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#048-3 国連海洋法条約

(United Nations Convention on the Law of the Sea)

§109〜§160

2016.7.12

第109条 公海からの許可を得ていない放送

1 すべての国は、公海からの許可を得ていない放送の防止に協力する。

2 この条約の適用上、「許可を得ていない放送」とは、国際的な規則に違反して公海上の船舶又は施設から行われる音響放送又はテレビジョン放送のための送信であって、一般公衆による受信を意図するものをいう。ただし、遭難呼出しの送信を除く。

3 許可を得ていない放送を行う者については、次の国の裁判所に訴追することができる。

a.船舶の旗国

b.施設の登録国

c.当該者が国民である国

d.放送を受信することができる国

e.許可を得ている無線通信が妨害される国

4 3の規定により管轄権を有する国は、公海において、次条の規定に従い、許可を得ていない放送を行う者を逮捕し又はそのような船舶を拿捕することができるものとし、また、放送機器を押収することができる。

第110条 臨検の権利

1 条約上の権限に基づいて行われる干渉行為によるものを除くほか、公海において第95条及び第96条の規定に基づいて完全な免除を与えられている船舶以外の外国船舶に遭遇した軍艦が当該外国船舶を臨検することは、次のいずれかのことを疑うに足りる十分な根拠がない限り、正当と認められない。

a.当該外国船舶が海賊行為を行っていること。

b.当該外国船舶が奴隷取引に従事していること。

c.当該外国船舶が許可を得ていない放送を行っており、かつ、当該軍艦の旗国が前条の規定に基づく管轄権を有すること。

d.当該外国船舶が国籍を有していないこと。

e.当該外国船舶が、他の国の旗を掲げているか又は当該外国船舶の旗を示すことを拒否したが、実際には当該軍艦と同一の国籍を有すること。

2 軍艦は、1に規定する場合において、当該外国船舶がその旗を掲げる権利を確認することができる。このため、当該軍艦は、疑いがある当該外国船舶に対し士官の指揮の下にボートを派遣することができる。文書を検閲した後もなお疑いがあるときは、軍艦は、その船舶内において更に検査を行うことができるが、その検査は、できる限り慎重に行わなければならない。

3 疑いに根拠がないことが証明され、かつ、臨検を受けた外国船舶が疑いを正当とするいかなる行為も行っていなかった場合には、当該外国船舶は、被った損失又は損害に対する補償を受ける。

4 1から3までの規定は、軍用航空機について準用する。

5 1から3までの規定は、政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできるその他の船舶又は航空機で正当な権限を有するものについても準用する。

第111条 追跡権

1 沿岸国の権限のある当局は、外国船舶が自国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由があるときは、当該外国船舶の追跡を行うことができる。この追跡は、外国船舶又はそのボートが追跡国の内水、群島水域、領海又は接続水域にある時に開始しなければならず、また、中断されない限り、領海又は接続水域の外において引き続き行うことができる。領海又は接続水域にある外国船舶が停船命令を受ける時に、その命令を発する船舶も同様に領海又は接続水域にあることは必要でない。外国船舶が第33条に定める接続水域にあるときは、追跡は、当該接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限り、行うことができる。

2 追跡権については、排他的経済水域又は大陸棚(大陸棚上の施設の周囲の安全水域を含む。)において、この条約に従いその排他的経済水域又は大陸棚(当該安全水域を含む。)に適用される沿岸国の法令の違反がある場合に準用する。

3 追跡権は、被追跡船舶がその次団又は第三国の領海に入ると同時に消滅する。

4 追跡は、被追跡船舶又はそのボート若しくは被追跡船舶を母船としてこれと一団となって作業する舟艇が領海又は、場合により、接続水域、排他的経済水域若しくは大陸棚の上部にあることを追跡船舶がその場における実行可能な算段により確認しない限り、開始されたものとされない。追跡は、視覚的又は聴覚的停船信号を外国船舶が規定し又は聞くことができる距離から発した後にのみ、開始することができる。

5 追跡権は、軍艦、軍用航空機その他政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできる船舶又は航空機でそのための権限を与えられているものによってのみ行使することができる。

6 追跡が航空機によって行われる場合には、

a.1から4までの規定を準用する。

b.停船命令を発した航空機は、船舶を自ら拿捕することができる場合を除くほか、自己が呼び寄せた沿岸国の船舶又は他の航空機が到着して追跡を引き継ぐまで、当該船舶を自ら積極的に追跡しなければならない。当該船舶が停船命令を受け、かつ、当該航空機又は追跡を中断することなく引き続き行う他の航空機若しくは船舶によって追跡されたのでない限り、当該航空機が当該船舶を違反を犯したもの又は違反の疑いがあるものとして発見しただけでは、領海の外における拿捕を正当とするために十分ではない。

7 いずれかの国の管理権の及ぶ範囲内で拿捕され、かつ権限のある当局の審理を受けるためその国の港に護送される船舶は、事情により護送の途中において排他的経済水域又は公海の一部を航行することが必要である場合に、その航行のみを理由として釈放を要求することができない。

8 追跡権の行使が正当とされない状況の下に領海の外において船舶が停止され又は拿捕されたときは、その船舶は、これにより被った損失又は損害に対する補償を受ける。

第112条 海底電線及び海底パイプラインを敷設する権利

1 すべての国は、大陸棚を越える公海の海底に海底電線及び海底パイプラインを敷設する権利を有する。

2 第79条5の規定は、1の海底電線及び海底パイプラインについて適用する。

第113条 海底電線又は海底パイプラインの損壊

いずれの国も、自国を旗国とする船舶又は自国の管轄権に服する者が、故意又は過失により、電気通信を中断し又は妨害することとなるような方法で公海にある海底電線を損壊し、及び海底パイプライン又は海底高圧線を同様に損壊することが処罰すべき犯罪であることを定めるために必要な法令を制定する。この法令の規定は、その損壊をもたらすことを意図し又はその損壊をもたらすおそれのある行為についても適用する。ただし、そのような損壊を避けるために必要なすべての予防措置をとった後に自己の生命又は船舶を守るという正当な目的のみで行動した者による損壊については、適用しない。

第114条 海底電線又は海底パイプラインの所有者による他の海底電線又は海床パイプラインの損壊

いずれの国も、自国の管轄権に服する者であって公海にある海底電線又は海底パイプラインの所有者であるものが、その海底電線又は海底パイプラインを敷設し又は修理するに際して他の海底電線又は海底パイプラインを損壊したときにその修理の費用を負担すべきであることを定めるために必要な法令を制定する。

第115条 海底電線又は海底パイプラインの損壊を避けるための損失に対する補償

いずれの国も、海底電線又は海底パイプラインの損壊を避けるためにいかり、網その他の漁具を失ったことを証明することができる船舶の所有者に対し、当該船舶の所有者が事前にあらゆる適当な予防措置をとったことを条件として当該海底電線又は海底パイプラインの所有者により補償が行われることを確保するために必要な法令を制定する。

第2節 公海における生物資源の保存及び管理

第116条 公海における漁獲の権利

すべての国は、自国民が公海において次のものに従って漁獲を行う権利を有する。

a.自国の条約上の義務

b.特に第63条2及び第64条から第67条までに規定する沿岸国の権利、義務及び利益

c.この節の規定

第117条 公海における生物資源の保存のための措置を自国民についてとる国の義務

すべての国は、公海における生物資源の保存のために必要とされる措置を自国民についてとる義務及びその措置をとるに当たって他の国と協力する義務を有する。

第118条 生物資源の保存及び管理における国の間の協力

いずれの国も、公海における生物資源の保存及び管理について相互に協力する。二以上の国の国民が同種の生物資源を開発し又は同一の水域において異なる種類の生物資源を開発する場合には、これらの国は、これらの生物資源の保存のために必要とされる措置をとるために交渉を行う。このため、これらの国は、適当な場合には、小地域的又は地域的な漁業機関の設置のために協力する。

第119条 公海における生物資源の保存

1 いずれの国も、公海における生物資源の漁獲可能量を決定し及び他の保存措置をとるに当たり、次のことを行う。

a.関係国が入手することのできる最良の科学的証拠に基づく措置であって、環境上及び経済上の関連要因(開発途上国の特別の要請を含む。)を勘案し、かつ、漁獲の態様、資源間の相互依存関係及び一般的に勧告された国際的な最低限度の基準(小地域的なもの、地域的なもの又は世界的なもののいずれであるかを問わない。)を考慮して、最大持続生産量を実現することのできる水準に漁獲される種の資源量を維持し又は回復することのできるようなものをとること。

b.漁獲される種に関連し又は依存する種の資源量をその再生産が著しく脅威にさらされることとなるような水準よりも高く維持し又は回復するために、当該関連し又は依存する種に及ぼす影響を考慮すること。

2 入手することのできる科学的情報、漁獲量及び漁獲努力量に関する統計その他魚類の保存に関連するデータは、適当な場合には権限のある国際機関(小地域的なもの、地域的なもの又は世界的なもののいずれであるかを問わない。)を通じ及びすべての関係国の参加を得て、定期的に提供し、及び交換する。

3 関係国は、保有措置及びその実施がいずれの国の漁業者に対しても法律上又は事実上の差別を設けるものではないことを確保する。

第120条 海産哺乳動物

第65条の規定は、公海における海産哺乳動物の保存及び管理についても適用する。

第8部 島の制度

第121条 島の制度

1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。

2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。

3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

第9部 閉鎖海又は半閉鎖海

第122条 定義

この条約の適用上、「関領海又は半閉鎖海」とは、湾、海盆又は海であって、二以上の国によって囲まれ、狭い出口によって他の海若しくは外洋につながっているか又はその全部若しくは大部分が二以上の沿岸国の領海若しくは排他的経済水域から成るものをいう。

第123条 閉鎖海又は半閉鎖海に面した国の間の協力

同一の閉鎖海又は半開鎖海に面した国は、この条約に基づく自由の権利を行使し及び義務を履行するに当たって相互に協力すべきである。このため、これらの国は、直接に又は適当な地域的機関を通じて、次のことに努める。

a.海洋生物資源の管理、保存、探査及び開発を調整すること。

b.海洋環境の保護及び保全に関する自国の権利の行使及び義務の履行を調整すること。

c.自国の科学的調査の政策を調整し及び、適当な場合には、当該水域における科学的調査の共同計画を実施すること。

d.適当な場合には、この条の規定の適用の促進について協力することを関係を有する他の国又は国際機関に要請すること。

第10部 内陸国の海への出入りの権利及び通過の自由

第124条 用語

1 この条約の適用上、

a.「内陸国」とは、海岸を有しない国をいう。

b.「通過国」とは、内陸国と海との間に位置しており、その領域において通過運送が行われる国(海岸の有無を問わない。)をいう。

c.「通過運送」とは、人、荷物、物品及び輸送手段の一又は二以上の通過国の領域における通過をいう。ただし、その通過が、積換、倉入れ、荷分け又は輸送方法の変更を伴うかどうかを問わず、内陸国の領域内に始まり又は終わる全行程の一部にすぎないときに限る。

d.「輸送手段」とは、次のものをいう。

i.鉄道車両並びに海洋用、湖用及び河川用船舶並びに道路走行車両

ii.現地の状況が必要とする場合には、運搬人及び積載用動物

2 内陸国及び通過国は、相互間の合意により、パイプライン(ガス用輸送管を含む。)及び1(d)に規定するもの以外の輸送の手段を輸送手段に含めることができる。

第125条 海への出入りの権利及び通過の自由

1 内陸国は、公海の自由及び人類の共同の財産に関する権利を含むこの条約に定める権利の行使のために海への出入りの権利を有する。このため、内陸国は、通過国の領域においてすべての輸送手段による通過の自由を享有する。

2 通過の自由を行使する条件及び態様については、関係する内陸国と通過国との間の2国間の、小地域的な又は地域的な協定によって合意する。

3 通過国は、自国の領域における完全な主権の行使として、この部に定める内陸国の権利及び内陸国のための便益が自国の正当な利益にいかなる害も及ぼさないようすべての必要な措置をとる権利を有する。

第126条 最恵国条項の適用除外

内陸国の特別な地理的位置を理由とする権利及び便益を定めるこの条約及び海への出入りの権利の行使に関する特別の協定は、最恵国条項の適用から除外する。

第127条 関税、租税その他の課徴金

1 通過運送に対しては、いかなる関税、租税その他の課徴金も課してはならない。ただし、当該通過運送に関連して提供された特定の役務の対価として課される課徴金を除く。

2 内陸国に提供され又は内陸国により利用される通過のための輸送手段及び他の便益に対しては、通貨国の輸送手段の利用に対して課される租税又は課徴金よりも高い租税又は課徴令を課してはならない。

第128条 自由地帯及び他の通関上の便益

通過運送の便宜のため、通過国と内陸国との間の合意により、通過国の出入港において自由地帯及び他の通関上の便益を設けることができる。

第129条 輸送手段の建設及び改善における協力

通過国において通過の自由を実施するための輸送手段がない場合又は現存の手段(港の施設及び設備を含む。)が何らかの点で不十分な場合には、関係する通過国及び内陸国は、そのような輸送手段又は現存の手段の建設及び改善について協力することができる。

第130条 通過運送における遅延又はその他の困難で技術的性質のものを回避し又は無くすための措置

1 通過国は、通過運送における遅延又はその他の困難で技術的性質のものを回避するためすべての適当な措置をとる。

2 1の遅延又は困難が生じたときは、関係する通過国及び内陸国の権限のある当局は、その遅延又は困難を迅速に無くすため協力する。

第131条 海港における国等の待遇

内陸国を旗国とする船舶は、海港において他の外国船舶に与えられる待遇と同等の待遇を与えられる。

第132条 通過のための一層大きい便益の供与

この条約は、この条約に定める通過のための便益よりも大きい便益であって、締約国間で合意され又は締約国が供すするものの撤回をもたらすものではない。この条約は、また、将来において一層大きい便益が供与されることを排除するものではない。

第11部 深海底

第1節 総 則

第133条 用語

この部の規定の適用上、

a.「資源」とは、自然の状態で深海底の海底又はその下におるすべての固体状、液体状又は気体状の鉱物資源(多金属性の団塊を含む。)をいう。

b.深海底から採取された資源は、「鉱物」という。

第134条 この部の規定の適用範囲

1 この部の規定は、深海底について適用する。

2 深海底における活動は、この部の規定により規律される。

3 第1条1(1)に規定する境界を示す海図又は地理学的経緯度の表の寄託及び公表に関する要件については、第6部に定める。

4 この条の規定は、第6部に定めるところによる大陸棚の外側の限界の設定に影響を及ぼすものではなく、また、向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間の境界画定に関する合意の有効性に影響を及ぼすものではない。

第135条 上部水域及び上空の法的地位

この部の規定及びこの部の規定により認められ又は行使される権利は、深海底の上部水域又はその上空の法的地位に影響を及ぼすものではない。

第2節 深海底を規律する原則

第136条 人類の共同の財産

深海底及びその資源は、人類の共同の財産である。

第137条 深海底及びその資源の法的地位

1 いずれの国も深海底又はその資源のいかなる部分についても主権又は主権的権利を主張し又は行使してはならず、また、いずれの国又は自然人若しくは法人も深海底又はその資源のいかなる部分も専有してはならない。このような主権若しくは主権的権利の主張若しくは行使又は専有は、認められない。

2 深海底の資源に関するすべての権利は、人類全体に付与されるものとし、機構は、人類全体のために行動する。当該資源は、譲渡の対象とはならない。ただし、深海底から採取された鉱物は、この部の規定並びに機構の規則及び手続に従うことによってのみ譲渡することができる。

3 いずれの国又は自然人若しくは法人も、この部の規定に従う場合を除くほか、深海底から採取された鉱物について権利を主張し、取得し又は行使することはできず、このような権利のいかなる主張、取得又は行使も認められない。

第138条 深海底に関する国の一般的な行為

深海底に関する国の一般的な行為は、平和及び安全の維持並びに国際協力及び相互理解の促進のため、この部の規定、国際連合憲章に規定する原則及び国際法の他の規則に従う。

第139条 遵守を確保する義務及び損害に対する責任

1 締約国は、深海底における活動(締約国、国営企業又は締約国の国籍を有し若しくは締約国若しくはその国民によって実効的に支配されている自然人若しくは法人のいずれにより行われるかを問わない。)がこの部の規定に適合して行われることを確保する義務を負う。国際機関は、当該国際機関の行う深海底における活動に関し、同様の義務を負う。

2 締約国又は国際機関によるこの部の規定に基づく義務の不履行よって生ずる損害については、国際法の規則及び附属書III第22条の規定の適用を妨げることなく、責任が生ずる。共同で行動する締約国又は国際機関は、連帯して責任を負う。ただし、特約国は、第153条4及び同附属書第4条4の規定による実効的な遵守を確保するためのすべての必要かつ適当な措置をとった場合には、第153条2(b)に定めるところによって当該締約国が保証した者がこの部の規定を遵守しないことにより生ずる損害について責任を負わない。

3 国際機関の構成国である締約国は、当該国際機関につきこの条の規定の実施を確保するための適当な措置をとる。

第140条 人類の利益

1 深海底における活動については、沿岸国であるか内陸国であるかの地理的位置にかかわらず、また、開発途上国の利益及びニーズ並びに国際連合総会決議第1514号(第15回会期)及び他の関連する総会決議に基づいて国際連合によつて認められた完全な独立又はその他の自治的地位を獲得していない人民の利益及びニーズに特別の考慮を払って、この部に明示的に定めるところに従い、人類全体の利益のために行う。

2 機構は、第160条2(f)(i)の規定により、深海底における活動から得られる金銭的利益その他の経済的利益の衡平な配分を適当な制度を通じて、かつ、無差別の原則に基づいて行うことについて定める。

第141条 専ら平和的目的のための深海底の利用

深海底は、無差別に、かつ、この部の他の規定の適用を妨げることなく、すべての国(沿岸国であるか内陸国であるかを問わない。)による専ら平和的目的のための利用に開放する。

第142条 沿岸国の権利及び正当な利益

1 沿岸国の管轄権の及ぶ区域の境界にまたかって存在する深海底の資源の鉱床に関する深海底における活動については、当該沿岸国の権利及び正当な利益に妥当な考慮を払って行う。

2 1の権利及び利益の侵害を回避するため、関係国との間において協議(事前通報の制度を含む。)を維持するものとする。深海底における活動により沿岸国の管轄権の及ぶ区域内に存在する資源を開発する可能性がある場合には、当該沿岸国の事前の同意を得るものとする。

3 この部の規定及びこの部の規定により認められ又は行使されるいかなる権利も、自国の沿岸又は関係利益に対する重大なかつ急迫した危険であつて深海底における活動に起因し又はこれから生ずる汚染、汚染のおそれ又はその他の危険な事態から生ずるものを防止し、軽減し又は除去するために必要な措置(第12部の関連する規定に適合するもの)をとる沿岸国の権利に影響を及ぼすものではない。

第143条 海洋の科学的調査

1 深海底における海洋の科学的調査は、第13部の規定に従い、専ら平和的目的のため、かつ、人類全体の利益のために実施する。

2 機構は、深海底及びその資源に関する海洋の科学的調査を実施することができるものとし、この目的のため、契約を締結することができる。機構は、深海底における海洋の科学的調査の実施を促進し及び奨励するものとし、また、調査及び分析の結果が利用可能な場合には、当該結果を調整し及び普及させる。

3 締約国は、深海底における海洋の科学的調査を実施することができる。締約国は、次に掲げることにより深海底における海洋の科学的調査における国際協力を促進する。

a.国際的な計画に参加すること並びに各国及び機構の要員による海洋の科学的調査における協力を奨励すること。

b.機構又は適当な場合には他の国際機関を通じ、開発途上国及び技術面における開発の程度が低い国の利益のため、次に掲げることを目的とする計画が作成されることを確保すること。

i.これらの国の調査能力を強化すること。

ii.調査の技術及び実施に関し、これらの国及び機構の要員を訓練すること。

iii.深海底における調査において、これらの国の資格を有する要員の雇用を促進すること。

調査及び分析の結果が利用可能な場合には、機構を通じ又は適当なときは他の国際的な経路を通じて当該結果を効果的に普及させること。

第144条 技術の移転

1 機構は、次に掲げることを目的として、この条約に従って措置をとる。

a.深海底における活動に関する技術及び科学的知識を取得すること。

b.すべての締約国が(a)の技術及び科学的知識から利益を得るようにするため、当該技術及び科学的知識の開発途上国への移転を促進し及び奨励すること。

2 機構及び締約国は、このため、事業体及びすべての締約国が利益を得ることができるように、深海底における活動に関する技術及び科学的知識の移転の促進に協力する。機構及び締約国は、特に、次の計画及び措置を提案し及び促進する。

a.事業体及び開発途上国に対し深海底における活動に関する技術を移転するための計画(当該計画には、特に、事業体及び開発途上国が公正かつ妥当な条件の下で関連する技術を取得することを容易にするための方策を含める。)

b.事業体の技術及び開発途上国の技術の進歩を目的とする措置(特に、事業体及び開発途上国の要員に対し、海洋科学及び海洋技術に関する訓練の機会並びに深海底における活動に対する十分な参加の機会を与えるもの)

第145条 海洋環境の保護

深海底における活動に関しては、当該活動により生ずる有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保するため、この条約に基づき必要な措置をとる。機構は、このため、特に、次の事項に関する適当な規則及び手続を採択する。

a.海洋環境(沿岸を含む。)の汚染その他の危険の防止、軽減及び規制並びに海洋環境の生態学的均衡に対する影響の防止、軽減及び規制。特に、ボーリング、しゆんせつ、掘削、廃棄物の処分、これらの活動に係る施設、パイプラインその他の装置の建設、運用及び維持等の活動による有害な影響からの保護の必要性に対して特別の注意が払われなければならない。

b.深海底の天然資源の保護及び保存並びに海洋環境における植物相及び動物相に対する損害の防止

第146条 人命の保護

深海底における活動に関し、人命の効果的な保護を確保するために必要な措置をとるものとする。機構は、このため、関連する条約に規定されている現行の国際法を補足するために適当な規則及び手続を採択する。

第147条 深海底における活動と海洋環境における活動との調整

1 深海底における活動については、海洋環境における他の活動に対して合理的な考慮を払いつつ行う。

2 深海底における活動を行うために使用される施設は、次の条件に従うものとする。

a.当該施設について、専らこの部の規定に基づき、かつ、機構の規則及び手続に従い、組み立て、設置し及び撤去する。当該施設の組立て、設置及び撤去については、適当な通報を行わなければならず、また、当該施設の存在について注意を喚起するための恒常的な措置を維持しなければならない。

b.当該施設については、国際航行に不可欠な認められた航路帯の使用の妨げとなるような場所又は漁業活動が集中的に行われている水域に設置してはならない。

c.航行及び当該施設の安全を確保するため、その地点の周囲に適当な標識を設置することによって安全水域を設定するものとする。当該安全水域の形状及び位置は、船舶の特定の海域への合法的な出入り又は国際的な航路帯上の航行を妨げる帯状となるようなものとしてはならない。

d.当該施設については、専ら平和的目的のために使用する。

e.当該施設は、島の地位を有しない。当該施設は、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、領海、排他的経済水域又は大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない。

3 海洋環境における他の活動については、深海底における活動に対して合理的な考慮を払いつつ行う。

第148条 深海底における活動への開発途上国の参加

深海底における活動への開発途上国の効果的な参加については、開発途上国の特別の利益及びニーズ、特に開発途上国のうちの内陸国及び地理的不利国が不利な位置にあること(深海底から離れていること。深海底への及び深海底からのアクセスが困難であること等)から生ずる障害を克服することの必要性に妥当な考慮を払い、この部に明示的に定めるところによつて促進する。

第149条 考古学上の物及び歴史的な物

深海底において発見された考古学上の又は歴史的な特質を有するすべての物については、当語物の原産地である国、文化上の起源を有する国又は歴史上及び考古学上の起源を有する国の優先的な権利に特別の考慮を払い、人類全体の利益のために保存し又は用いる。

第3節 深海底の資源の開発

第150条 深海底における活動に関する方針

深海底における活動については、この部に明示的に定めるところにより、世界経済の健全な発展及び国際貿易の均衡のとれた成長を助長し、かつ、すべての国、特に開発途上国の全般的な発展のための国際協力を促進するように、次に掲げることを確保することを目的として行う。

a.深海底の資瀬を開発すること。

b.深海底の資源の秩序ある、安全な、かつ、合理的な管理(深海底における活動の効率的な実施を含む。)を行うこと及び保存に関する適切な原則に従って不必要な浪費を回避すること。

c.深海底における活動に参加する機会を、特に第144条及び第148条の規定に即して拡大すること。

d.この条約に定めるところにより、機構が収入の一部を得ること並びに事業体及び開発途上国に技術が移転されること。

e.消費者への供給を確保するため、深海底以外の供給源から採取される鉱物との関係で必要に応じ、深海底から採取される鉱物の入手可能性を増大させること。

f.深海底及び他の供給源から採取された鉱物について、生産者にとって採算がとれ、かつ、消費者にとつて公平である公有なかつ安定した価格の形成を促進すること並びに供給と需要との間の長期的な均衡を促進すること。

g.すべての締約国(社会的及び経済的制度又は地理的位置を問わない。)に対し深海底の資源の開発に参加する機会を増大させること及び深海底における活動の独占を防止すること。

h.次条に定めるところに従い、深海底における活動によって影響を受けた鉱物の価格の下落又は当該鉱物の輸出該の減少による経済又は輸出所得に対する悪影響から、当該下落又は減少が深海底における活動によって生じた限度において、開発途上国を保護すること。

i.人類全体の利益のために共同の財産を開発すること。

j.深海底の資源から生産される鉱物の輸入品及び当該鉱物から生産される産品の輸入品の市場へのアクセスの条件は、他の供給源からの輸入品に適用される最も有利な条件よりも有利なものであってはならないこと。

第151条 生産政策

a.機構は、前条に定める目的を妨げることなく、また、同条(h)の規定を実施するため、生産者及び消費者の双方を含む関係のあるすべての当事者が参加する既存の場又は適当な新たな取決め若しくは合意を通じて行動することにより、深海底から採取された鉱物から生産される産品の市場の成長、効率及び安定を生産者にとつて採算のとれる、かつ、消費者にとって公正な価格で促進するために必要な措置をとる。すべての締約国は、このために協力する。

b.機構は、深海底から採取された鉱物から生産される産品に関する会議であって生産者及び消費者の双方を含む関係のあるすべての当事者が参加するものに参加する権利を有する。機構は、当該会議の結果作成されるすべての取決め又は合意の当事者となる権利を有する。当該取決め又は合意に基づいて設立される機関への機構の参加は、深海底における生産に関して行われるものに限られるものとし、当該機関の関連する規則に従う。

c.機構は、深海底における鉱物のすべての生産に関し、この1の取決め又は合意に基づく義務を履行するに当たり、一律のかつ無差別な実施を確保するように行う。機構は、その義務の履行に当たり、既存の契約及び承認された事業体の業務計画の条件に即して行動する。

a.3に定める暫定期間中、操業者が機構に生産認可を申請し、その発給を受けるまでは、承認された業務計画に従った商業的生産を行ってはならない。当該生産認可については、業務計画に基づいて商業的生産の開始が予定されている時から5年さかのぼる日前に、申請し又はその発給を受けることができない。ただし、機構が、事業の進展の作者及び日程を考慮してその規則及び手続において他の期間を定める場合は、これによる。

b.操業者は、承認された業務計画に基づいて1年間に採取されることが予想されるニッケルの量を生産認可の申請書に明記する。当該申請者には、操業者が認可の取得後に行う支出(予定されている日程に従って商業的生産を開始することを可能にするよう合理的に計算されたもの)の計画表を含める。

c.(a)及び(b)の規定の適用上、機構は、附属書III第17条の規定に従って適当な実施に関する要件を定める。

d.機構は、暫定期間中の生産が計画されている各年について、申請された生産量及び既に認可が与えられている生産額の合計が、生産認可の発給される年について4の規定に従って計算したニッケルの生産者の上限を超えない限り、当該申請された生産量について生産認可を発給する。

e.生産認可及び承認された申請は、生産認可の発給の後、承認された業務計画の一部となる。

f.操業者は、生産認可の申請が(d)の規定に基づいて却下された場合には、機構に対しいつでも新たに申請することができる。

3 暫定期間は、承認された業務計画に基づき最初の商業的生産の開始が予定されている年の1月1日の5年前に始まる。最初の商業的生産の開始が当初予定された年より遅れる場合には、その遅れに従い暫定期間の開始時期及び当初計算された生産量の上限を調整する。暫定期間は、25年の期間が経過する時、第195条に規定する再検討のための会議が終了する時又は1に規定する新たな取決め若しくは合意が効力を生ずる時のうちいずれか早い時まで継続する。機構は、当該取決め又は合意が終了し又は理由のいかんを問わず効力を失う場合には、暫定期間の残余の期間についてこの条に定める権限を回復する。

a.暫定期間の各年の生産量の上限は、次の(i)及び(ii)の規定によつて得られた値の合計とする。

i.(b)の規定に従って計算されるニッケルの消費者の傾向線上の値であって最初の商業的生産が開始される年の前年のものと当該傾向線上の値であつて暫定期間が開始される年の前年のものとの差

ii.(b)の規定に従って計算されるニッケルの消費量の傾向線上の値であって生産認可が申請される年のものと当該傾向線上の値であって最初の商業的生産が開始される年の前年のものとの差の60パーセント

b.(a)の規定の適用上、

i.ニッケルの生産量の上限を計算するために用いられる傾向線上の値は、生産認可が発給される年において計算される当該傾向線上のニッケルの年間消費量の値とする。当該傾向線は、時間を独立変数とし、データを入手し得る最近の15年間の実際のニッケルの消費量の対数の線形回帰から得るものとする。この傾向線を原傾向線という。

ii.原傾向線の年間増加率か3パーセント未満の場合には、(a)に定める生産量を決定するために用いられる傾向線は、原傾向線上における(i)に規定する15年間の最初の年の値を始点として毎年3パーセントの率で増加する傾向線とする。ただし、暫定期間の各年における生産量の上限は、いかなる場合にも、当該原傾向線上の当該年の値と当該原傾向線上の暫定期間が開始される年の前年の値との差を超えてはならない。

5 機構は、4の規定に従って計算される生産量の上限のうち、事業体の平和の生産分として38,000メートル・トンの量のニッケルを留保する。

a.操業者は、全体の生産量が生産認可に定める量を超えないことを条件として、いずれの年においても生産認可に定める多金属性の団塊からの鉱物のその年の年間の生産量未満の量又は当該年間の生産量にその8パーセントの量を加えた量までの生産を行うことができる。各年における当該年間の生産者の8パーセント超20パーセント以下の超過について又は2年連続して当該年間の生産量を超過した後の最初の及びその後の年における当該年間の生産量の超過については、機構と交渉するものとし、機構は、操業者に対し追加的な生産についての補足的な生産認可を受けるよう要求することができる。

b.(a)の補足的な生産認可の申請については、生産認可を受けていない操業者によるまだ処理のされていないすべての申請について決定が行われ、かつ、他の予想される申請者について妥当な考慮が払われた後においてのみ、機構が検討する。機構は、暫定期間のいずれの年においても認められた生産量の合計が当該年の生産量の上限を超えてはならないという原則に従う。機構は、いかなる業務計画の下においても、年間46,500メートル・トンを超える量のニッケルの生産を認可してはならない。

7 生産認可に従って採取された多金属性の団塊から抽出される銅、コバルト、マンガン等のニッケル以外の鉱物の生産量は、操業者がこの条の規定に従って当該団塊からニッケルを最大限に生産した場合の当該ニッケル以外の鉱物の生産量を超えるべきではない。機構は、この7の規定を実施するため、附属書III第17条の規定によって規則及び手続を定める。

8 関連する多数国間の貿易協定の下での不公正な経済的慣行に関する権利及び義務は、深海底の鉱物の探査及び開発について適用される。当該貿易協定の当事国である締約国は、この8の規定に関して生ずる紛争の解決に当たって、当該貿易協定の紛争解決手続を利用する。

9 機構は、第161条8の規定に従って規則を採択することにより、適当な条件の下で、かつ、適当な方法を用いて、多金属性の団塊から抽出される鉱物以外の深海底の鉱物の生産量を制限する権限を有する。

10 総会は、深海底における活動によって影響を受けた鉱物の価格の下落又は当該鉱物の輸出量の減少によりその輸出所得又は経済が深刻な悪影響を受ける開発途上国を、当該下落又は減少が深海底における活動によって生じた限度において援助するため、経済計画委員会の助言に基づく理事会の勧告に従って、補償制度を設け又は経済調整を援助する他の措置(専門機関及び他の国際機関との協力を含む。)をとる。機構は、要請に基づき、最も深刻な影響を受けることが予想される国の困難を最小のものとし、かつ、当該国の経済調整を援助するため、当該国が有する問題について研究を開始する。

第152条 機構による権限の行使及び任務の遂行

1 機構は、その権限の行使及び任務の遂行(深海底における活動の機会を提供することを含む。)に当たって、差別をしてはならない。

2 1の規定にかかわらず、開発途上国に対しこの部に明示的に定める特別の考慮を払うこと(開発途上国のうちの内陸国及び地理的不利国に対し特に考慮を払うことを含む。)が、認められる。

第153条 探査及び開発の制度

1 深海底における活動は、機構が、この条の規定、この部の他の規定、関連する附属書並びに機構の規則及び手続に従い、人類全体のために組織し、行い及び管理する。

2 深海底における活動は、3に定めるところに従っで次の者が行う。

a.事業体

b.機構と提携することを条件として、締約国、国営企業又は締約国の国籍を有し若しくは締約国若しくはその国民によって実効的に支配されている自然人若しくは法人であつて当該締約国によって保証されているもの並びにこの(b)に規定する者の集団であってこの部及び附属書IIIに定める要件を満たすもの

3 深海底における活動については、附属書IIIの規定に従って作成され、法律・技術委員会による検討の後理事会によって承認された書面による正式の業務計画に従って行う。機構によって認められたところによって2(b)に定める主体が行う深海底における活動の場合には、業務計画は、同附属書第3条の規定に基づいて契約の形式をとる。当該契約は、同附属書第11条に定める共同取決めについて規定することができる。

4 機構は、この部の規定、この部に関連する附属書、機構の規則及び手続並びに3に規定する承認された業務計画の遵守を確保するために必要な深海底における活動に対する管理を行う。締約国は、第139条の規定に従い当該遵守を確保するために必要なすべての措置をとることによって機構を援助する。

5 機構は、この部の規定の遵守を確保するため並びにこの部又はいずれかの契約によって機構に与えられる管理及び規制の任務の遂行を確保するため、いつでもこの部に定める措置をとる権利を有する。機構は、深海底における活動に関連して使用される施設であって深海底にあるすべてのものを査察する権利を有する。

6 3に定める契約は、当該契約の定める期間中の有効性が保証されることについて規定する。当該契約は、附属書IIIの第18条及び第19条の規定に基づく場合を除くほか、改定されず、停止されず又は終了しない。

第154条 定期的な再検討

総会は、この条約の効力発生の後5年ごとに、この条約によって設けられる深海底の国際的な制度の実際の運用について全般的かつ系統的な再検討を行う。総会は、当該再検討に照らし、この部及びこの部に関連する附属書の規定及び手続に従って当該制度の運用の改善をもたらすような措置をとることができ、又は他の機関がそのような措置をとるよう勧告することができる。

第155条 再検討のための会議

1 総会は、承認された業務計画に従って最初の商業的生産が開始される年の1月1日から15年が経過した年に、深海底の資源の探査及び開発の制度を規律するこの部及び関連する附属書の規定を再検討するために会議を招集する。再検討のための会議は、当該15年の間に得られた経験に照らして、次に掲げる事項を詳細に検討する。

a.当該制度を規律するこの部の規定が、人類全体に利益を与えたか否かを含め、すべての点でその目的を達成したか否か。

b.当該15年の間に、留保されていない鉱区と比較して留保鉱区が効果的にかつ均衡のとれた形で開発されたか否か。

c.深海底及びその資源の開発及び利用が世界経済の健全な発展及び国際貿易の均衡のとれた成長を助長するように行われたか否か。

d.深海底における活動の独占が防止されたか否か。

e.第150条及び第151条に定める方針及び政策が実施されたか否か。

f.当該制度が深海底における活動から生ずる利益の衡平な配分をもたらしたか否か(特に開発途上国の利益及びニーズに考慮を払う。)。

2 再検討のための会議は、人類の共同の財産という原則、すべての国、特に開発途上国の利益のために深海底の資源の衡平な開発を確保することを目的とした国際制度並びに深海底における活動を組織し、行い及び管理するための機構が維持されることを確保する。再検討のための会議は、また、深海底のあらゆる部分に対する主権の主張又は行使の排除、国の深海底に関する権利及び一般的な行為、この条約に適合する深海底における活動への国の参加、深海底における活動の独占の防止、専ら平和的目的のための深海底の利用、深海底における活動の経済的側面、海洋の科学的調査、技術の移転、海洋環境の保護、人命の保護、沿岸国の権利、深海底の上部水域及びその上空の法的地位並びに深海底における活動と海洋環境における他の活動との間の調整に関するこの部に定める原則が維持されることを確保する。

3 再検討のための会議における意思決定手続は、第三次国際連合海洋法会議における手続と同一のものとする。再検討のための会議は、いかなる改正についてもコンセンサス方式によって合意に達するためのあらゆる努力を払う。コンセンサスに達するためのあらゆる努力が払われるまで、改正に関する投票は行われるべきではない。

4 再検討のための会議は、その開始の後5年の間に深海底の資源の探査及び開発の制度に関して合意に達しない場合には、当該5年の経過後の12箇月の間に、当該制度を変更し又は修正する改正であって必要かつ適当と認めるものを採択し及び批准又は加入のため締約国に提出することにつき、締約国の4分の3以上の多数による議決で決定することができる。当該改正は、締約国の4分の3による批准書又は加入書の寄託の日の後12箇月ですべての締約国について効力を生ずる。

5 この条の規定に従い再検討のための会議によって採択された改正は、既存の契約に基づいて取得された権利に影響を及ぼすものではない。

第4節 機 構

A 総 則

第156条 機構の設立

1 この部の規定に基づいて任務を遂行する国際海底機構を設立する。

2 すべての締約国は、締約国であることによって機構の構成国となる。

3 第三次国際連合海洋法会議のオフザーバーであって、最終議定書に署名し、かつ、第305条1の(c)、(d)、(e)又は(f)に規定するものに該当しないものは、機構の規則及び手続に従ってオブザーバーとして機構に参加する権利を有する。

4 機構の所在地は、ジャマイカとする。

5 機構は、その任務の遂行のために必要と認める地域のセンター又は事務所を設置することができる。

第157条 機構の性質及び基本原則

1 機構は、締約国が、特に深海底の資源を管理することを目的として、この部の規定に従って深海底における活動を組織し及び管理するための機関である。

2 機構の権限及び任務は、この条約によって明示的に規定される。機構は、深海底における活動についての権限の行使及び任務の遂行に含まれ、かつ、必要である付随的な権限であって、この条約に適合するものを有する。

3 機構は、そのすべての構成国の主権平等の原則に基礎を置くものである。

4 機構のすべての構成国は、すべての構成国が構成国としての地位から生ずる権利及び利益を享受することができるよう、この部の規定に基づいて負う業務を誠実に履行する。

第158条 機構の機関

1 機構の主要な機関として総合、理事会及び事務局を設置する。

2 事業体を設置する。機構は、この機関を通じて第170条1の任務を遂行する。

3 必要と認められる補助機関については、この部の規定に基づいて改正することができる。

4 機構の主要な機関及び事業体は、与えられた権限の行使及び任務の遂行についてそれぞれ責任を負う。各機関は、当該権限の行使及び任務の遂行に当たり、他の機関に与えられた特定の権限の行使及び任務の遂行を害し又は妨げるような行動を回避する。

B 総 会

第159条 構成、手続及び投票

1 総会は、機構のすべての構成国で構成される。各構成国は、総会において一人の代表を有するものとし、代表は、代表代理及び顧問を伴うことができる。

2 総会は、毎年通常会期として会合し、また、総会によって決定される特別会期として又は理事会の要請若しくは機構の構成国の過半数の要請に基づいて機構の事務局長によって招集される特別会期として会合する。

3 総会の会合は、総会により別段の決定が行われる場合を除くほか、機構の所在地において開催する。

4 総会は、その手続規則を採択する。総会は、各通常会期の初めに議長及び必要とされるその他の役員を選出する。これらの者は、次の通常会期において新たな議長及びその他の役員が選出されるまで在任する。

5 総会の会合の定足数は、構成国の過半数とする。

6 総会の各構成国は、一の票を有する。

7 特別会期として総会の会合を招集する決定を含む手続問題についての決定は、出席しかつ投票する構成国の過半数による議決で行う。

8 実質問題についての決定は、出席しかつ投票する構成国の3分の2以上の多数による議決で行う。ただし、当該多数が当該会期に参加する構成国の過半数であることを条件とする。実質問題であるか否かに関して問題が生じた場合には、当該問題は、実質問題についての決定に要する多数による議決で総会によって別段の決定が行われる場合を除くほか、実質問題として取り扱われる。

9 実質問題が初めて投票に付される場合には、議長は、当該実質問題に関する投票を5日を超えない期間延期することができる。もっとも、総合の構成国の5分の1以上の国が延期を要請する場合には、議長は、延期しなければならない。この規則は、いかなる実質問題についても1回のみ適用することができるものとし、会期末を超えて実質問題の投票を延期するために適用してはならない。

10 いずれかの問題について総会に提出された提案とこの条約との適合性に関する勧告的意見が議長に対して書面によって要請され、機構の構成国の4分の1以上の国がその審議を支持する場合には、総会は、当該勧告的意見を与えるよう国際海洋法裁判所の海底紛争裁判部に要請する。総会は、同裁判部によって勧告的意見が与えられるまで当該提案に関する投票を延期する。勧告的意見の要請が行われた会期の最後の過までに当該勧告的意見が与えられない場合には、総会は、当該提案に関して投票を行うために会合する時期を決定する。

第160条 権限及び任務

1 総会は、機構のすべての構成国で構成される機構の唯一の機関として、他の主要な機関がこの条約に明示的に定めるところによって責任を負う機構の最高機関とみなされる。総会は、この条約の関連する規定に従い機構の権能の範囲内のあらゆる問題又は事項に関して一般的な政策を定める権限を有する。

2 1に定める権限のほか、総会の権限及び任務は、次のとおりとする。

a.次条の規定に従って理事国を選出すること

b.理事会が提案する候補者のうちから機構の事務局長を選出すること。

c.理事会の勧告に基づき、事業体の総務会の総務及び事業体の事務局長を選出すること。

d.この部の規定に基づく総会の任務の遂行に必要と認める補助機関を設置すること。当該補助機関の構成については、衡平な地理的配分の原則、特別の利益並びに当該補助機関が取り扱う関連する技術的事項について資格及び能力を有する者で構成することの必要性に妥当な考慮を払う。

e.機構がその運営経費に充てるための十分な収入を他の財源から得るようになるまでの間、国際連合の通常予算に用いられる分担率に基づいて合意される分担率に従って機構の運営予算に対する構成国の分担金の額を決定すること。

f.

i.開発途上国及び完全な独立又はその他の自治的地位を獲得していない人民の利益及びニーズに特別の考慮を払って、深海底における活動から得られる金銭的利益その他の経済的利益の衡平な配分並びに第82条の規定に基づいて行われる支払及び拠出に関する規則及び手続を、理事会の勧告に基づいて審議し、承認すること。総会は、理事会の勧告を承認しない場合には、総会によって表明された意見に照らした再検討のため当該勧告を理事会に差し戻す。

ii.機構の規則及び手続並びにこれらの改正であって、第162条2(o)(ii)の規定に基づいて理事会によって暫定的に採択されたものを審議し、承認すること。暫定的に採釈された規則及び手続は、深海底における概要調査、深海底における探査及び開発、機構の財政管理及び内部運営並びに事業体の総務会の勧告を受けて行われる事業体から機構への資金の移転に関係するものとする。

g.深海底における活動から得られる金銭的利益その他の経済的利益をこの条約並びに機構の規則及び手続に即して衡平に配分することについて決定すること。

h.理事会が提出した機構の年次予算案を審議し、承認すること。

i.理事会及び事業体の定期的な報告並びに理事会及び機構のその他の機関に要請した特別の報告を検討すること。

j.深海底における活動に関する国際協力を促進するため並びに深海底における活動に関連する国際法の漸進的発展及び法典化を奨励するため、研究を開始し及び勧告を行うこと。

k.深海底における活動に関連する一般的な性質の問題(特に開発途上国に生ずるもの)及び深海底における活動に関連する問題で地理的位置に起因するもの(特に内陸国及び地理的不利国に生ずるもの)を審議すること。

l.経済計画委員会の助言に基づく理事会の勧告に従い、第151条10の規定に基づき、補償制度を設け又は経済調整を援助するその他の措置をとること。

m.第185条の規定に基づき構成国としての権利及び特権の行使を停止すること。

n.機構の権能の範囲内のあらゆる問題又は事項について討議すること並びに機構の特定の機関に明示的に付託されていない問題又は事項を機構のいずれの機関が取り扱うかを機構の諸機関の間の権限及び任務の配分に適合するように決定すること。

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