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#060 原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針

平成28年12月20日

原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について

            (平成28年12月20日 閣議決定)

 原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について、別紙のとおり決定する。

 

原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針

         平成28年12月20日

 

目 次(編注:頁は略)

はじめに

1. 避難指示の解除と帰還に向けた取組を拡充する

 (1) 帰還に向けた安全・安心対策

 (2) 復興の動きと連携した除染の推進及び中間貯蔵施設の整備等

 (3) 避難指示解除に向けた取組と解除後の生活支援策の充実

2. 帰還困難区域の復興に取り組む

 (1) 帰還困難区域における特定復興拠点等の整備

 (2) 長期避難者の支援

3. 新たな生活の開始に向けた取組等を拡充する

 (1) 双葉郡をはじめとする避難指示区域等の中長期・広域の将来像

 (2) 復興拠点の整備等の加速

4. 事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を拡充する

 (1) 福島相双復興官民合同チームの体制強化

 (2) 事業・生業の再建・自立、生活の再構築のための取組の充実

 (3) 風評被害対策等

 (4) 農林業賠償等

5. 廃炉・汚染水対策に万全を期す

 (1) 予防的・重層的な汚染水対策をはじめとするリスク低減

 (2) 中長期的な廃炉を支える環境整備・体制強化

 (3) 徹底した情報公開を通じた社会の理解促進及び信頼関係強化

6. 国と東京電力がそれぞれの担うべき役割を果たす

 (1) 基本的枠組み

 (2) 交付国債の償還費用の回収

 (3) 東京電力等による取組について

 (4) 国の行う新たな環境整備

おわりに

 

 

 

原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針

はじめに

 原子力災害からの福島の復興・再生を加速させ、一日も早い住民の方々の生活再建や地域の再生を可能にしていくため、政府は、平成27年6月、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(以下「指針」)を改訂し、早期帰還支援と新生活支援の両面の取組の強化、事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組の大幅な拡充、東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」)の廃止措置等に向けたより安定的で持続的な対応等について、国として取り組むべき方向性を明らかにした。

 これまでの取組により、福島の復興・再生は一歩一歩着実な進展を見せている。具体的には、平成27年6月の改訂以降、帰還困難区域以外の区域において、楢葉町、葛尾村、川内村及び南相馬市の避難指示の解除が実現し、住民の方々の故郷への帰還が可能となった。また、飯舘村及び川俣町についても来年3月の避難指示の解除を決定し、住民の方々の故郷への帰還に向けた道筋がついてきた。被災事業者の自立に向けては、平成 27 年8月に発足した「福島相双復興官民合同チーム」が事業者の個別訪問を行い、現場で汲み取ったニーズを踏まえた支援策を展開している。除染・中間貯蔵については、 除染実施計画に基づく除染等の措置の加速化に向けた取組を進めているとともに、大熊町及び双葉町の協力を頂きながら、中間貯蔵施設の整備と除去土壌等の搬入を進めている。福島第一原発の廃炉・汚染水対策については、サブドレンの稼働、海側遮水壁の閉合完了、凍土壁の海側における凍結完了、ロボットや宇宙線(ミュオン)による格納容器内部の状況把握等が進んでいる。

 このように、復興に向けた取組の具体的な進展がみられるものの、復興の進捗にはいまだばらつきがある。5年9ヶ月以上の長期にわたる避難状態の継続に伴って、新たな課題も顕在化してきている。住民の方々が復興の進展を実感できるようにするためには、被災地域の実情を踏まえて、対策を更に充実させていく必要がある。与党から政府に対しても、本年8月に復興の加速に向けた提言1が行われている。

 1 「震災復興加速化のための第6次提言~復興・創生への道筋を明示~」(平成28年8月24日 自由民主党・公明党)

 以上のような状況を踏まえ、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくため、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下「基本指針」)を策定し、必要な対策の追加・拡充を行うこととする。具体的には、早期帰還支援と新生活支援の両面の対策をより一層深化させるとともに、事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を拡充する。帰還困難区域については、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、放射線量をはじめ多くの課題があることも踏まえ、可能なところから着実かつ段階的に、政府一丸となって、帰還困難区域の一日も早い復興を目指して取り組んでいくこととする。復興事業を平成29年度のできるだけ早期に着手できるようにするため、特定復興拠点等の整備に向けた制度を構築する。また、原子力災害からの復興については、引き続き国が前面に立って、その役割を果たしていく一方、東京電力が、福島の方々が安心し、国民が納得し、現場が気概を持って働けるような経営改革を行い、自らの責任を果たさなければ、国民の理解を得ることはできない。復興の進捗とあいまって、廃炉・賠償等の事故対応費用の見通しが明らかになりつつあることを踏まえて、 改めて国と東京電力の役割分担を明確化する。

1. 避難指示の解除と帰還に向けた取組を拡充する

  田村市、川内村、楢葉町、葛尾村、南相馬市、飯舘村及び川俣町では避難指示解除準備区域・居住制限区域の避難指示解除が決定され、富岡町、浪江町の避難指示解除準備区域・居住制限区域についても、平成29年3月末までの避難指示解除に向けた取組が本格化している。今後の避難指示解除及び解除後の本格復興を更に推し進めるため、インフラや生活関連サービスの復旧、子どもの生活環境を中心とする除染作業を加速するとともに、放射線の健康影響等に関する安全・安心対策をこれまで以上にきめ細かく講じていく。また、住民の方々が自立的に生活再建を進めていくことが可能となるよう、きめ細かな生活支援策を強化する。さらに、避難指示の解除及び解除後の復興を進めてきた中で浮き彫りとなってきた、行政(教育、行政サービスkども(放射線不安、住宅、医療等)、産業(事業 再建、雇用等)等の各分野における諸課題の解決に向けて、これまでに得た知見を活かしながら、国と地元が一体となって、あらゆる施策を総動員して取り組んでいく。

 (1) 帰還に向けた安全・安心対策

  故郷への帰還に向けて、住民の方々の放射線の健康影響等に関する不安に一層きめ細かく応えていくため、「帰還に向けた安全・ 安心対策に関する基本的考え方」を2踏まえた総合的・重層的な防護措置の取組を、今後とも国が、将来にわたり責任をもって、きめ細かく着実に進めていく。

 2 「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」(平成25年11月20日 原子力規制委員会)

 具体的には、女性や子どもを含む住民の方々の放射線不安に対 するきめ細かな対応については、御要望等に応じた生活圏の線量 モニタリング、個人線量の把握・管理体制の整備や放射線相談員 による相談体制の整備を引き続き進める。放射線相談の活動については、それぞれの市町村の状況に応じた多様なニーズに対応できるよう、「放射線リスクコミュニケーション相談員支援センター」等により、自治体による相談体制の

 放射線相談員のみならず、生活支援相談員や学校教員などの住民の方々との接点が多い方々に対しても、放射線知識の研修や専門家によるバックアップ体制の構築などのサポートを強化し、様々な場面で住民の方々から寄せられる放射線不安に対して、適切な 現場対応が行える体制を整える。

 また、避難生活の長期化等や放射線による健康不安に適切に対応するため、福島県による県民健康調査の実施を継続的に支援する。さらに、福島復興再生特別措置法(以下「福島特措法」)の趣旨を踏まえ、健康不安の解消に資する取組、震災後の生活習慣変化による健康影響への取組及び被災地域における地域医療再生への取組に対する支援を強化し、子どもをはじめとする住民の健康を守る取組を持続的かつ着実に推進する。

 リスクコミュニケーションについては、「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」3に基づく取組をフォローアップし、関係省庁における取組を強化するとともに、既に実施されている効果的な事例の横展開を図りつつ、地元ニーズに応じた取組を支援していく。

3 「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」(平成26年2月18日 復興庁・環境省)

 生活支援相談員については、避難先での支援を行うだけでなく、住民の方々のふるさとへの帰還後も見守り・相談対応を継続できるよう、支援対象の明確化を図るとともに、見守り相談支援従事者の資質向上につながる資格取得等の研修等の周知を通じて、相 談員のなり手の確保を後押しする。また、相談員が得た住民や地域の課題を解決するため、支援策の紹介や関係省庁との連携促進を図る。さらに、先に帰還した住民の方々の生活実態について、避難者等への情報発信の促進を図る。

 以上の対策については、地元の実情や住民の方々の御意向を十分に踏まえながら実施するとともに、現場の実態に即して必要な見直し・拡充を行う。

 こうした取組を通じて、個人が受ける追加被ばく線量を、長期目標として、年間1ミリシーべルト以下になることを目指していく。さらに、線量水準に関する国際的・科学的な考え方を踏まえた我が国の対応について、引き続き住民の方々への丁寧な説明を行い、正確な理解の浸透に努める。

 (2) 復興の動きと連携した除染の推進及び中間貯蔵施設の整備等

 除染及び中間貯蔵施設の整備並びに放射性物質に汚染された廃棄物の処理は、福島の復興にとって極めて重要であり、引き続き政府一丸となって、全力で取り組むべき課題である。

 除染については、国直轄・市町村除染の実施対象である全ての地域で平成28年度末までに除染実施計画に基づく面的除染を完了させるべく、自治体とも連携して全力で取り組む。また、フォローアップ除染や遮蔽土などの有効利用・処分などの必要な措置を、 関係省庁の協力の下、自治体と連携し、復興の動きと連動しつつ効果的に進める。

 中間貯蔵施設は福島の復興に不可欠な施設であり、国が県・市町村と連携して取組を進めていく。中間貯蔵施設事業については、予定地の大半の用地について物件調査を終了するとともに、昨年度までにパイロット輸送として5万m³程度の除染土壌等の搬入を行い、今年度からは除染土壌等の輸送量を段階的に拡大するなど、着実に進捗してきている。さらに、大熊町及び双葉町の協力を頂き、町有地を活用した保管場への福島県内の学校等からの除染土壌等の搬出が可能となり、その作業が進んでいる。本年11月には土壌貯蔵施設等の本格的な施設の整備に着手した。

 今後、平成32年度までに、少なくとも住宅や学校など身近な場所にある除染土壌等に相当する量を搬入するとともに、用地取得等を最大限進め、幹線道路沿いにある除染土 壌等に相当する量を中間貯蔵施設へ搬入するよう取組を進めていく。また、最終処分量の低減を図るため、減容技術の開発・実証等を進めるとともに、再生利用先の創出等に関し、関係省庁等が連携して取組を進める。

 福島県の指定廃棄物の処理については、本年4月に既存の管理型処分場が国有化されるとともに、6月には安全確保に関する協定が締結されたところであり、今後、安全・安心に万全を期しつつ、既存の管理型処分場への早期の搬入に取り組む。また、除染廃棄物等を含めて仮設焼却施設の有効活用について検討する。

 除染対象以外の道路等側溝堆積物の撤去・処理に関して、平成28年9月30日、復興庁及び環境省は、対応方針4を取りまとめた。

 この対応方針に基づき、国、県、市町村が一体となって取組を進めていく 。

 なお、放射性物質汚染対策については、発災後、議員立法で成立した特別措置法5を実施するために急ごしらえで整備した体制を抜本的に見直し、汚染物処理の加速化に向け、災害廃棄物対応などとあわせ、推進体制の一元化・充実を図り、柔軟かつ突破力に満ちた解決力の向上を目指した組織改革を行う。

 4 「除染対象以外の道路等側溝堆積物の撤去・処理の対応方針」(平成28年9月30日 復興庁・環境省)

 

 5 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成 23 年法律第 110 号

 (3) 避難指示解除に向けた取組と解除後の生活支援策の充実

 ① 避難指示解除に向けた取組

 平成 27 年6月に改訂した指針で示された、除染、インフラや生活に密着したサービスの復旧などの加速に政府一体となって取り組んできた結果、避難指示解除準備区域・居住制限区域については、遅くとも事故から6年後(平成 29 年3月)までの避難指示解除に向けた道筋がついてきた。

 富岡町、浪江町の避難指示解除準備区域・居住制限区域についても、遅くとも平成 29 年3月末までに避難指示を解除し、住民の方々の帰還が可能となるよう、関係省庁があらゆる施策を総動員して取り組む。

 具体的には、富岡町については、町が表明している「平成29年 4月の帰還開始」を着実に実現できるよう、帰還できる環境の整備に向け、関係省庁が総力を挙げて、フォローアップ除染の徹底、家屋解体の加速、インフラ復旧・生活関連サービスの整備等の取組を進める。

 また、浪江町についても、町が表明している平成 29 年3月の避難指示解除目標に向けて、関係省庁が総力を挙げて、除染の着実な完了、比較的線量が高い地域の線量低減、家屋解体の加速、インフラ復旧・生活関連サービスの整備等の取組を進める。

 ② 帰還する方々への生活環境整備及び当面帰還できない方々への支援

 避難指示解除及び帰還の進展に伴って、住民の方々が自立的に生活を再建していくことが可能となるよう、きめ細かな生活支援 や事業・生業再開への支援を強化するとともに、帰還する住民の方々が安心して生活できる環境の整備に万全を期す。

 住民の方々の生きがいづくりやふるさとへのつながり意識の保持を図りつつ、荒廃抑制のための清掃や除草、防犯パトロールの強化など避難指示区域等で増大するニーズにきめ細かく対応できるよう、住民の方々の参画も念頭に置きながら、福島生活環境整備・帰還再生加速事業の拡充を図る。

 住民の方々が故郷での生活を速やかに再開できるよう、国による解体作業の迅速な実施や、住宅修繕等を担う事業者に対する放射線不安対策を実施し、十分な数の事業者の確保に取り組む。

 住民の方々が必要な医療・介護サービスを受けられるよう、医療・介護人材の確保や地域への二次救急医療機関の着実な整備、迅速な救急搬送体制の整備に取り組む。また、不足診療科目や薬局の確保、地域で介護人材を育成できる体制構築を促進し、よりきめ細かな対応を図り、関係省庁と県や市町村等が連携して、地元の声を踏まえた課題の解決を行っていく。

 住民の方々が日常的な買い物ができる商店の開業支援、住民の方々の生活の足を確保できるような地域全体の公共交通の活性化・移動手段、生活に欠かせない飲料水の安全・安心確保、イノシシ等の鳥獣対策等への支援等に取り組む。

 学校が地元で早期に再開することで、若者・子育て世帯を中心とした住民の方々の帰還が促進されるよう、避難指示を解除した地域において、施設・設備整備や通学手段確保への支援や教職員の増員等のきめ細かな教育環境の整備を進める。さらに、英語教育やICT教育の充実、「ふるさと創造学」など特色ある教育への支援等、魅力ある教育づくりに向けて、国、県、市町村が一体となって取り組み、地元の声を踏まえた課題の解決を行っていく。

 避難指示が出された地域の復旧・復興の進展に伴う仮設住宅から恒久住宅への移行に向けては、住民への情報提供、相談等を通じた住宅・生活再建支援を行っていくこととし、それに向けた県の取組について、国としても支援していく。

 一方で、ふるさとへの思いを持ちながら、やむを得ず当面帰還できない住民の方々に対しても、避難先での生活に対するきめ細かな支援を行う。

 具体的には、長期避難者の生活拠点の形成のため、福島県が策定している整備計画に基づき災害公営住宅の整備が図られるよう、引き続き国として支援する。

 あわせて、原発事故により住んでいた町から避難している子どもたちが、今なお避難先でいじめに遭うような事例も見受けられることから、教職員等を対象とした研修を強化するなど、特に子どもに対して差別や偏見が向けられない効果的な対策を講じると ともに、いじめに遭った子どもの心のケア等の取組を進める。

 また、避難生活の長期化に伴って見守り、生活支援等に対するニーズが高まっている状況を踏まえ、被災者支援総合交付金による見守りや相談支援、コミュニティ形成支援、高齢者等の日常生活サポート、住宅・生活再建に向けた相談対応、避難先での生活支援を行うNPOなどへの支援等を行うほか、避難指示区域等における医療費等の窓口負担・保険料の減免に必要な支援などを行っていく。

 国の支援策の運用について、採択審査をより迅速に進めるとともに、過去の採択案件について関係者により丁寧に情報提供を行うなど、自治体など関係者が国の支援策を活用しやすい環境を整えていく。

② 帰還困難区域の復興に取り組む

 帰還困難区域の取扱いについては、新たに「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」6において、5年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す「復興拠点」(以下「特定復興拠点」)の整備等について、基本的な考え方を示した。

 6 「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」(平成28年8月31日 原子力災害対策本部、復興推進会議)

 (1) 帰還困難区域における特定復興拠点等の整備

 この考え方を具体化するため、特定復興拠点を整備する計画(以下「整備計画」)を県と協議した上で市町村が策定し、国の認定を受けた場合、一団地の復興再生拠点整備制度や道路の新設等のインフラ事業の国による事業代行、事業再開に必要な設備投資等に係る課税の特例を特定復興拠点においても活用できるようにする等、必要な措置を盛り込んだ福島特措法の改正法案を、次期通常国会に提出する。加えて、平成 29 年度から、特定復興拠点の復興事業に要する予算・税制等の措置を講じる。

 整備計画の枠組み策定に当たっては、特定復興拠点の整備に係る除染・解体事業についても、避難指示解除後の土地利用を想定した整備計画の下で実施することとし、除染とインフラ整備を一体的に行う仕組みを整える。あわせて、実施に必要な体制を整備する。

 整備計画の実施に係る除染費用相当部分等を含む費用負担については、次のとおり整理する。

 ・平成 23 年 12 月に警戒区域と計画的避難区域の見直しを行った際、避難指示解除準備区域や居住制限区域は、住民の帰還を目指すことを目標として設定されたのに対し、帰還困難区域は、「将来にわたって居住を制限することを原則とした区域」として設定された。

 ・こうした政府方針や、それに基づき原子力損害賠償紛争審査会が策定した中間指針などを踏まえ、東京電力は帰還困難区域の全域・全住民に対して、当該区域での居住が長期にわたってできなくなることを前提として、賠償を既に実施してきている。

 ・こうした中、本年8月、当該区域内で放射線量が低下していることや、帰還を希望される住民の強い思いを背景とする地元からの要望、与党からの提言を踏まえて、政府は今まで示してきた方針から前に踏み出す形で、新たに住民の居住を目指す特定 復興拠点を整備する方針を示した。

 ・特定復興拠点の整備は、こうした国の新たな政策的決定を踏まえ、復興のステージに応じた新たなまちづくりとして実施するものであるため、東京電力に求償せずに国の負担において行うものとする。

 当面の整備計画の実施に係る予算については、東日本大震災復興特別会計において措置する。その上で、整備計画に基づいて実施される除染・解体事業は、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」に基づく事業とは区別して整理した上で国が実施し、インフラ整備事業については国において必要な措置を講じ、市町村等において実施するものとする。

 また、特定復興拠点の整備を含む除染や中間貯蔵施設の整備に当たっては、福島復興を加速する観点から、全体工程の効率化等の取組に、関係各省庁が協力して連絡調整等の態勢を整える。また、国は、東京電力に福島復興に向けた責任を貫徹させていく観点から、 除染を含む特定復興拠点の整備に係る取組について、東京電力が最大限の人的協力を行うよう指導を行う。

 なお、特定復興拠点を設定することが困難な市町村については、地域の実情に応じた支援の在り方を引き続き柔軟に検討する。

 

 (2) 長期避難者の支援

 ふるさとへの思いを持ちながら地元を離れて生活をする方々に対する生きがいづくりや、ふるさとへのつながり意識の保持、帰還困難区域等における荒廃抑制及び保全対策等を図るため、福島生活環境整備・帰還再生加速事業の拡充など、必要な予算を措置する。

 また、避難生活の長期化に伴って見守り活動などの生活サポート等に対するニーズが高まっている状況を踏まえ、きめ細かい支援を行うべく、被災者支援総合交付金を活用した、見守りや相談対応、被災者の交流会や市民農園等のコミュニティ形成への支援、移動支援を含めた高齢者等の日常生活のサポート、住宅・生活再建に向けた相談対応、避難先での生活支援を行うNPOなどへの支援等を行うほか、避難指示区域等における医療費等の窓口負担・保険料の減免に必要な支援など、避難先における生活支援の取組を復興・創生 期間を通じて継続的に後押ししていく。

3. 新たな生活の開始に向けた取組等を拡充する

 福島イノベーション・コースト構想に基づき、浜通り地域における産業集積の実現に向けて、ロボットテストフィールド等の各拠点の整備を進めると同時に、同構想の推進に向けた関係者による協議会の創設等により、関係主体が連携した広域的かつ横断的な取組を進めていく。あわせて、福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモでルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」に基づく取組を着実に推進する。また、JR常磐線の平成 31 年度末までの全線開通に向けた取組を実施していく。加えて、各市町村の帰還環境整備に取り組む法人(まちづくり会社等)については、その活動を後押しするため、福島特措法に位置付ける。

 これらにより、新たな生活の開始に向けた環境整備を加速化して いく。

(1) 双葉郡をはじめとする避難指示区域等の中長期・広域の将来像

①  中長期・広域の将来像

 福島イノベーション・コースト構想の実現を通じた浜通り地域の広域的かつ自立的な復興に向けて、廃炉研究開発、ロボット研究・実証、情報発信拠点(アーカイブ拠点)、国際産学連携等の各拠点の整備を進めるとともに、環境・リサイクル分野、再生可能エネルギー等のエネルギー分野、農林水産分野に係るプロジェクトの具体化を着実に進める。

 特に、災害現場への搬送や防災の研修・訓練等の機器としての活用も期待される災害用ロボットの開発への貢献にも資するロボット研究・実証を行うため、ロボットテストフィールドや国際産学共同施設の整備を着実に進める。

 加えて、浜通り地域における産業集積の実現に向けて、実用化開発等の一層の促進や、拠点の強みを最大限に活かした交流人口の増加、浜通り地域に進出する企業に対する支援により、新たな企業の呼び込みを図る。

 その際、福島相双復興官民合同チームとも連携しながら、新たな企業が浜通り地域に求める技術ニーズと地元事業者の技術シーズ等のマッチングを後押しするなど、両者のビジネス機会の創出に向けた支援に取り組む。

 あわせて、住居・宿舎・交通等のインフラに係るニーズ調査及びそれを踏まえた対応の検討など、福島イノベーション・コースト構想の実現に向けた各拠点の周辺環境の整備を進める。

 また、楢葉遠隔技術開発センター、廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟(富岡町)、大熊分析・研究センターなどの廃炉研究開発拠点の運営主体である国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は、幅広い関係者の叡智を結集して、各拠点における廃炉研究開発を着実に進めるとともに、持てる設備や技術的知見を活用し、新技術、新産業の創出を支援することで、浜通り地域の産業復興に貢献する。特に、廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟については、平成 29 年4月の供用開始以降、拠点周辺での積極的な研究活動等を通じて、まちの復興の一翼を担っていく。

 さらに、福島イノベーション・コースト構想の実現に向けた多岐にわたる課題を政府全体で解決していくため、福島特措法に基づく計画に同構想に係る取組を位置付け、関係省庁による具体的な連携体制の構築等を進める閣僚級の会議体の創設や、関係省庁、県等が参画して同構想の推進に関する基本的な方針を共有していく場としての協議会を創設する。加えて、民間企業も含めた関係主体間の有機的かつ広域的な連携体制の整備を通じて、横断的に取組を進める。

 福島 12 市町村の将来像については、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までのロードマップに従い、関係市町村間の連携強化等の取組の具体化を進める。具体化に当たっては、横断的かつ広域的な視野から取り組むとともに、行政はもとより、民間企業、大学等の研究・教育機関、NPO、地域住民等の多様な主体が連携して取り組む。

 ② 福島新エネ社会構想の推進

 福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモでルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」に基づき、再生可能エネルギーの最大限の導入拡大を図るとともに、再生可能エネルギーから水素を 「作り」、「貯め・運び」、「使う」実証や、県内におけるスマートコミュニティの構築に向けた取組を推進する。

 ③ 広域インフラの整備

 福島県浜通り地方を縦断し、首都圏とも直結する重要な交通インフラであるJR常磐線については、平成28年3月に公表したJ R常磐線の全線開通の見通し等に基づき、関係者間で緊密に連携し、平成31年度末までの全線開通を目指す。あわせて、一般通行を再開した国道6号や、全線開通した常磐自動車道については、放射線量等の情報提供を引き続き行う。また、常磐自動車道の一部4車線化の復興・創生期間での完成を目指すとともに、大熊I C、双葉ICの整備を推進する。

 (2) 復興拠点の整備等の加速

 上記の中長期・広域の将来像を念頭に置きつつ、避難指示区域等において現在進められている復興拠点や生活インフラの整備を引き続き着実に進めるとともに、帰還困難区域における新たな特 定復興拠点の整備等に取り組む。

 また、各市町村において、まちの復興やコミュニティ再生等の帰還環境の整備に取り組む法人(まちづくり会社等)の取組を後押しするため、当該法人を福島特措法に位置付ける。

 なお、国は、東京電力に福島復興に向けた責任を貫徹させていく観点から、まちづくり会社等による主体的な取組について、東京電力が最大限の人的協力を行うよう指導を行う。

4. 事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を拡充する

 避難指示の解除に併せて、住民や事業者の方々の故郷への帰還と、事業・生業の再建を進めることは、喫緊の課題である。この観点から、平成 27 年6月に改訂した指針では、平成 27 年度・28 年度の2 年間において、特に集中的に自立支援施策を展開することとした。 その一環として、平成 27 年8月に、被災事業者の方々の置かれている状況に寄り添った支援策を実施する新たな主体として、福島相双復興官民合同チームを設立した。特に商工業については、同チームが、事業者の方々への個別訪問を通じて把握した多様なニーズを踏まえて政府が支援策の強化・改善を進め、それを通じた事業・生業の再建が進展しつつある。

 他方、まち機能や商圏の回復の遅れへの対応、特に厳しい環境に置かれた帰還困難区域の事業者の方々に対するサポート、農林水産業における営農再開の促進や根強い風評被害の払拭等といった多くの課題が残っている状況を踏まえ、支援策をより一層拡充し、事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を、より一層加速化していく。

 特に、農林水産業については、事故から5年9ヶ月が経った現在においても、再開に至れていない営農者の方々も多いことに加え、 福島県産の農林水産品に対する風評被害が残っている。こうした状況を念頭に、国は、農林水産業の再生と販路の回復を一体的に進めるべく、県や農業関係者等との協力の下、営農再開や風評被害の払拭に向けた対策の抜本的な強化を行う。

 (1) 福島相双復興官民合同チームの体制強化

 福島相双復興官民合同チームは、これまでに 4,400を超える事業者を個別に訪問した。政府が、訪問を通じて収集した声をもとに新たな支援策を措置し、福島相双復興官民合同チームが事業者の方々にきめ細かな活用支援を行うことで、事業・生業の再建が徐々に進みつつある。他方、地域によって復興の状況は異なるため、福島相双復興官民合同チームは、今後とも、個々の実情を踏まえたきめ細やかな対応を粘り強く続けていく必要がある。

 このため、福島相双復興官民合同チームが継続的・持続的に活動できるよう、その中核である福島相双復興推進機構を福島特措法に位置付け、国の職員の同機構への派遣を可能とするなど、国・県・民間が一体となって人員等を手当てすることで、組織の一元 化を図るとともに、平成 29 年度以降においても引き続き腰を据えた支援を行う体制を整える。また、引き続き被災事業者の自立支援を業務の中心としつつ、まち機能の回復・活性化等のより長期的な課題についても支援を行えるよう、機能の強化・充実を図る。

 農業分野については、速やかに営農再開ができるように、福島相双復興官民合同チーム営農再開グループが市町村等を 600 回以上訪問し、集落座談会における営農再開支援策の説明、地域農業の将来像の策定、将来像の実現に向けた農業者の取組を支援している。

 さらに、今年7月から、福島県・市町村・農林水産省が連携して、これまでに被災 12 市町村の 500名を超える認定農業者を個別 に訪問し、要望調査や支援策の説明を行う取組を行っている。

 今後、営農再開を加速化するため、農業者への個別訪問活動を行う体制の強化を図る。

 (2) 事業・生業の再建・自立、生活の再構築のための取組の充実

 国は、被災 12 市町村への新たな企業・人材の呼び込みや、事業再開や新規立地の動きとまち機能の回復・活性化との連携といった視点を踏まえつつ、事業・生業の再建・自立や生活の再構築に向けた支援を強化する。

 ① 事業・生業の再建・自立のための支援策の強化

 避難指示解除に向けた動きが進む中、引き続き、設備投資への支援等を通じて、事業者の帰還・事業再開や自立を支援していく。また、被災地域において人手不足が深刻化している状況を踏まえ、引き続き国と地方自治体が連携して、人材確保に向けた対策を実 施していく。さらに、帰還困難区域の事業者の方々に対しては、事業再開の後押しに向けて、直ちに故郷に帰還して事業を再開することが難しいという御事情に配慮した適切な措置を講じる。なお、事業再開に至らなかった方々等に対して、福島相双復興官民 合同チームによる個別訪問時に地域での交流機会の紹介やまちづくりに資する仕事の紹介を行うなど、帰還後のコミュニティ再生や新しい生きがい創出に向けて、引き続き、地元のニーズに応じたきめ細かな対策を行う。

 ② 企業・人材の呼び込み等を通じた、まち機能の回復

 住民の方々が帰還できる環境を早急に整えるべく、働く場所、 買い物をする場所といった、まちとして備えるべき機能の創出に向けて、新規創業者や被災 12 市町村に新たに入ってくる事業者の呼び込みを後押しし、事業展開を支援する。

 また、企業の事業再開や新規立地等に関して福島相双復興官民合同チームが蓄積してきた知見も活かしつつ、各市町村に対して、まちづくり計画の実現に向けた支援、まちづくり会社等の創設及び運営等への支援や、事業者の方々に支援策の活用を促すための支援などを行う。

 ③ 商工会・商工会議所等への支援

 国は、引き続き、被災 12 市町村の商工会・商工会議所等の活動に対する支援を行うとともに、福島相双復興官民合同チームと商工会・商工会議所等の連携強化を通じた支援策の活用促進に向けて取り組んでいく。

 ④ 農林水産業再生のための支援策

 国は、福島県の営農再開に向けて、引き続き、福島相双復興官民合同チームの営農再開グループに参加して、市町村における農業者の意向把握や地域農業の将来像の策定を支援する。また、その将来像の実現に向けて、除染の進捗状況に合わせた農業関連インフラの復旧、除染後の農地の保全管理、鳥獣害防止対策、放射性物質の吸収抑制対策、ため池等の放射性物質対策、農業用機械・施設のリース導入、新たな農業への転換等を支援する。

 避難指示の解除や帰還困難区域における特定復興拠点の整備等の状況も踏まえながら、今年7月から実施してきた認定農業者への個別訪問活動のフォローアップと個別訪問する農業者の対象拡大で丁寧に課題を把握し、28 年度補正予算で措置した個別農業者 の農業用機械・施設、家畜の導入等に対する支援、農地の紹介等により支援の充実に努める。また、森林・林業の再生に向けて、「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組」 に基づき、国は、 県・市町村と連携しつつ、住民の理解を得ながら、生活環境の安全・安心の確保、里山の再生、奥山等の林業の再生に向けた取組や、調査研究等の将来に向けた取組、情報発信等の取組を着実に進めていく。特に、里山再生モでル事業については、地域の要望を踏まえて、里山再生を進めるための取組を総合的に推進し、その成果を的確な対策の実施に反映する。なお、同事業について、将来的には、特定復興拠点等整備の進捗等に応じて帰還困難区域で実施することも視野に入れて検討を進めていく。さらに、木材の需要拡大と安定供給の確保に取り組む。

 漁業の本格的な操業再開に向けて、簡便・迅速な放射線量検査体制の確立等の支援を行う。また、水産加工品の新規開発や輸出 促進等に向けた取組を加速する。

 7 「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組」(平成28年3月9日 復興庁・農林水 産省・環境省)

 (3) 風評被害対策等

 「風評対策強化指針」8に基づく取組について、各種国際会議等の場を活用するなど、風評対策を強力に推進するとともに、より効果的な対策となるよう不断の見直しを行う。その際、国内外の幅広い者や子どもたちに向けて、廃炉・汚染水対策を含めた福島の現状や放射線リスクに関する正しい情報提供を積極的に展開するとともに、学校における放射線に関する教育の支援を進める。また、農林水産業における放射性物質対策の支援や諸外国・地域に対する国による働きかけなど、国外における輸入規制の緩和・撤廃に向けた取組を、関係省庁が連携して推進する。

 8 「風評対策強化指針」(平成26年6月23日復興庁)

 特に、農林水産物等については、生産から流通・販売に至るまで風評の払拭に必要な支援をすることにより、安全性についての消費者の正しい理解を促進し、ブランド力を回復する。

 具体的には、生産段階では、生産者の第三者認証GAP等の導入、有機農産物等の環境にやさしい農産物の生産拡大、水産エコラベルの取得、水産物の高鮮度化による付加価値向上などに必要な取組を支援する。また、農林水産物等の放射性物質の検査、米の全量全袋検査などの産地の自主検査と結果の公表を支援する。

 流通・販売段階では、販路開拓等に必要なコンサルティングによる指導を支援する。また、量販店の販売コーナーの設置、ポイントキャンペーンの実施、商談会の開催等を支援する。これらに加えて、流通段階の風評被害の実態と要因の調査と、その調査結果に基づく適切な措置を行うこととし、その旨を法的に位置付ける。また、国が県、農業関係団体等と、風評被害の実態や施策の効果を継続的に検証する体制を設ける。

 (4) 農林業賠償等

 農林業の営業損害・風評被害への賠償等については、本年9月の東京電力による素案の提示以降、地元農林業関係者が見直しの要望を行うとともに、本年11月には、与党での検討を経て、自由民主党東日本大震災復興加速化本部長からも、国及び東京電力に対して見直しの申入れ9が行われている。以上のような状況を踏まえ、損害がある限り賠償するという方針の下、農林業の風評被害が当面は継続する可能性が高いとの認識に基づき、引き続き適切な賠償を行うよう、国は東京電力に対して指導を行う。また、国による営農再開支援や風評払拭に向けた取組に対して、東京電力が適切に協力するよう指導を行う。

 9 「福島第一原子力発電所事故からの農林業再生に係る申入れ」(平成28年11月30日自由 民主党東日本大震災復興加速化本部長)

5. 廃炉・汚染水対策に万全を期す

 福島第一原発の廃炉・汚染水対策の安全かつ着実な実施は、福島再生の大前提である。対策に一部の遅れや課題はあるものの、全体としては進捗してきているが、廃炉に向けた対応をより安定的で持続的に進める必要がある。

このため、引き続き、国は前面に立って、現場状況や研究開発成果等を踏まえ、中長期ロードマップ10に継続的な検証を加えつつ、必要な対応を安全かつ着実に進める。

10 「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成27年6月12日改訂 廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議)

 (1) 予防的・重層的な汚染水対策をはじめとするリスク低減

 福島第一原発の廃止措置等に向けては、安全確保を大前提に、長期的にそれぞれのリスクが確実に下がるよう、優先順位を付けて、対応していく。

 汚染水対策については、サブドレンの稼働開始や海側遮水壁の閉合完了、凍土壁の海側における凍結完了など、取組には一定の進展がみられる。引き続き、中長期ロードマップに基づき、予防的・重層的な対策に取り組んでいく。

 特に、タンクに貯蔵している高性能多核種除去設備等による処理水の取扱いについては、安全性、技術の成立性、風評被害などの社会的な観点等も含めた総合的な検討を進める。

 (2) 中長期的な廃炉を支える環境整備・体制強化

 国は、廃炉に向けて、工程を適切に管理し、技術的難易度が高く、国が前面に立つことが必要な研究開発を支援する。また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構による楢葉遠隔技術開発センター、廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟及び大熊分析・研究センターの整備・運営や、廃炉を担う人材の育成を進める。

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「支援機構」)を中心に、国内外の叡智を結集し、実効性のある方針及び工程に関する技術的検討を加速化し、燃料デブリ取り出しに向けて、工法の実現性の評価及び戦略的な提案を行うとともに、今後必要となる研究開発が速やかに着手されるよう、ニーズ・シーズのマッチング等を積極的に実施する。

 また、炉の設置者として、廃炉の実施責任を有する東京電力は、今後とも、これまでに現場での作業等を通じて蓄えてきた知見を活かしつつ、その責任をしっかりと果たし続けていく必要がある。同社に対しては、人為的なミスによる重要機能の停止を防止するなど、プラントの安全確保に万全を期すよう引き続き指導していくとともに、支援機構における技術的検討の内容や国内外の研究開発成果を速やかに現場作業へ適用し、廃炉を着実に進められるよう、エンジニアリング能力の高い人材の確保や、プロジェクトマネジメント機能の強化に向けて、現場を含む運営体制全体の見直しを求めていく。

 こうした役割分担を踏まえつつ、関係する各主体の相互の連携を強化していく。

 廃炉作業や汚染水対策を安全かつ速やかに進める観点から、また、国際原子力機関(IAEA)のIRRS報告書等で明らかになった課題を解決するため、実効が上がる検査制度見直しを行い、それを実践できる原子力規制庁の体制を充実・強化させることが急務である。具体的には、事業者の安全確保への取組実績を把握し、適正な評価を行って、取組を強化すべき領域に集中的な監視ができる新しい制度を導入する。また、新規・中途採用等人材確保の機会拡大、より実践的な研修プログラムの整備や海外研修の実施といった人材育成施策の充実、適切な処遇等による有為な人材の確保等により、機動的で柔軟な対応を可能とし、実効的・効率的な規制組織体制とする。

 (3) 徹底した情報公開を通じた社会の理解促進及び信頼関係強化

 地元住民の方々はもとより、国内外の関係者に対し、廃炉・汚染水対策の進捗状況や放射線でータ等について、引き続き、迅速かつ分かりやすい情報公開を図るとともに、双方向のコミュニケーションを強化し、信頼関係の強化につなげる。

6. 国と東京電力がそれぞれの担うべき役割を果たす ~賠償、除染、廃炉等に関する中長期的かつ安定的な対応~

 被災者・被災企業への賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉等については、先の「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(平成 25 年 12 月閣議決定)において、復興を円滑に進めていく観点から、 国と東京電力の役割分担を明確化し、現在まで、着実に進められてきている。今般、被災者・被災企業への賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉等の事故に伴う費用の増加が見込まれるが、国と東京電力がそれぞれの担うべき役割を引き続き果たしていくことが必要である。

 これにより、国民負担を最大限抑制しつつ、福島の再生と電力の安定供給を両立させる。

 (1) 基本的枠組み

 先の閣議決定において整理した方針を、基本的に維持する。

すなわち、被災者・被災企業への賠償は、引き続き、東京電力の責任において適切に行。また、除染特措法11に基づく除染・中間貯蔵施設事業の費用は、復興予算として計上した上で、事業実施後に、環境省等から東京電力に求償する12。

11 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成 23 年法律第 110 号)。以下同じ。

12 現時点において、これまでの実績や環境省の試算等によれば、交付国債の発行により対応すべき費用としては、被災者・被災企業への賠償費用は約 7.9 兆円程度、除染特措法に基づく除染(汚染廃棄物処理を含む。以下同じ。)の費用は約 4.0 兆円程度(原子力損害賠償補償契約に関する法律(昭和36年法律第 148号)に基づき東京電力に支払われた補償金約 0.2 兆円による充当分を除いた額)、中間貯蔵施設(建設・管理運営等)の費用は約1.6兆円程度と見込まれる。これらを踏まえ、平成 29 年度予算において、支援機構に交付する交付国債の発行限度額(現行9兆円)を 13.5 兆円に引き上げる。 なお、上記の費用見込みは、上記の交付国債発行限度額の算定のためのものであり、被災者への賠償・除染・中間貯蔵施設事業の進捗等を踏まえ、適時に見直しを行う。

東京電力において必要となる資金繰りは、引き続き、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下「機構法」)に基づき、支援機構への交付国債の交付・償還により支援することとし、平成29年度 予算において、支援機構に交付する交付国債の発行限度額を引き上げる。

 廃炉・汚染水対策については、原則として、東京電力グループ全体で総力を挙げて責任を果たしていくことが必要である。そのため、東京電力によるグループ全体での総力を挙げた合理化等で必要な資金を確保することとする。国は、必要な制度整備等を行うとともに、技術的難易度が高く、国が前面に立つ必要がある研究開発については、引き続き必要な支援を行う。

 (2) 交付国債の償還費用の回収

 交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資として、支援機構の利益の国庫納付により回収される。

 支援機構が保有する東京電力株式を中長期的に、東京電力の経営状況、市場動向等を総合的に勘案しつつ、売却し、それにより生じる利益の国庫納付により、除染費用相当分の回収を図る。売却益に余剰が生じた場合は、中間貯蔵施設費用相当分の回収に用いる。不足が生じた場合は、東京電力等が、除染費用の負担によって電力の安定供給に支障が生じることがないよう、負担金の円滑な返済の在り方について検討する。

中間貯蔵施設費用相当分については、支援機構に対し、機構法第68条に基づく資金交付を行う13。このための財源は、エネルギー施策の中で追加的・安定的に確保し、復興財源や一般会計の財政収支には影響を与えない。

13 平成29年度のエネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の歳出予算には470億円程度を計上し、その財源は、エネルギー関係の歳入歳出予算全体を編成する中で捻出する。交付期間は事業期間(30年以内)終了後5年以内までとし、以後の年度においても同様の対応を行い、毎年度必要額を計上する。

 (3) 東京電力等による取組について

 東京電力は、過去と決別し、二度と失敗を繰り返さないという強固な決意の下、福島への責任を貫徹するため、必要な資金を捻出できる企業へと生まれ変わることが求められている。

 東京電力は、これまでも他社との事業統合及びコスト削減に取り組んできているが、被災者・被災企業への賠償や除染・中間貯蔵施設事業、廃炉など事故に伴う資金需要が増大している一方で、構造的に生じている需要減少の中、電力自由化に伴う活発な競争に直面していることを鑑みると、東京電力の競争力確保は未だ途上である。

 このため、東京電力は、卸電力市場への電源供出の拡大やより効率的な事業運営を可能とする電力販売契約(PPA)の見直しなどの電力システム改革の貫徹に向けた取組の趣旨を踏まえた取組を、引き続き積極的に推進するとともに、更なる抜本的な体制の見直し、あらゆる分野における他電力を超えた更なる合理化、原子力や送配電事業をはじめとした様々な事業における他社との再編・統合など、従来の発想にはない非連続な経営改革の断行が求められる。

 これらの取組を成し遂げることにより、グループ内での最適な役割分担のもと、廃炉のための資金、賠償総額の増加に見合った水準の資金等を確保するとともに、株式価値の増大も通じて福島の復興への貢献と国民負担の抑制を実現する。

 また、東京電力は、これまでにも、国等による復興推進に向けた取組に呼応して、帰還に向けた家屋清掃や除染・中間貯蔵への協力等の取組を行ってきたところであるが、今後とも、事故の当事者としての責任に鑑み、復興のステージに応じた貢献を続けていくことが求められる。同社に対しては、従来の取組をより充実させるとともに、復興拠点等の整備やまちづくり会社による取組への人的貢献、福島相双復興官民合同チームによる営農再開や生きがい創出への支援等の取組への人的・資金的貢献を行うよう求めていく。

 こうした東京電力による非連続な経営改革の取組については、東京電力自身が適切なベンチマークを活用して、その進捗状況を確認することとする。支援機構は政府と協議の上で経営改革の進捗について定期的に評価を行い、その結果を踏まえ、支援機構が保有する東京電力株式の議決権や売却の在り方等についても検討を加える。

 また、政府による取組の前提となる東京電力の改革は、前例のない取組であり、金融機関の一段の関与・協力が不可欠と考えられる。これにより、東京電力の改革が確実に実行に移されることが担保され、政府による取組とあいまって福島の再生を加速することにつながるものである。

 (4) 国の行う新たな環境整備

 国は、今後電力自由化が進展していくなかにあっても、被災者・被災企業への賠償、インフラ整備・除染等の帰還に向けた環境整備、廃炉・汚染水対策等について、中長期的かつ安定的に実施していくことができるよう、東京電力の改革を前提としつつ、以下の環境を整備する。

 被災者・被災企業への賠償については、電力自由化が進展する環境下における受益者間の公平性や競争中立性の確保を図りつつ、国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備え 14についてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。

廃炉・汚染水対策については、原則として、東京電力グループ全体で総力を挙げて責任を果たしていくことが必要である。廃炉の実施責任を有する東京電力が廃炉を確実に実施するため、必要な資金の捻出に支障を来たすことのないよう、規制料金下にある

 14  福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えは、送配電事業者等にとって外生的に生ずるものであり、その制度上の取扱については適切に整理する。

 また、回収する金額の規模は、現在の一般負担金の水準をベースに、1kWあたりの単価を算定した上で、これを前提に、2010年度までの我が国の原子力発電所の毎年度の設備容量等を用いて算出した金額から、回収が始まる2020年前の2019年度末時点までに納付した又は納付することになると見込まれる一般負担金の合計額を控除した約 2.4兆円とし、これを上限とする。

 資金の回収に当たっては、適正な託送料金水準を維持していく観点から、年間約 600億円程度を、2020年度以降、40年程度にわたって回収していくものとする。

 送配電事業における合理化分についても確実に廃炉に要する資金に充てることを可能とすることとし、託送収支の事後評価における特例的な取扱い等を含んだ制度整備を行う。あわせて、支援機構に、廃炉に係る資金を管理する積立金制度を創設する。支援機 構が、東京電力による廃炉の実施の管理・監督を行う主体として、

 ・廃炉に係る資金についての適切な管理

 ・適切な廃炉の実施体制の管理

 ・積立金制度に基づく着実な作業管理等

を行うことにより、今後、長期にわたる巨額の資金需要に対応できる体制を整備し、廃炉の実施をより確実なものとする。

おわりに

 本基本指針では、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速していくため、これまでの取組の充実・深化を行った。また、帰還困難区域における復興事業について、施策を具体化するとともに、廃炉等に要する費用見通しの変化等を踏まえ、国と東京電力の役割分担を改めて明確化した。

 本基本指針に基づき、国は、被災地の実態を十分に踏まえ、地元としっかりと対話しつつ、施策の具体化を進めていく。そして、いまだ避難生活が継続している住民の方々の生活の再建、被災者の方々の事業・生業の再建、地元自治体の自立・再生の道筋をこれまで以上に明確にしていく。