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#076 国連安保理決議478号とエルサレム基本法

​(2017.12.10)

エルサレム問題略歴

 

 1967年、第3次中東戦争(6日間戦争)の結果、勝利したイスラエルは、エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区すべて(他にシリアのゴラン高原、エジプトのシナイ半島─1982年に返還─も)を占領下に置いた。

 同年の国連決議242号では「最近の紛争において占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退」要求が盛り込まれたが、シナイ半島を除いて現在も占領は続いている。

 旧市街を含む東エルサレムは西エルサレムに強制的に併合され、占領地とは切り離されて、イスラエルの行政下に置かれた。

 1980年になると、イスラエルは統一エルサレム(西エルサレムと東エルサレム)を恒久的首都とする法案(エルサレム法)を成立させて、この併合を再確認した

 しかし、国際的にはこの併合は認められず、ほとんどの国が大使館をテルアビブに置いている。

 同年の国連安保理決議478号は、この法案が無効だとし、破棄すべきものだとしたが、イスラエルはこれを無視し続けて今日に至っている(オスロ合意では最終段階で解決されるべき問題だとされていた)。

 占領下に置かれていたヨルダン川西岸地区とガザ地区では、87年に第1次インティファーダ(「民衆蜂起」と訳される抵抗運動)が起こり、イスラエルによる軍事弾圧を受けて多くの犠牲者を出した。

 その後、PLO(パレスチナ解放機構)は、イスラエルを承認し、パレスチナ国家を48年の停戦ラインで分けられた占領地(もともとの全土の約4分の1)に樹立する方向で、国際舞台に登場する。

 この後、93年、イスラエルとパレスチナの間でオスロ合意(「パレスチナ暫定自治協定」)が結ばれ、パレスチナ暫定自治政府が誕生した。

 しかし、エルサレムの帰属、入植地問題、水問題、パレスチナ難民の帰還権、国境管理などの重要な問題は最終段階で解決をはかるものとして棚上げされた。

 このような歴史を経て、米国のトランプ大統領は2017年12月6日、公式にエルサレムをイスラエルの首都と認め、国務省に対しテルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する手続きを始めるように指示した

国連安保理決議478号

 

 

【 原 文 】

 

Resolution 478

 

 The Security Council,

 Recalling its resolution 476 (1980),

 Reaffirming again that the acquisition of territory by force is inadmissible,

 Deeply concerned over the enactment of a "basic law" in the Israeli Knesset proclaiming a change in the character and status of the Holy City of Jerusalem, with its implications for peace and security,

 Noting that Israel has not complied with resolution 476 (1980),

 Reaffirming its determination to examine practical ways and means, in accordance with the relevant provisions of the Charter of the United Nations, to secure the full implementation of its resolution 476 (1980), in the event of non-compliance by Israel,

 1. Censures in the strongest terms the enactment by Israel of the "basic law" on Jerusalem and the refusal to comply with relevant Security Council resolutions;

 2. Affirms that the enactment of the "basic law" by Israel constitutes a violation of international law and does not affect the continued application of the Geneva Convention relative to the Protection of Civilian Persons in Time of War, of 12 August 1949, in the Palestinian and other Arab territories occupied since June 1967, including Jerusalem;

 3. Determines that all legislative and administrative measures and actions taken by Israel, the occupying Power, which have altered or purport to alter the character and status of the Holy City of Jerusalem, and in particular the recent "basic law" on Jerusalem, are null and void and must be rescinded forthwith;

 4. Affirms also that this action constitutes a serious obstruction to achieving a comprehensive, just and lasting peace in the Middle East;

 5. Decides not to recognize the "basic law" and such other actions by Israel that, as a result of this law, seek to alter the character and status of Jerusalem and calls upon:

  (a) All Member States to accept this decision;

  (b) Those States that have established diplomatic missions at Jerusalem to withdraw such missions from the Holy City;

 6. Requests the Secretary-General to report to the Security Council on the implementation of the present resolution before 15 November 1980;

 7. Decides to remain seized of this serious situation.

 Adopted at the 2245th meeting by 14 votes to none, with 1 abstention (United States of America).

 

 【 和  訳 】(岩下仮訳)

 国連安保理決議478全文(エルサレム基本法非難・不承認決議、1980年)

 

 安全保障理事会は、

 決議476(1980)を想起し、

 武力による領土獲得を容認しない原則を再確認し 、

 イスラエル議会における「基本法」の制定を憂慮し、平和と安全への影響を考慮して、エルサレムの性格と地位を変更するすべての行政的・法的措置は無効であることを確認し、

 イスラエルが決議476(1980)を遵守していないことに留意し、

 イスラエルが遵守しなかった場合には、決議476(1980)の全面的な実施を確保するために、国連憲章の関連規定に従って実践的な方法と手段を検討する決意を再確認し、

 1.イスラエルによるエルサレムの「基本法」の制定及び安全保障理事会の関連決議の拒否に対し最強の言葉をもって批判し、

 2.イスラエルによる「基本法」の制定は国際法違反であり、エルサレムを含む1967年6月以来占領されているパレスチナおよびその他のアラブ領土への、1949年8月12日の戦時における民間人の保護に関するジュネーブ条約の継続的な適用に影響を及ぼさないことを確認し、

 3.エルサレム聖地の性格や地位を変えようとしたイスラエル、占領軍、そして最近のエルサレムにおける「基本法」で取られたすべての立法・行政上の措置と行動は空虚かつ無効であり、直ちに取り消さなければならないことを決定し、

 

 4.この行動は、中東における包括的で、永続的な平和を達成する上で深刻な障害となることを確認し、

 

 5.この法律の結果としてエルサレムの性質と地位を変えようとするイスラエルの「基本法」及びその他の行為を認証しないことを決定し、

 (a)すべての加盟国がこの決定を受け入れること

 (b)エルサレムにおける大使館等外交使節団及び任務を聖都から撤退させること

 6. 1980年11月15日までに本決議の実施について安全保障理事会に報告するよう事務総長に要請し、

 7 この深刻な状況を乗り越えることを決定した。

 

  第2245回会合において、棄権した1国(アメリカ合衆国)を除く14カ国の賛成をもって採択した。

 

エルサレム基本法

 

【 英  文 】(原文はヘブライ語)

Basic Law: Jerusalem, Capital of Israel

  Jerusalem, Capital of Israel:

  1. Jerusalem, complete and united, is the capital of Israel.

 Seat of the President, the Knesset, the Government and the Supreme Court:

  2. Jerusalem is the seat of the President of the State, the Knesset, the Government and the Supreme Court.

 

 Protection of Holy Places:

  3. The Holy Places shall be protected from desecration and any other violation and from anything likely to violate the freedom of access of the members of the different religions to the places sacred to them or their feelings towards those places.

 Development of Jerusalem:

  4.

   (a) The Government shall provide for the development and prosperity of Jerusalem and the well-being of its inhabitants by allocating special funds, including a special annual grant to the Municipality of Jerusalem (Capital City Grant) with the approval of the Finance Committee of the Knesset. 

 

   (b) Jerusalem shall be given special priority in the activities of the authorities of the State so as to further its development in economic and other matters. 

 

   (c) The Government shall set up a special body or special bodies for the implementation of this section.

Amendment no. 1 (passed by the Knesset on 27 November 2000):

 Area of the jurisdiction of Jerusalem

  5. The jurisdiction of Jerusalem includes, as pertaining to this basic law, among others, all of the area that is described in the appendix of the proclamation expanding the borders of municipal Jerusalem beginning the 20th of Sivan 5727 (June 28, 1967), as was given according to the Cities' Ordinance.

 Prohibition of the transfer of authority

  6. No authority that is stipulated in the law of the State of Israel or of the Jerusalem Municipality may be transferred either permanently or for an allotted period of time to a foreign body, whether political, governmental or to any other similar type of foreign body.

 Entrenchment

  7. Clauses 5 and 6 shall not be modified except by a Basic Law passed by a majority of the members of the Knesset.

【 和  文 】(岩下仮訳)

 

 イスラエルの首都エルサレム基本法(1980年)(岩下仮訳)

 

 【エルサレム=イスラエルの首都】 

 1. 完全で統一されたエルサレムは、イスラエルの首都である。

 

 【大統領、議会、政府、最高裁判所の設置】

 2. エルサレムに、国家大統領、議会、政府、最高裁判所を置く。

 

 【聖所の保護】

 3. 聖所は、冒涜やその他の違反、異なる宗教者のアクセスの自由を侵害する可能性のあるもの、その場所への聖なる場所やそれらの気持ちへの保護から保護されるものとする。

 

 【エルサレムの発展】

 4.(a)政府は、議会財務委員会の承認を得て、エルサレム市に対し特別な年次助成金を含む特別資金を配分することにより、エルサレムの発展と繁栄とその住民の福利を提供する。

  (b)エルサレムは、経済的及びその他の事項の発展を促進するために、国の当局の活動に特別な優先権を与えられるものとする。

  (c)政府は、本条の実施のための単数又は複数の特別機関を設置するものとする。

 

 第一次改正(2000年11月27日、議会通過):

 

 【エルサレムの管轄区域】

 5. エルサレムの管轄には、この基本法に関連するものとして、シヴァン暦5727(1967年6月28日)の第20日から始まる地方自治体エルサレムの国境を広げる宣言の付録に記載されているすべての領域、都市の条例に従って与えられる。

 

【権限委譲の禁止】

 6. イスラエル共和国またはエルサレム市の法律で定められている権限は、永続的にまたは割り当てられた期間の間、政治的、政府的、または他の類似の異種の外部から移転される。

 

【追加】

 7. 第5項および第6項は、議会のメンバーの過半数の賛成を得て通過した基本法による場合を除き、変更されないものとする。