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#049  高浜原発3、4号機運転差止

仮処分保全異議申立事件大津地裁決定(全)

2016.7.12 

◉ 報道記事

 

 【朝日新聞デジタル】2016.7.13

 高浜原発の運転差し止め維持 大津地裁、関電異議認めず

 

  関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた大津地裁の仮処分決定について、同地裁(山本善彦裁判長)は12日、取り消しを求めた関電の保全異議を退けた。関電側は大阪高裁へ保全抗告する方針だが、差し止めの効力は維持され、2基を動かせない状態が続く。

 異議審は、差し止め決定を出した山本裁判長ら3人の裁判官が担当。山本裁判長は関電側が申し立てた執行停止も6月却下した。

 3月の差し止め決定は、関電が2基の安全性の証明を尽くしておらず、地震・津波対策や避難計画にも疑問が残るなどと指摘。滋賀県の住民29人が訴えた人格権侵害の恐れを認め、稼働中の原発を停止させる初の司法判断となった。

 1月に再稼働した3号機は仮処分決定を受け、運転を停止。4号機は2月に再稼働したが、直後のトラブルで緊急停止したままだ。

 関電側は仮処分決定を「実質的にゼロリスクを求めるに等しい」と批判し、異議を申し立てた。異議審では、運転停止の経済的損失が1日約3億円に上り、電気料金値下げの見送りで市民生活や経済活動に大きな影響が出ていると主張。「原審で安全性の立証は尽くした」との見解は変えず、審理の早期終結を主張した。

 住民側は「安全対策は不十分で、避難計画も実効的でない」などと改めて主張していた。

 

 【福井新聞】2016.7.12

 高浜仮処分、審理の舞台は高裁へ 関電、大阪高裁に抗告

 

 

 関西電力高浜原発3・4号機(福井県高浜町)の運転差し止め仮処分を取り消すよう求めた関電の異議について、大津地裁(山本善彦裁判長)は12日、申し立てを却下した。関電は決定を不服として抗告するとみられ、仮処分を巡る審理の舞台は大阪高裁へ移る。

 関電は、司法が運転を認める判断を示さない限り、高浜原発3・4号機を動かせないため抗告する方針。

 抗告審で関電の申し立てが認められれば、仮処分命令が取り消され2基の運転が可能になる。

 抗告審で申し立てが却下された場合は、本案訴訟で運転差止請求が棄却されるなどしない限り、仮処分の効力は続き、2基は運転できない状態が続<。

 大津地裁で行われた12日の異議審と3月、6月の決定はいずれも山本善彦裁判長が担当し、高浜原発の運転を止めた。抗告審で大阪高裁がどのような決定を出すか注目される。

◉ 大津地裁決定(全文) 2016.7.12

 

平成28年(モ)第12号保全異議事件

基本事件 大津地方裁判所平成27年(ヨ)第6号原発再稼働禁止仮処分申立事件

  決   定

  当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

  主   文

 1 大津地方裁判所平成27年(ヨ)第6号原発再稼働禁止仮処分申立事件について、同裁判所が平成28年3月9日にした仮処分決定を認可する。

 2 保全異議手続費用は、債務者の負担とする。

  理   由

第1 異議申立ての趣旨

 1 大津地方裁判所平成27年(ヨ)第6号原発再稼働禁止仮処分申立事伴(以下「原事件」といい、原事件に係る債権者らの申立てを「本件申立て」という。)について、同裁判所が平成28年3月9日にした仮処分決定(以下「原決定」という。}を取り消す。

 2 本件申立てを却下する。

 3 申立費用は、原事件及び異議申立てを通じ、債権者らの負担とする。

第2 事案の概要

 1 事実の要旨

 (1) 本件は、滋賀県内に居住する債権者らが、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において高浜発電所3号機及び同4号機(以下「本件各原発」という。)を設置している債務者に対し、本件各原発が耐震性能に欠け、津波による電源喪失等を原因として周囲に放射性物質汚染を惹起する危険性を有する旨主張して、人格権に基づく妨害予防請求権に基づき、本件各原発を仮に運転してはならないとの仮処分を申し立てた事案である。

 (2) 大津地方裁判所は、平成28年3月9日、本件申立てを認容する原決定をした。これについて、債務者が保全異議の申立てをし(以下「異議申立て」という。)、前記第1記載の裁判を求めた。

 2 前提事実

  前提事実は、原決定第2の2(原決定1頁20行目から15頁22行目まで)のとおりであるから、これを引用する(なお、略語については、本決定で示したものを除き、原決定の例による。)。ただし、決定13頁19行目から20行目にかけての「この新規制基準」を「この基準」に改め、原決定15頁16行目末尾の次に続けて「また、異議申立て後、平成28年5月10日、審尋期日が実施され、同年6月10日、審理が終結された。」を加える。

 3 争点

  争点は、原決定第2の3(原決定15頁23行目から16頁4行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

 4 争点に関する当事者双方の主張

  争点に関する当事者双方の主張は、次の(1)のとおり異議申立てに係る主張を補充し、(2)のとおり補正するほかは、原決定第2の4ないし10(原決定16頁5行目から41頁22行目まで)のとおりであるから。これを引用する。

 (1) 異議申立てに係る主張の補充

  ア 債権者らの圭張

  (ア) 債権者らの主張は、平成28年5月9日付け準備書面(14)、同日付け準備書面(15)、同年6月10日付け準備書面16及び同日付け準備書面17記載のとおりであるから、これらを引用する。なお、その骨子は、次の(イ)のとおりである。

  (イ)a 新規制基準の合理性を審査するために、福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力規制行政の変化について債務者に主張及び疎明を求めた原決定の考え方は、従来の裁判例における支配的な考え方に則った上でさらに具体化したものであり、合理的な判断枠組みである。

    b 具体的にみても、例えば。債務者は。本件各原発周辺については、地表の調査によって震源断層が構造を全部把握できるわけもなく、地表状況だけでは判断できないと考えるべきであるから、このような債務者の主張は採用されるぺきではないし、債務者が設定した条件が保守的であるともいえない。津波に関しても、若狭湾地盤のブロック化は考慮に入れられていないし、若狭湾の特性である局所的に津波が襲来する可能性についての検討も不十分である。過酷事故下での電源確保を可搬的設備によることは、人による対応を前提とすることとなり、重大な欠陥がある。過酷事故下の避難計画は不十分であり、例えば、熊本地震の経験を踏まえて、本件各原発の周辺自治体である滋賀県知事は、余震が生じる場合に過酷事故後に屋内(建物内)に人が避難し続けることができるのか、疑問を投げかけている状況にある。

  イ 債務者の主張

  (ア) 債務者の主張は、平成28年3月14日付け保全異議申立書、平成28年3月28日付け主張書面(14)及び平成28年6月10日付け主張書面(15)記載のとおりであるから、これらを引用する。なお、その骨子は次の

(イ)のとおりである。

  (イ)a 本件において判断されるべきは、本件各原発の安全性それ自体である。債務者は、新規制基準が合理的であること、及びそのような合理的な基準に適合していることを専らの根拠として、本件各原発が安全であると主張しているわけではなく、むしろ安全性に直結する具体的な主張及び疎明を行うことを通じて、本件各原発が安全であると主張しているのである。

   b 本件各原発に具体的にどのような欠陥があり、その欠陥に起因して。どのような機序で放射性物質の異常放出等の事故が発生し。これによって債権者らのそれぞれの人格権を侵害するに至るのかが明らかにされない限り、具体的危険性があるとはいえないはずである。原決定は、本件各原発の安全性そのものに関する議論を離れて、新規制基準の制定過程における重要な議論。議論を踏まえた改善点、ひいては福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力規制行政の変化についてまで、その道筋や考え方を含めて債務者に主張及び疎明を求め、これが尽くされなければ。債務者の判断に不合理な点があることが推認されるとしている。本件申立てにおいて審理判断すべき事項は本件各原発の安全性それ自体であることを踏まえると、なぜこのような主張及び疎明までが要求されるのか不明であり、新規制基準を制定した規制当局でもない債務者がその制定過程等について知悉しているわけではないことをも踏まえると、原決定の判断枠組みは著しく合理性を欠いている。

   c 債務者は。各種の設備を擁して本件各原発の安全性の確保に努めているにもかかわらず、原決定は、債務者の主張及ぴ疎明を理解せず、又は理由なく退けて、債務者の疎明がないとしており、失当である。例えば、原決定は、債務者が本件各原発に設置した非常用電源に関する対応について、これらの設備がいずれも新規制基準以降になって設置されたのか不明であると説示するが。設備が現に存在する以上、設備の設置時期が本件各原発の安全性の判断との関係でいかなる意味を持つのか判然としない。

   d 原決定は、債務者の行った断層の調査が十分でないかのように説示する。しかしながら、本件発電所敷地周辺は、活断層が繰り返し活動していることが確認されており、震源断層が地表地震断層として地表に現れている地域である。すなわち、1回の地震では、地中の震源断層と同じ長さの地表地震断層が出現するとは限らないが、活断層は繰り返し地震を起こすことで、長い年月の間に地表に現れたこのような地形を調査することで活断層を把禰できると考えられている。例えば、海域における活断層について、債務者は、本件各原発から概ね半怪100km以内の海域全域で、活断層の有無、位置、長さ等を把握するとともに、半径30km以内の海域全域で、変動地形学的調査及び海上音波探査により、活断層や変動地形が存在する可能性のある地域を抽出し、これらの地域で多様な手法を組み合わせて詳細な調査を実施し、網羅的に地質・地質構造を把握し、本件各原発の基準地震動において考慮すべき活断層については、漏れなく知っており、これらの調査によれば、FO-A〜FO-B断層と熊川断層が連動する地質構造はみられないが、連動するものと想定して評価している。また、海域にあるFO-B断層の北西端についても、付近海域で海上音波探査を行い、後期更新世以降に堆積したと考えられる地層に変位・変形がないことを確認して、端部を評価している。にもかかわらず、原決定は。既知の活断層の把握が不足しているかのごとく説示しており、不当である。

   e 結局、原決定は、科学的、専門技術的知見に基づくことなく、債権者らの主張内容を断片的に拾い上げ、独自の観点から抽象的かつ主観的に本件各原発の安全性に対する危惧・不安を述べ、伊方原発訴訟最高裁判決の趣旨に明らかに違背する。

 (2) 原決定の補正

  ア 原決定31頁末行の「応答スペクトルを」の次に「一部周期で」を加える。

  イ 原決定32頁6行目から7行目にかけての「可能性がある地震」の次に「及び事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し。地表付近に一部の痕跡が確認された地震」を加える。

第3 当裁判所の判断

 1 当歎判所も、債務者は、本件各原発を運転してはならないものと判断する。

   その理由は、次のとおり補正するほかは、原決定第3(原決定41頁23行目から53頁24行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

 2 原決定の補正

 (1) 原決定43頁19行目末尾の次に、行を改めて次のとおり加える。

   「債務者は、新規制基準が合理的であること、及びそのような合理的な基準に適合していることを専らの根拠として、本件各原発が安全であると主張しているわけではなく、そもそも、本件各原発そのものの安全性に直結する具体的な主張及び疎明を行うことを通じて、本件各原発が安全であると主張する(本決定第2の4(1)イ(イ)a。しかしながら、このような債務者の主張は、原子力規制委員会が設置された経緯及び原子力規制委員会設置法1条所定の趣旨(引用に係る原決定前提事実(6)ウ)に照らし、採用できない。新規制基準は、福島第一原子力発電所の重大な事故に起因して。確立された国際的な基準を踏まえて施策を策定するとの同条の趣旨に基づいて制定された規制であり。この規制を利用せずして、原子力発電所の設置者ないし運転者が直接安全性を主張及び疎明できるとする根拠は、見当たらず、新規制基準が合理的であること及びこの基準に適合していることについても、主張及び疎明すべきである。債務者は、新規制基準によって規制を受ける事業者として新規制基準の具体的内容について知悉し、実際、細部の争点においては本件各原発の運用状況が新規制基準に合致していることを主張しているから、新規制基準を無視するものではないのであろうが、債務者は、前記第2の4(1)イ(イ)aの主張を異議申立ての冒頭に置いており(平成28年3月14日付け保全異議申立書5頁)、債務者のこの主張は債務者にとって大きな意味を持つ主張であると解されるところ、その内容は、上記のとおり妥当ではない。」

 (2) 原決定45頁17行目末尾の次に、行を改めて次のとおり加える。

   「また、債務者は、本件各原発に具体的にどのよぅな欠陥があり、その欠陥に起因して、どのような機序で放射性物貿の異常放出等の事故が発生し、これによって債権者らのそれぞれの人格権を侵害するに至るのかが明らかにされない限り、具体的危険性があるとはいえないはずであるとも主張するく本決定第2の4(1)イ(イ)b)。しかしながら、原子力規制委員会設置法1条は、我が国の原子力行政の根本的な視点として、原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなけれぱならないという認識に立つことを明らかにしていること、事業者である債務者において安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなければ、本件各原発の安全性に欠ける点のあることが推認されるといえること、現実に起こってしまった福島第一原子力発電所事故とそれによる甚大な彼害を目の当たりにした国民にとっての社会通念は、原発の安全性の欠如から人格権の侵害は直ちに推認されるものとなっているといえることからすると、この点の債務者の主張も採用することはできない。

 そして、新規制基準がこのよぅな経緯において制定されているからといって、新規制基準の内容に立ち入ることなく直ちに、新規制基準そのものが社会において許容され受け入れるべき危険の限度を画するものとなっているとすることはできない。もちろん、リスクゼロを求めるものではないが、先に述べたとおり(引用に係る原決定第3の2(1))、災害が起こる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、本件各原発の立地を含めた安全性のみならず、対策の見落としにより過酷事故が生じる可無性を前提として、致命的な状態を避け得るだけの対策を講ずることが必要である。本件での債務者の主張及び疎明の程度では、新規則基準がこのよぅな対策として十分であるといえるものではない。」

 (3) 原決定46頁23行目の「整備されたとある。」の次に、「債務者は、これらの設備が新規制基準以降になって放置されたものであるかどうかは安全性の判断との関係でいかなる意味を持つのか判然としないと主張する(本決定第2の4(1)イ(イ)c)。しかしながら、債務者が、福島第一原子力発電所事故の原因が電源喪失であると主張しつつ、電源の改良点について主張する意味について把握していないのであれば、新規制基準の趣旨を正確に受け止めていないといえる。」を加える。

 (4) 原決定49頁11行目から12行目にかけての「安全余裕をとったといえるものではない。』の次に「この点、債務者は、海域においても、網羅的に地質・地質構造を把握しており、本件各原発の基準地震動において考盧すべき活断層については、漏れなく知っており、FO-A〜FO-B断層と熊川断層が連動する地質構造がみられないにもかかわらず、連動するものと想定した旨主張し(本決定第2の4(1)イ(イ)d)、疎明資料について検討を加えている。しかしなから、先に述べたように、FO-A〜FO-B断層と熊川断層が連動する可能性を否定できないのであれば、連動した場合の計算をすることは。不必要な計算ではなく、当然に考慮すべき計算なのであるから、余裕に当たらないといえる。Jを加える。

 (5) 原決定49頁17行目末尾の次に、「なお、債務者は、加えて、FO-B断層の北西端について海上音波探査結果により確定した旨主張し(本決定第2の4(1)イ(イ)d)、疎明資料について検討を加えている。しかしながら、仮に債務者主張の地点で既知の断層が終了しているとしても、これも、既知の断層の終了地点が明らかになるとはいえ、余裕のある想定であるとまではいえない。また債務者は、本件各原発の敷地周辺地域は、活断層が操り返し活動して明瞭な活断層が数多く分布している地域であるから、地表地震断層を調査することにより震源断層を把握することができるともいうが(同)、その科学的根拠は明らかでなく、また活断層が繰り返し活動することにより地表地震断層として現れてくるのであるとすれば、なお地表にまで達していない断層も存在すると考えざるを得ず、したがって、地表地震断層を調査するだけでは震源断層を把握することはできないといわざるを得ない。」を加える。

 (6) 原決定53頁19行目末尾の次に、行を改めて次のとおり加える。

   「債務者は、本件各原発に具体的現実的危険性はなく、債権看らの指摘等は危惧感にすぎないものである旨主張する(本決定第2の4(1)イ(イ)e)。しかしながら、既に述ぺたとおり、福島第一原子力発電所事故の前にも現実に存在した危険について、これを運転していた東京電力は覚知して対応することができなかった(引用に係る原決定第3の2)。加えて、福島第一原子力発電所事故の原因に関する疎明資料は不足しており、現状において原因究明が完遂したと一応にしても認めることはできず、そうすると、新規制基準にしたがって設置変更許可を受けたことそれ自体によって安全性が確保されたとみることはできない。この点に鑑みれば、福島第一原子力発電所事故の原因究明が道半ばの状況でありつつも、判明している限りでの事実に基づき、具体的現実的危険を網羅的に検討したものであると考えられる新規制基準に依拠し、その制定経緯等に照らし、少なくとも、本件各原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、それにどう応えたのかの主張及び疎明が尽くされることが、安全性確保のための第一歩であると解すべきであるから、この点の債務者の主張を採用することはできない。」

第4 結論

  よって、本件申立てには理由があるから、原決定を認可することとして、主文のとおり決定する。

  平成28年7月12日

 

 

     大津地方裁判所民事郎

                     裁判長裁判官 山本 善彦

                        裁判官 小川紀代子

                        裁判官 岡田 総司