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Historical Archives

#046  高浜原発3、4号機

再稼働禁止仮処分執行停止申立事件

大津地裁決定文・関連記事等 

2016.6.19

◉ 大津地裁決定文(全) 

2016.6.17言い渡し

 

 平成28年(モ)第13号仮処分執行停止申立事件(基本事件平成28年(モ)第12号保全異議事件.平成27年(ヨ)第6号

原発再稼働禁止仮処分申立事件)

   決   定

当事者の表示 別紙当事者日録記載のとおり

   主   文

1 本件申立てを却下する。

2 申立費用は,執行停止申立人の負担とする。

   理   由

1 申立て

  大津地方裁判所平成27年(ヨ)第6号原発再稼働禁止仮処分申立事件(以下「原事件」といい,原事件に係る執行停止相手方(債権者)らの申立てを「本件仮処分申立て」という。)について,同裁判所が平成28年3月9日にした仮処分決定(以下「原決定」という。)の執行は,同裁判所平成28年(モ)第12号保全異議事件の裁判があるまでの間,これを停止する。

2 経緯

 (1) 原事件は,滋賀県内に居住する執行停止相手方らが,福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において高浜発電所3号機及び同4号機(以下「本件各原発」という。)を設置している執行停止申立人(債務者)に対し,本件各原発が耐震性能に欠け,津波による電源喪失等を原因として周囲に放射性物質汚染を惹起する危険性を有する旨主張して,人格権に基づく妨害予防請求権に基づき,本件各原発を仮に運転してはならないとの仮処分を申し立てた事案である。

 (2) 大津地方裁判所は,平成28年3月9日,本件仮処分申立てを認容する原決定をした。

  これについて,執行停止申立人が保全異議の申立てをし,併せて,前記1記載の裁判を求めて本件執行停止の申立てをした。

3 判断

 (1) 一件記録によっても,原決定の取消しの原因となることが明らかな事情の疎明があったとすることはできない.

 (2) 執行停止申立人は,本件各原発に具体的にどのような欠陥があり,その欠陥に起因して,どのような機序で放射性物質の異常放出等の事故が発生し,これによって執行停止相手方らのそれぞれの人格権を侵害するに至るのかが明らかにされない限り,本件各原発に具体的危険性があるとはいえないはずであると主張するが,原子力規制委員会設置法1条は,我が国の原子力行政の根本的な視点として,原子力利用における事故の発生を常に想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなけれぱならないという認識に立つことを明らかにしていること,事業者である執行停止申立人において安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなけれぱ,本件各原発の安全性に欠ける点のあることが推認されるといえることからすると,この点の執行停止申立人の首長を基に,原決定の取消しの原因となるとすることはできない。

  執行停止申立人は,本件各原発に具体的現実的危険性はなく,執行停止相手方らの指摘等は危惧感にすぎないものであると主張するが,福島第一原子力発電所事故の原因に関する疎明資料が不足しており,現状において原因究明が完遂したと—応にしても認めることはできず,そうすると,新規制基準に従って設置変更許可を受けたことそれ自体によって安全性が確保されたとみることはできないばかりか,このように原因究明が道半ばの状況でありつつも,判明している限りでの事実に基づき,具体的現実的危険を検討したものであると考えられる新規制基準に依拠し,その制定経緯等に照らし,少なくとも,本件各原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され,それにどう応えたのかの主張及ぴ疎明が尽くされるべきであるから,この点の執行停止申立人の主張を基に,原決定の取消しの原因となるとすることはできない。

 (3) その他の点を踏まえても,現時点では,未だ原決定の取消しの原因となることが明らかな事情があるとすることはできず,その余の執行停止申立人の首長について判断するまでもなく,本件執行停止の申立てには理由がない。

  よって,主文のとおり決定する。

平成28年6月17日

                   大津地方裁判所民事郎

                          裁判長裁判言 山本 善彦

                          裁判言    小川紀代子

                          裁判言    岡田 総司

◉ 高浜原発訴訟弁護団声明 

2016.6.17(金)

                             2016 年 6 月 17 日

        声  明 

             大津地裁高浜3、4号機仮処分申立事件申立人、弁護団一同

 本日、大津地裁は、関西電力株式会社がしていた平成28年3月9日付仮処分決定(以下「原決定」という。)の執行停止申立てに対し、これを却下する旨の決定をした(以下「本決定」という。)。関西電力株式会社は、仮処分異議に対する決定が出る前に、高浜3、4号機の運転を再開しようとしたが、大津地裁は、その企てを認めなかったのである。これによって、今後、少なくとも仮処分異議に対する決定が出るまでの間、関西電力株式会社が高浜3、4号機の起動スイッチを押すことができないことが確定した。

 本決定は、改めて、安全性の立証責任を明確に事業者側に負わせた上で、福島第一原子力発電所事故の原因究明が完遂していない状況では新規制基準に適合していても安全性が確保されたとみることはできないと述べた。市民感覚に沿ったまっとうな判断というべきであるし、原子力規制委員会や事業者が再稼働に向けて闇雲に前のめりになっている姿勢に対して強く警鐘を鳴らすものと評価することができる。

 原決定が出た後起こった熊本地震は、特定の地域を震度7の地震動が連続して襲った点においても、震源域が日を追って拡大した点でも、従来想定されていなかったタイプの地震であり、地震についての科学的認識がなお不十分であることを明らかにした。中央構造線に沿って震源域が拡大することを恐れて、多くの人が川内原発の運転を停止することを求めたが、原子力規制委員会も九州電力も、これを検討する姿勢さえ見せず、そのことが市民の原発に対する不安を一層高めている。

 島崎邦彦前原子力規制委員長代理が、現在の基準地震動の策定方法に過小評価の恐れがあることを表明していることに鑑みても、このまま高浜3、4号機を運転することは許されるべきではない。

 本決定は、当然の決定ではあるが、原発ゼロの日本を実現するためには、多くの手続を積み重ねる必要があり、その一つを積み上げた価値ある決定である。私たちは、原発ゼロの日本に道すじを開いた原決定を高く評価し、今後も、これを守るために全力を尽くすことを誓う。

                                       以上

◉  記事

  〇 朝日新聞 2016年6月17日

  高浜原発、運転差し止め続く 関電申し立てを地裁が却下

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止めた仮処分決定について、大津地裁は17日、関電が一時的に効力を止めるよう求めた執行停止の申し立てを却下した。差し止め仮処分を決めた山本善彦裁判長が今回も担当し、「決定取り消しの原因となる明らかな事情は認められない」と判断した。関電は2基を動かせない状況が続く。

 関電は3月の仮処分決定を「科学的知見をふまえず、主観的な危惧・不安から短絡的に結論づけた」と批判。差し止めの経済的損失は1日約3億円にのぼり、予定していた電気料金値下げの見送りで市民生活や経済活動に大きな影響が出ていると主張していた。

 関電が同時に申し立てた保全異議は審理をすでに終えたが、決定の期日は未定。関電広報室は「誠に遺憾。異議審で仮処分命令を取り消していただきたい」とコメント。保全異議で決定が覆らなければ、関電はさらに大阪高裁に保全抗告を申し立てることができる。

 〇 読売新聞 2016年6月17日

 高浜運転差し止め仮処分、執行停止の請求を却下

 関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定に対し、関電が差し止めの効力を止めるよう求めた執行停止の申し立てについて、大津地裁(山本善彦裁判長)は17日、却下した。

 この決定に対して関電が不服を申し立てる手続きはなく、保全異議審の決定が出るまで高浜原発3、4号機は再稼働できない。

 山本裁判長は、運転中の原発を停止させる初の司法判断になった3月の仮処分決定も担当していた。

 山本裁判長は今回の決定で、仮処分決定を取り消すための明らかな事情が関電から示されていないと指摘。その上で、東京電力福島第一原発事故の原因が究明されたとは認められず、この事故を受けて原子力規制委員会が策定した新規制基準に基づく審査に合格しても、安全性が確保されたとはいえない、とした。

 〇 毎日新聞 2016年6月17日

 高浜原発 再稼働認めず 関電申し立て却下 大津地裁

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた仮処分決定について大津地裁は17日、関電による執行停止の申し立てを却下した。山本善彦裁判長は「決定を取り消す明らかな事情がない」と理由を述べた。少なくとも、関電が決定取り消しを求めて申し立てた保全異議の審理(異議審)が終わるまで、再稼働は不可能になった。

 異議審は5月10日の第1回審尋で法廷審理が終わり、6月10日に関電と住民の双方が追加書面を出し主張を終えた。地裁は今夏にも結論を出すとみられる。今回と同様、山本裁判長が担当しており、決定が取り消されない可能性が高まった。

 山本裁判長は、自らが判断した今年3月の仮処分決定時と同様に、「(関電が)安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなければ、欠ける点のあることが推認される」と指摘。「(東京電力)福島第1原発事故の原因究明が完遂したと認めることはできず、新規制基準に従って許可を受けたことで安全性が確保されたとはみられない」とも言及した。

 運転差し止めの仮処分は滋賀県の住民29人が申し立て、大津地裁の山本裁判長が3月9日、訴えを認めて全国で初めて稼働中の原発を停止させた。地裁は、新規制基準に疑義があり避難計画も不備だとし、「人格権が侵害される恐れが高いのに、安全性の説明が尽くされていない」と指摘した。

 関電は同14日、仮処分決定の取り消しを求める保全異議と、異議審の結論が出るまでの仮処分の執行停止を申し立てていた。

 関電は「申し立てが認められず、誠に遺憾だ。(異議審で)早期に仮処分命令を取り消していただきたい」とコメントした。

 〇 日本経済新聞 2016年6月17日

 高浜原発差し止め維持 大津地裁、関電側申し立て却下

 関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)を巡り、大津地裁(山本善彦裁判長)は17日、3月に同地裁が出した運転差し止めの仮処分決定に対し、関電が決定の効力を一時的に止めるよう求めた執行停止の申し立てを却下する決定をした。

 高浜3、4号機は運転できない状態が続く。関電側が仮処分決定の取り消しを求めた異議の審理は既に終えており、異議審の決定も早ければ今夏に出る見通し。

 決定理由で山本裁判長は、2011年3月に起きた東京電力福島第1原発事故について「原因究明ができたと認められない」としたうえで「(事故後に策定された)国の新規制基準での審査に合格しただけで安全性が確保されたとはいえない」と指摘、関電の申し立てを退けた。

 高浜3、4号機の運転を差し止める仮処分を求めていたのは滋賀県内の住民。今回と同じ山本裁判長が3月9日、運転差し止めの仮処分決定を出した。

 関電は翌10日、稼働中だった3号機を停止させる一方、決定の取り消しを求める異議とともに、効力を止める執行停止を併せて申し立てていた。異議審も山本裁判長が担当している。

 〇 産経新聞 2016年6月17日

 高浜3、4号機の再稼働認められず…関電、異議審から抗告審に目標変更か

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転停止を命じた3月の大津地裁の仮処分決定で、関電が求めた執行停止の申し立てが17日、地裁で却下された。並行して審理されている異議審も同じ裁判官が担当し、関電の主張が認められない可能性が強まった。ただ、関電は再稼働を経営改善のため急務としており、異議審も敗れた場合、大阪高裁での保全抗告審で巻き返しを図る構えだ。

 高浜3、4号機の運転停止を命じる仮処分は、昨年4月の福井地裁に続いて2度出された。これを受けて関電は「訴訟リスク」への対応を強化。担当弁護士を8人から12人に拡充し、訴訟支援を専門とする「原子力訴訟グループ」を新設して異議審に臨んでいる。

 しかし5月10日の異議審第1回審尋で関電は、目新しい証拠を提出せず、「審理を終結させてほしい」と要請。法廷審理は1回で終了した。関電と争う住民側は「(別の裁判官が担当する)高裁で判断を仰ぐ狙いではないか」と指摘する。

 関電が法定対策を強める背景には、4月に始まった電力小売り全面自由化がある。関電は低価格の電力を販売する新規参入事業者に顧客を奪われ、八木誠社長は「大変厳しい状況にある」と語る。高浜3、4号機を再稼働すれば1カ月当たり約100億円の収支改善を見込める。電気料金を値下げして価格競争力を確保するために「一日も早く再稼働させたい」(八木社長)のが本音だ。

◉  社説・論説 

 各社とも社説論評なし

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