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#004 原発輸出協定に関する有田芳生参院議員らの意見書

2014.4.4

【有田芳生氏らの意見書】

(26.4.4)テキスト版(衆議院での議決前に配布されたもの)

 

 

 

民主党衆参国会議員の皆さま

 

トルコ・UAEとの原子力協定に関する意見

 

 

 日頃からのご奮闘に敬意を表します。

 早速ですが、現在、党外交・防衛部門会議で議論されているトルコ・UAEとの原子力協定について、私たちがなぜ協定に反対するのか、また、なぜ民主党が反対すべきなのか、見解をまとめさせていただきました。併せて、今、民主党が訴えるべき政策について進言させていただいております。

 これは決して、党内の一部議員の声ではなく、「命を守る政治」をめざす民主党の立ち位置を信じ、民主党の再建に期待と望みをかけて下さっている多くの国民の声であり、そして、党中央の賢明なる判断を待っている民主党地方組織の皆さんの声だと確信しています。

 何とぞ、議員同志の皆さまのご賛同をお願いいたします。

 

1.協定に反対すべき理由

 

 (1)民主党が掲げる「2030年代原発ゼロ政策」と矛盾すること

   2012年9月に決定した「『原発ゼロ社会』を目指して〜国民とともに、国民とともに、大胆かつ現実的な改革を進める~」において、我が党は

  (1)40年運転制限を厳格に適用する

  (2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働する

  (3)原発の新設・増設は行わない〜の原則を厳格に適用しつつ、「2030年代に原発稼働数ゼロを可能にするようあらゆる政策資源を投人する」ことを高らかに宣言しています。

   また、同文書の中で「我が国は成長戦略の一環として、原子力発電所の海外建設に積極的に取り組んできたが、国内で原発ゼロを目指しながら.海外に輸出することについては国内外に批判があり、将来のあり方については内外の声を十分に聴いて、再検討することが必要である」と、原発輸出政策の転換について言及をしています。

   私たちは、決して情緒的にこの原発ゼロ政策を決定したわけではなく、様々な要因を真摯に検討した結果、原発ゼロを目指すべきだという判断に至ったわけです。

   国内で原発を新設しない、ゼロにすべきだと訴えているにもかかわらず、国外であれば推進するというのは全く矛盾した政策であり、国民に対して説明がつきません。むしろ、日本が単独で原発ゼロを推進するのではなく、国外においても同様に原発ゼロを実現することを訴えるべきなのです.

 

 (2)東電福島第一原発事故の原因究明は未だ道半ばであり、汚染水対策・廃炉作業にも先行きが見えていないこと

   東電福第一原発事故から3年が経過をしていますが、その原因究明は未だ道半ば、というよりはまだ端緒に就いたばかりです。国会事故調も、地震による影響の可能性が排除出来ないとして、さらなる調査を求めており、原因究が出来ていない段階で、原発の真の安全性は追求できないはずです。

   加えて、汚染水対策も次々と新たな間題に直面し、廃炉に向けた作業も未だその方策を検討している段階です。「世界一の技術」を持ってしても制御出来ないのが原発事故であり、放射能汚染であることを証明している一方で、果たして本当に、日本の原発関連技術が世界一と言えるのかという疑問を呈しているといわざるを得ない状況です。

   このような状況下で、とりわけ、福島県民の皆さんの「原発廃絶」の願いを汲み取れば、とても原発の輸出を容認できる状況にはないと考えます。

 

 (3)核廃棄物(使用済み核燃料)処理が暗礁に乗り上げていること

   我が国では、使用済み核燃料、特に高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題について、未だ解決の糸口すら見えていません。このことは、民主党の「2030年代原発ゼロ」政策の一つの根拠にもなっています。「世界一の技術」を持ってしても、使用済み核燃料の処分が実現出来ていないのが厳然たる事実なのです。

    

   原発を稼働させれば、必ず廃棄物か生じます。原発を輸出するのであれば、当然に、廃棄物の処理・処分の技術・方法も合わせて提供すべきであり、それが出来ない中での輸出促進は国際社会に対して責任ある対応とは言えず、道義的にも成り立ちません。

 

 (4))協定当事国における原発リスクが不透明・不明確であること

   日本国内においてすら、近年になってようやく活断層の実態が明らかになり、活断層の上に原発が建設されていた事実が明らかになってきています。また、地震以外の自然災害についても、過去の経験・想定以上の災害が発生し、被害が増大するなど、リスク要因は一層、不安定かつ複雑なものとなっています。

   そして原発を取り巻くリスク要因は、日本以外の国では一層、複雑かつ不安定です。自然災害だけでなく、行政の管理能力不足、汚職や腐敗の存在、政情の不安定さ、地域紛争やテロ、反政府暴動の危険性など、私たちが想定し得ないリスク要因が存在するわけです。原発に関する知識と経験を兼ね備えた専門家や作業員が不足し、そもそも運用・管理レベルでも不安がある中で、これらの多様かつ重大なリスク要因に対応することは不可能です。

 

 (5)トルコ(シノップ原子力発電所計画)において特に大きな問題・リスクがあること

  トルコは.世界有数の地震頻発地帯(1900年以降にM6以上.の地震が72回)です。

  一方、建物やインフラの耐震補強は進んでおらず、例えば首都のイスタンブール市ですら、耐震化率は全建物の1%程度と伝えられています。仮に日本から輸出する原子炉の耐震性が高くても、大地震が発生した場合周辺インフラが寸断される可能性が高く、事故対応が極めて困難になることが想定されます。

  日本政府は、日本原子力発電株式会社に委託して、シノッブ原子力発電所予定地の地層調査を行っています。しかし、敦賀原発の活断層について、原子力規制委員会が認定したにも係わらずそれを認めようとしない原電の姿勢を見れば、原電による調査は信用できないと断ぜざるを得ません。

  また、地元自治体のシノッブ市長や市民は、原発建設に強しており、「シノッブと福島、トルコと日本の友好を」という横断幕を掲げて反対運動を展開されています。その一方で、エルドアン政権は原発に関する情報統制を行っているとの情報もあり.国民に対する説明責任が果たされない懸念が強まっています。トルコでは、原発推進と規制の両方をトルコ原子力庁が担っており、規制と推進が一体的に行われていることからも、平和利用および安全性の観点で問題ありと言わざる

を得ません。

 

2,賛成論に対する意見

 

 (1)政策の一貫性を維持すべきだという主張に対して

   党内には、民主党が過去に締結した12の原子力協定全てに賛成してきたこと、また、前回のロシア、韓国、ベトナム、ヨルダンとの原子力協定は政権与党時代に推進した協定であったことなどから、政策の一貫性を維持すべきとの主張があります。

   しかし、以下の点で、私たちは今こそ積極的に原子力協定に関する方針を転換すべきだと考えます。

   ①先に述べたように、民主党として2012年9月に「『原発ゼロ社会』をめざして」を決定し、その中で「(原子力発電所の海外建設の)将来のあり方については内外の声を十分に聴いて、再検討することが必要」としています。つまり、政策の見直しを行うことは党としての決定であり、何ら政策の一貫性を欠くものではありません。

   ②また、政策の一貫性とは、内外の要因の変叱や、政策の対象(この場合はトルコとUAE)の現況に鑑みて、過去の政策決定や判断が今なお正しいと含理的に説明できる時だけに有効です。今回の原子力臨定については、これまで述べてきたように、内外の情勢が大きく変化しており、また.対象国にも深刻なリスク要囚が存在しています。つまり、政策の一貫性にのみ囚われて賛否を判断するのは、むしろ、責任ある政治の姿とは言えません。

   ③加えて、事故から3年経った今もなお、東電福島第一原発の事故処理・汚染水対策・廃炉に向けた取り組みは深刻な問題を抱えています。このことは、原発事故の過酷さと、原子力や放射能を制御することの難しさを改めて内外に知らしめていると考えるべきです。私たちは、真摯にこの現実を直視し、今こそ、原発輸出に関する方針の転換を図るべきなのです。

   ④さらに、今回の原子力協定、さらには他の国々への原発輸出を推進しようとしているのが、命や平和を誰よりも軽んじ、企業の利益を篤一に考えている安倍政権であるということは、私たちが今回の協定に反対すべき大義を与えてくれていると理解すべきです。この主張を行うことで、安倍政権が進めようとしている他の様々な政策についても民主党としてしっかりと国民に訴え、理解を得ることが可能です。

 

 (2)日本の原発技術は世界一(だから安全なんだ)という主張に対して

    繰り返しますが、残念ながら、東電福島第一原発事故の原因は、未だに究明できていません。事実、地震による破損の可能性や、新たな構造上の問題等も指摘されています。また、汚染水処理も、廃炉に向けた技術も、3年たった今もなお模索している状況にあるのが実態で、もとより、使用済み核燃料(核廃棄物)の処理・処分問題は、完全に暗礁に乗り上げています。

    このような状況下で、何をもって日本の原発技術が世界一で、かつ一番安全だなどと主張できるのでしょうか?3.11の事故以降、日本の原子炉炉の設計は何ら変更されていないのではないでしょうか。今やるべきは、東電福島第一原発ヘの対応に全力を傾け、まさに世界一の技術を証明することなのではないでしょうか。

 

 (3)日本が原発を輸出しなければ、中国、韓国、ロシアの危険な原発が建設されるだけだという主張に対して

    この主張については、前項の「日本の原発が世界一」という前提に依拠していると思われます。そうであれば、上に述べたように、この主張もその前提条件か崩れています。また、もしこの論拠を採用するならば、例えば「日本製の武器技術は世界一で.他の国が欲しがるから売ってもいい」という主張も成り立ってしまいます。

    本来、私たちは、過酷な原発事故を経験した立場から、もはや「原子力発電所」に依存すべきではない、新たな建設をめざすべきではないと国際社会に訴えるべきなのです。「より安全な原発を売ろう」ではなく、「より安全な発電技術、発電システムを提供しよう」と主張すべきなのです。

    併せて、もし中国や韓国の原発が危険なのであれば、その建設・増設に対して明確に反対もしくは懸念を表明しつつ、安全対策や避難計画など、当該国の国民の命と安全を守る立場で貢献するべきなのではないでしょうか。

 

3.民主党が推進すべき政策

 

 

  以上、民主党として今回の原子力協定に反対すべき理由を述べてきました。

   私たちは、①国民の命を守る政治を行う民主党、②企業利益優先の自民党に明確に対峙する民主党、③福島の再生なくして日本の再生はないと訴える民主党であるからこそ、決して今回の原子力協定に決して賛成すべきではなく、むしろ正々堂々と、国民に対して以下の訴えを行い、自民党政権との国会論戦に臨むべきだと考えます。

 

 (1)再生可能エネルギー、スマートグリッド/スマートシティ、及び最新鋭のコンバインドサイクル発電技術を世界に広める

   民主党は、2030年代までに原発ゼロを実現するため、その代替エネルギーとして、再生可能エネルギ一の利活用促進や、そのためのスマ一トグリッド/スマートシティ技術の革新、さらには、すでに最先端の熱効率を実現しているコンバインドサイクル発電などを推進することを訴えているはずです。

   これをそのまま、日本が行うべき国際改献として位置づけ、一年でも早く、原発に頼らない発電が世界で推進されるよう最大限の貢献をすべきです。

   電力会社やメーカー等に対しても、この分野における研究開発や商品開発に可能な限りの支援を行うとともに、産官学の連携によって強力な海外展闘をめざすべきです。

 

 (2)廃炉技術を確立して世界の廃炉に貢献する

   同時に、今やるべきは東電福島第一原発の汚染水処理および廃炉に向けた取り組みにあらゆる資源を投入すべきことであること、そして、その結果得られた廃炉技術やノウハウを、原発を持つ世界の国々と享有し、日本が廃炉に向けた国際的な取り組みの先頭に立って貢献していくことを高らかに宣言すべきです。

 

4.最後に

 

  私たちは東電福島第一原発の事故を経験した中で、また9万人から寄せられたパブリックコメントを反映させつつ、党内で徹底した議論を行った上で「革新的エネルギー・環境戦略」を策定し、原発は2030年代にゼロをめざす、原発の新・増設はしないと決定しました。国内で原発を建設しないと決めたのに.外国で建設促進しようとする事など、人道的に許される事ではないと考えます。また、核廃棄物処理の解決の糸口すらつかめていない中で、原発輸出促進政策は、止めるべきであると、今回の原子力協定に反対する事が、我が党の役割であり、責任です。福島原発事故は終わっていません。

  民主党は、原発の経済非合理性、社会への深刻な影響について情報を提供し、再生可能エネルギーの優位性を訴えるべきであり、これらの分野で国際的な貢献をすべきです。さらに、廃炉技術の分野での技術革新に官民挙げて取り組み、国際的な廃炉の促進に貢献すべきです。また、政治的にも与党との対抗軸を明らかにし、民主党を支持してくれている国民が、野党・民主党にどのような答えを求めているか、冷静に、正しく判断すべきです。原子力協定に賛成したら、民主党は今後、自民党の原子政策を追及できなくなるでしょう。

 

                      (以上)

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