開発に関するいかなる活動についても、金銭上の利害関係を有してはならない。事務局長及び職員は、機構の任務を遂行する場合を除くほか、産業上の秘密、附属書III第14条の規定に基づいて機構に移転された財産的価値を有するデータその他機構における職務上知り得た秘密の情報をその職を退いた後も開示してはならない。

3 2に規定する機構の職員の義務の違反については、当該違反によつて影響を受けた締約国の要請に基づき又は第153条2(b)の規定によって締約国が保証する自然人若しくは法人であつて当該違反によって影響を受けたものの要請に基づき、機構が当該職員を相手として機構の規則及び手続によって指定される審判所に付託する。当該影響を受けた締約国は、当該審判中における手続に参加する権利を有する。事務局長は、審判所が当該職員の解雇を勧告する場合には、当該職員を解雇する。

4 この条の規定を実施するために必要な規定については、機構の規則及び手続に含める。

第169条 国際機関及び非政府機関との協議及び協力

1 事務局長は、機構の権能の範囲内の事項につき、国際連合経済化合理事会が認める国際機関及び非政府機関と協議し及び協力するため、理事会の承認を得てこれらの機関との間で適当な取決めを行う。

2 事務局長が1の規定により取決めを行った機関は、機構の機関の手続規則に従い当該機構の機関の会合にオフザーバーとして出席する代表者を指名することができる。適当な場合には、事務局長が1の規定によって取決めを行つた機関の見解を得るための手続を定める。

3 事務局長は、1に規定する非政府機関が特別の能力を有する事項であって機構の活動に関係するものについて、当該非政府機関の提出する報告書を締約国に配布することができる。

E 事業体

第170条 事業体

1 事業体は、機構の機関であり、第153条2(a)の規定に基づいて深海底における活動を直接に行い、並びに深海底から採取された鉱物の輸送、製錬及び販売を行う。

2 事業体は、機構の国際法上の法人格の枠内で、附属書IVの規程に定める法律上の能力を有する。事業体は、この条約、機構の規則及び手続並びに総会の定める一般的な政策に従って行動し、かつ、理事会の指示及び管理に服する。

3 事業体は、その業務のための主たる事務所を機構の所在地に置く。

4 事業体は、第173条2及び附属書IV第11条に定めるところによりその任務の遂行に必要な資金を供与され、また、第144条及びこの条約の他の規定に定めるところによつて技術を供与される。

F 機構の財政制度

第171条 機構の資金

機構の資金には、次のものが含まれる。

a.第160条2(e)の規定に従って決定された機構の構成国の分担金

b.附属書III第13条の規定に基づき機構が深海底における活動に関連して受領する資金

c.附属書IV第10条の規定に従って事業体から移転される資金

d.第174条の規定に基づいて借り入れる資金

e.構成国又はその他の者が支払う任意の拠出金

f.第151条10の規定に基づく補償のための基金(その財源については、経済計画委員会が勧告する。)への支払

第172条 機構の年次予算

機構の事務局長は、機構の年次予算案を作成し、理事会に提出する。理事会は、予算案を審議し、これに関する勧告と共に総会に提出する。総会は、第160条2(h)の規定に基づいて予算案を審議し、承認する。

第173条 機構の経費

1 第171条(a)に規定する分担金は、機構がその運営経費に充てるための十分な資金を他の財源から得るようになるまでの間、その運営経費に充てるために特別勘定に払い込まれるものとする。

2 機構の資金は、機構の運営経費に優先的に充てられる。第171条(a)に規定する分担金を除くほか、運営経費の支払後に残った資金は、特に次のとおり配分し又は使用することができる。

a.第140条及び第160条2(g)の規定に従って配分する。

b.第170条4の規定に基づいて事業体に資金を供与するために使用する。

c.第151条10及び第160条2(l)の規定に基づいて開発途上国に補償するために使用する。

第174条 機構の借入れの権限

1 機構は、資金を借り入れる権限を有する。

2 総会は、第160条2(f)の規定に従って採択する財政規則において、機構の借入れの権限についての制限を定める。

3 理事会は、機構の借入れの権限を行使する。

4 締約国は、機構の債務について責任を負わない。

第175条 年次会計検査

年次会計報告を含む機構の記録、帳簿及び決算報告については、総会によって任命される独立の会計検査専門家が毎年検査する。

G 法的地位、特権及び免除

第176条 法的地位

機構は、国際法上の法人格並びに任務の遂行及び目的の達成に必要な法律上の能力を有する。

第177条 特権及び免除

機構は、その任務の遂行を可能にするため、締約国の領域においてこのGに規定する特権及び免除を享受する。事業体に関する特権及び免除は、附属書IV第13条に定める。

第178条 訴訟手続の免除

機構並びにその財産及び資産は、機構が個別の事実について明示的に放棄する場合を除くほか、訴訟手続の免除を享受する。

第179条 捜索及びあらゆる形式の押収の免除

機構の財産及び資産は、所在地及び占有者のいかんを問わず、行政上又は立法上の措置による捜索及び徴発、没収、収用その他あらゆる形式の押収を免除される。

第180条 制限、規制、管理及びモラトリアムの免除

機構の財産及び資産は、いかなる性質の制限、規制、管理及びモラトリアムも免除される。

第181条 機構の文書及び公用の通信

1 機構の文書は、所在地のいかんを問わず、不可侵とする。

2 財産的価値を有するデータ、産業上の秘密又はこれらと同様の情報及び人事の記録は、公衆の閲覧の用に供される記録保管所に置いてはならない。

3 機構は、その公用の通信に関し、各締約国が他の国際機関に与える待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第182条 機構に関係する特定の者の特権及び免除

総会若しくは理事会の会合又は総会若しくは理事会の機関の会合に出席する締約国の代表並びに機構の事務局長及び職員は、各締約国の領域において次の特権及び免除を享受する。

a.これらの者が代表する締約国又は場合により機構が個別の事実について免除を明示的に放棄する場合を除くほか、これらの者がその職務の遂行に当たって行った行為に関する訴訟手続の免除

b.これらの者が特権及び免除を与える締約国の国民でない場合には、当該締約国が他の締約国の同等の地位の代表者、公務員及び被用者に与える出入国制限、外国人登録義務及び国民的服役義務の免除、為替制限に関する便宜並びに旅行の便宜に関する待遇と同一の免除、便宜及び待遇

第183条 租税及び関税の免除

1 機構、その資産、財産及び収入並びにこの条約によって認められる機構の活動及び取引は、機構の公的な活動の範囲内のものについては、すべての直接税を免除されるものとし、機構の公用のために輸入され又は輸出される産品は、すべての関税を免除される。ただし、機構は、提供された役務の使用料にすきない税の免除を要求してはならない。

2 締約国は、機構の公的な活動のために必要な相当の価額の産品又はサービスが機構により又は機構のために購入される場合において、当該産品又はサービスの価格の一部として租税又は関税が含まれるときは、実行可能な限り、当該租税又は関税を免除するため又はその還付をするため、適当な措置をとる。この条に規定する免除を受けて輸入され又は購入された産品については、当該免除を認めた締約国の同意した条件に従う場合を除くほか、当該締約国の領域内で売却その他の方法で処分してはならない。

3 締約国は、機構の事務局長及び職員並びに機構のために職務を遂行する専門家が自国民でない場合には、これらの者に機構が支払う給料、報酬その他すべての支払に関しいかなる課税も行ってはならない。

H 構成国としての権利及び特権の行使の停止

第184条 投票権の行使の停止

機構に対する分担金の支払が延滞している締約国は、その延滞金の額がその時までの満2年間に当該締約国が支払うべきであった分担金の額に等しいか又はこれを超える場合には、投票権を失う。もっとも、総会は、支払の不履行が構成国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、当該構成国に投票を認めることができる。

第185条 構成国としての権利及び特権の行使の停止

1 総会は、この部の規定に対する重大かつ執ような違反を行った締約国について、理事会の勧告に基づき、構成国としての権利及び特権の行使を停止することができる。

2 締約国がこの部の規定に対する重大かつ執ような違反を行ったと海底紛争裁判部が認定するまでは、1の規定に基づく措置をとってはならない。

第5節 紛争の解決及び勧告的意見

第186条 国際海洋法裁判所の海底紛争裁判部

海底紛争裁判部の設置及びその管轄権の行使については、この節、第15部及び附属書VIの規定によって規律する。

第187条 海底紛争裁判部の管轄権

海底紛争裁判部は、深海底における活動に関する次の種類の紛争につき、この部及びこの部に関連する附属書の規定により管轄権を有する。

a.この部及びこの部に関連する附属書の規定の解釈又は適用に関する締約国間の紛争

b.締約国と機構との間の紛争であって、次の事項に関するもの

i.この部若しくはこの部に関連する附属書の規定又はこれらの規定に従って採択された機構の規則及び手続に違反すると申し立てられた機構又は締約国の作為又は不作為

ii.機構の管轄に属する事項からの逸晩又は権限の濫用と申し立てられた機構の作為

c.契約の当事者(締約国、機構若しくは事業体、国営企業又は第153条2(b)に規定する自然人若しくは法人)の間の紛争であって、次の事項に関するもの

i.関連する契約又は業務計画の解釈又は適用

ii.深海底における活動に関する契約の当事者の作為又は不作為であって、他方の当事者に向けられたもの又は他方の当事者の正当な利益に直接影響を及ぼすもの

d.第153条2(b)に定めるところにより締約国によって保護されておりかつ附属書IIIの第4条6及び第13条2に定める条件を適正に満たした者で契約することが払込まれているものと機構との間の紛争であって、契約交渉において生ずる法律問題又は契約の拒否に関するもの

e.締約国、国営企業又は第153条2(b)に定めるところにより締約国によつて保証されている自然人若しくは法人と機構との間の紛争であって、機構が附属書III第22条に規定する責任を負うと申し立てられる場合のもの

f.その他この条約において海底紛争裁判部の管轄権が明示的に定められている紛争

第188条 国際海洋法裁判所の特別裁判部、海底紛争裁判部臨時裁判部又は拘束力のある商事仲裁への紛争の付託

1 前条(a)に掲げる締約国間の紛争は、

a.両紛争当事者の要請がある場合には、附属書VIの第15条及び第17条の規定に基づいて設置される国際海洋法裁判所の特別裁判部に付託することができる。

b.いずれかの紛争当事者の要請がある場合には、附属書VI第36条の規定に基づいて設置される海底紛争裁判部臨時裁判部に付託することができる。

a.いずれかの紛争当事者の要請がある場合には、前条(c)(i)に掲げる契約の解釈又は適用に関する紛争は、紛争当事者が別段の合意をしない限り、拘束力のある商事仲裁に付されるものとする。当該紛争が付託される商事仲裁裁判所は、この条約の解釈の問題を決定する管轄権を有しない。当該紛争が深海底における活動に関しこの部及びこの部に関連する附属書の規定の解釈の問題を含む場合には、当該問題は、裁定のため海底紛争裁判部に付託されるものとする。

b.(a)の商事仲裁の開始の時又はその過程において、仲裁裁判所が、いずれかの紛争当事者の要請がある場合に又は自己の発意によりその仲裁判断が海底紛争裁判部の裁定に依存すると決定するときは、当該仲裁裁判所は、問題を裁定のため海底紛争裁判部に付託する。当該仲裁裁判所は、その後、海底紛争裁判都の裁定に従って仲裁判断を行う。

c.契約中に紛争に適用する仲裁手続に関する規定がない場合には、両紛争当事者が別段の合意をしない限り、仲裁は、国際連合国際商取引法委員会の仲裁規則又は機構の規則及び手続に定める他の仲裁規則に従って行われる。

第189条 機構の決定についての管轄権の制限

海底紛争裁判部は、この部の規定に基づく機構の裁量権の行使について管轄権を有せず、いかなる場合にも機構に代わって裁量権を行使してはならない。海底紛争裁判部は、第187条の規定に基づいて管轄権を行使するに当たり、機構の規則及び手続がこの条約に適合しているか否かの問題について意見を述べてはならず、また、当該規則及び手続の無効を宣言してはならない。もつとも、第191条の規定の適用は妨げられない。この点に関する海底紛争裁判部の管轄権は、個々の事実についての機構の規則及び手続の適用が紛争当事者の契約上若しくはこの条約上の義務に抵触するとの主張若しくは管轄に属する事項からの逸脱若しくは権限の濫用に関する主張についての決定又は紛争当事者による契約上若しくは条約上の義務の不履行に起因する損害に対する他方の当事者による賠償請求若しくはその他の救済の請求に限られる。

第190条 保証締約国の手続への参加及び出席

1 第187条に規定する紛争において、自然人又は法人が当事者である場合には、当該自然人又は法人の保証国は、当該紛争について通報を受けるものとし、また、書面又は口頭による陳述を行うことにより当該手続に参加する権利を有する。

2 第187条(c)に規定する紛争において、締約国を相手方として他の締約国によって保証されている自然人又は法人により紛争が提起される場合には、紛争を提起された締約国は、当該自然人又は法人を保証している締約国に対しこれらの者に代わって手続に出席することを要請することができる。その保証している締約国が出席しない場合には、当該紛争を提起された締約国は、自国の国籍を有する法人によって自国を代表させることができる。

第191条 勧告的意見

海底紛争裁判部は、総会又は理事会の活動の範囲内で生ずる法律問題に関し、総会又は理事会の要請に応じて勧告的意見を与える。当該勧告的意見の付与は、緊急に処理を要する事項として取り扱われるものとする。

第12部 海洋環境の保護及び保全

第1節 総 則

第192条 一般的義務

いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する。

第193条 天然資源を開発する国の主権的権利

いずれの国も、自国の環境政策に基づき、かつ、海洋環境を保護し及び保全する義務に従い、自国の天然資源を開発する主権的権利を有する。

第194条 海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための措置

1 いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い、かつ、自国の能力に応じ、単独で又は適当なときは共同して、この条約に適合するすべての必要な措置をとるものとし、また、この点に関して政策を調和させるよう努力する。

2 いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における活動が他の国及びその環境に対し汚染による損害を生じさせないように行われること並びに自国の管轄又は管理の下における事件又は活動から生ずる汚染がこの条約に従って自国が主権的権利を行使する区域を越えて拡大しないことを確保するためにすべての必要な措置をとる。

3 この部の規定によりとる措置は、海洋環境の汚染のすべての発生源を取り扱う。この措置には、特に、次のことをできる限り最小にするための措置を含める。

a.毒性の又は有害な物質(特に持続性のもの)の陸にある発生源からの放出、大気からの若しくは大気を通ずる放出又は投棄による放出

b.船舶からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運航の安全を確保し、意図的な及び意図的でない排出を防止し並びに船舶の設計、構造、設備、運航及び乗組員の配乗を規制するための措置を含む。)

c.海底及びその下の天然資源の探査又は開発に使用される施設及び機器からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運用の安全を確保し並びにこのような施設又は機器の設計、構造、設備、運用及び人員の配置を規制するための措置を含む。)

d.海洋環境において運用される他の施設及び機器からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運用の安全を確保し並びにこのような施設又は機器の設計、構造、設備、運用及び人員の配置を規制するための措置を含む。)

4 いずれの国も、海洋環境の汚染を防止し、軽減し又は規制するための措置をとるに当たり、他の国のこの条約に基づく権利の行使に当たっての活動及び義務の現行に当たっての活動に対する有当な干渉を差し控える。

5 この部の規定によりとる措置には、希少又はぜい弱な生態系及び減少しており、脅威にさらされており又は絶滅のおそれのある種その他の海洋生物の生息地を保護し及び保全するために必要な措置を含める。

第195条 損害若しくは危険を移転させ又は一の類型の汚染を他の類型の汚染に変えない義務

いずれの国も、海洋環境の汚染を防止し、軽減し又は規制するための措置をとるに当たり、損害若しくは危険を一の区域から他の区域へ直接若しくは間接に移転させないように又は一の類型の汚染を他の類型の汚染に変えないように行動する。

第196条 技術の利用又は外来種若しくは新種の導入

1 いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における技術の利用に起因する海洋環境の汚染及び海洋環境の特定の部分に重大かつ有害な変化をもたらすおそれのある外来種又は新種の当該部分への導入(意図的であるか否かを問わない。)を防止し、軽減し及び規制するために必要なすべての措置をとる。

2 この条の規定は、海洋環境の汚染の防止、軽減及び規制に関するこの条約の適用に影響を及ぼすものではない。

第2節 世界的及び地域的な協力

第197条 世界的又は地域的基礎における協力

いずれの国も、世界的基礎において及び、適当なときは地域的基礎において、直接に又は権限のある国際機関を通じ、地域的特性を考慮した上で、海洋環境を保護し及び保全するため、この条約に適合する国際的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を作成するため協力する。

第198条 損害の危険が差し迫った場合又は損害が実際に生じた場合の通報

海洋環境が汚染により損害を受ける差し迫った危険がある場合又は損害を受けた場合において、このことを知つた国は、その損害により影響を受けるおそれのある他の国及び権限のある国際機関に直ちに通報する。

第199条 汚染に対する緊急時の計画

前条に規定する場合において、影響を受ける地域にある国及び権限のある国際機関は、当該国についてはその能力に応じ、汚染の影響を除去し及び損害を防止し又は最小にするため、できる限り協力する。このため、いずれの国も、海洋環境の汚染をもたらす事件に対応するための緊急時の計画を共同して作成し及び促進する。

第200条 研究、調査の計画並びに情報及びデータの交換

いずれの国も、直接に又は権限のある国際機関を通じ、研究を促進し、科学的調査の計画を実施し並びに海洋環境の汚染について取得した情報及びデータの交換を奨励するため協力する。いずれの国も、汚染の性質及び範囲、汚染にさらされたものの状態並びに汚染の経路、危険及び対処の方法を評価するための知識を取得するため、地域的及び世界的な計画に積極的に参加するよう努力する。

第201条 規則のための科学的基準

前条の規定により取得した情報及びデータに照らし、いずれの国も、直接に又は権限のある国際機関を通じ、海洋環境の汚染の防止、軽減及び規制のための規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を作成するための適当な科学的基準を定めるに当たって協力する。

第3節 技術援助

第202条 開発途上国に対する科学及び技術の分野における援助

いずれの国も、直接に又は権限のある国際機関を通じ、次のことを行う。

a.海洋環境を保護し及び保全するため並びに海洋汚染を防止し、軽減し及び規制するため、開発途上国に対する科学、教育、技術その他の分野における援助の計画を推進すること。この援助には、特に次のことを含める。

i.科学及び技術の分野における開発途上国の要員を訓練すること。

ii.関連する国際的な計画への開発途上国の参加を容易にすること。

iii.必要な機材及び便宜を開発途上国に供与すること。

iv.(iii)の機材を製造するための開発途上国の能力を向上させること。

v.調査、監視、教育その他の計画について助言し及び施設を整備すること。

b.重大な海洋環境の汚染をもたらすおそれのある大規模な事件による影響を最小にするため、特に開発途上国に対し適当な援助を与えること。

c.環境評価の作成に関し、特に開発途上国に対し適当な援助を与えること。

第203条 開発途上国に対する優先的待遇

開発途上国は、海洋環境の汚染の防止、軽減及び規制のため又は汚染の影響を最小にするため、国際機関から次の事項に関し優先的待遇を与えられる。

a.適当な資金及び技術援助の配分

b.国際機関の専門的役務の利用

第4節 監視及び環境評価

第204条 汚染の危険又は影響の監視

1 いずれの国も、他の国の権利と両立する形で、直接に又は権限のある国際機関を通じ、認められた科学的方法によつて海洋環境の汚染の危険又は影響を観察し、測定し、評価し及び分析するよう、実行可能な限り努力する。

2 いずれの国も、特に、自国が許可し又は従事する活動が海洋環境を汚染するおそれがあるか否かを決定するため、当該活動の影響を監視する。

第205条 報告の公表

いずれの国も、前条の規定により得られた結果についての報告を公表し、又は適当な間隔で権限のある国際機関に提供する。当該国際機関は、提供された報告をすべての国の利用に供すべきである。

第206条 活動による潜在的な影響の評価

いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における計画中の活動が実質的な海洋環境の汚染又は海洋環境に対する重大かつ有害な変化をもたらすおそれがあると信ずるに足りる合理的な理由がある場合には、当該活動が海洋環境に及ぼす潜在的な影響を実行可能な限り評価するものとし、前条に規定する方法によりその評価の結果についての報告を公表し又は国際機関に提供する。

第5節 海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための国際的規則及び国内法

第207条 陸にある発生源からの汚染

1 いずれの国も、国際的に合意される規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を考慮して、陸にある発生源(河川、三角江、パイプライン及び排水口を含む。)からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため法令を制定する。

2 いずれの国も、1に規定する汚染を防止し、軽減し及び規制するために必要な他の措置をとる。

3 いずれの国も、1に規定する汚染に関し、適当な地域的規模において政策を調和させるよう努力する。

4 いずれの国も、地域的特性並びに開発途上国の経済力及び経済開発のニーズを考慮して、特に、権限のある国際機関又は外交会議を通じ、陸にある発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、世界的及び地域的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を定めるよう努力する。これらの規則、基準並びに勧告される方式及び手続は、必要に応じ随時再検討する。

5 1、2及び4に規定する法令、措置、規則、基準並びに勧告される方式及び手続には、毒性の又は有害な物質(特に持続性のもの)の海洋環境への放出をできる限り最小にするためのものを含める。

第208条 国の管轄の下で行う海底における活動からの汚染

1 沿岸国は、自国の管轄の下で行う海底における活動から又はこれに関連して生ずる海洋環境の汚染並びに第60条及び第80条の規定により自国の管轄の下にある人工島、施設及び構築物から生ずる海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため法令を制定する。

2 いずれの国も、1に規定する汚染を防止し、軽減し及び規制するために必要な他の措置をとる。

3 1及び2に規定する法令及び措置は、少なくとも国際的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続と同様に効果的なものとする。

4 いずれの国も、1に規定する汚染に関し、適当な地域的規模において政策を調和させるよう努力する。

5 いずれの国も、特に、権限のある国際機関又は外交会議を通じ、1に規定する海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、世界的及び地域的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を定める。これらの規則、基準並びに勧告される方式及び手続は、必要に応じ随時再検討する。

第209条 深海底における活動からの汚染

1 深海底における活動からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、国際的な規則及び手続が、第11部の規定に従って定められる。これらの規則及び手続は、必要に応じ随時再検討される。

2 いずれの国も、この節の関連する規定に従うことを条件として、自国を旗国とし、自国において登録され又は自国の権限の下で運用される船舶、施設、構築物及び他の機器により行われる深海底における活動からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため法令を制定する。この法令の要件は、少なくとも1に規定する国際的な規則及び手続と同様に効果的なものとする。

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