2018.8.9(木)
長文ですが、沖縄国際大学大学院教授(元琉球新報論説委員長)前泊博盛さんのFB投稿文から。
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翁長雄志知事の突然の逝去。安倍政権と戦い、志半ばでの黄泉の国へ旅立ちは、無念だったと思います。保守本流の政治家として生きてきた翁長さんが、なぜ自民党県連と袂を分かったか。知事になった翁長さんが安倍政権に問い続けたのは、この国の「政治の品格」でした。 選挙で示された民意を無視し、辺野古への新基地建設を強行する。なぜその基地が必要なのかを、「丁寧に説明し、県民の皆さんのご理解を得ていきたい」といいながら、一度も説明には来ることのない安倍首相でした。
「普天間基地は、世界一危険な基地」と言いながら、「世界一危険」の根拠も示さない菅義偉官房長官。最新のデータでも、復帰後の沖縄で起きた米軍機事故738件のうち、普天間基地内では17件、対して嘉手納基地は508件。30倍も事故が起きている嘉手納基地は、なぜ「世界一」になれないのか。「普天間の危険性除去には、辺野古移設が唯一の方法」という論理は、辺野古新基地建設を進めるための安倍政権の印象操作、方便に映ります。
辺野古基地建設ための仲井真弘多前知事の「埋立承認」は、瑕疵があると裁判に訴えても、司法すら配下に置き、行政に傅く判決で、民意をねじ伏せる。知事になった直後、那覇市久茂地の翁長さん行きつけの居酒屋で一緒に飲んだ時、辺野古新基地建設を強行する安倍政権を前に「どんなにがんばっても、ダメなことがあることだけは、分かってほしい」と翁長知事が語った時、「その時は、辺野古に身を投じればいい。そうすれば、工事は止まる。それが、沖縄の知事になるということ」と厳しい注文を付けました。すこし言い過ぎたかと反省しています。
命を賭した政治を求められる。これが沖縄の知事の仕事。命懸けの仕事をし、命を削り、削られ、命を失った翁長さん。「安倍政権に殺されたようなもの」という言葉に、思わず頷いてしまいました。
自民党県連幹事長として、保守本流の政治家として生きてきて、自民党と袂を分かつ。東京に向かうJALの機内で、隣り合わせになった時、「前泊さんも政治家になった時にはわかると思うけど、一筋縄ではいかないことが多すぎて、身も心もすり減ってしまう」とぼやいたことがありました。
政権与党に身を置いても、そうぼやく翁長知事に「自民党とはどんな政党なのか」と問うと、即座にかえってきた答が「暴力団みたいなものだよ。足抜けしようとすると、命を狙ってくる。どこまでも追い込んできますよ。でも、また仲間に戻ると、やあ、やあと何もなかったかのように和気あいあいと付き合ってくれる。そんな政党ですよ」という驚きの話でした。
「よほど痛い目にあっているんですね」と問うと、「前泊さんも政治家になれば、分かりますよ。それはもう相当なものですよ」
きれいごとでは済まされない世界「政界」の中で、相当な圧力と軋轢を感じながら、辺野古新基地建設を強行する安倍政権に「うしぇーてねーびらんど(なめるなよ)」と県民大会のたびに語った翁長知事でした。
その知事を「弾はまだ一発残っているがよ!」と応援してくれた菅原文太さんも、東京(銀座のイタリアレストラン)や沖縄(泊の「糸車」が文太さんとの密会場所でした)で一緒に飲むたびに「沖縄からは日本がよく見える。いまの日本はおかしい」とぼやいていました。
大田昌秀さん、上原康助さん、沖縄に思いを寄せてくれた京都の野中広務さん、福地広昭さん、そして翁長雄志さん。この一年余、あまりに多くのきら星を失いました。
共同通信など複数のメディアに、今後の沖縄の政局、政治、辺野古問題の行方についてコメントしました。詳細は、明日の紙面で。アエラdot(渡辺豪記者)の記事については、「そんなことはありません」と強く否定しておきます。