• yanxia2008

【勉強になりました】

2016.9.12(月)

 富士山は日本一高い山。

 では日本一低い山は?

 の問いに答えるページです。

「日本一低い山」のぼり比べ」

2016年6月15日 Daily Portal「はつけんの水曜日」(斎藤公輔氏)

この規模の山の話です

「日本一高い山」といえば、もちろん富士山である。しかしその逆、「日本一低い山」も当然存在する。 「低い山」界で著名な三低山、「天保山」「弁天山」「日和山」を登り比べてみた。

「日本一低い」とはいったい

「日本一低い山」がいくつかある、とさらっと書いたが、いきなり日本語として破たんしている。でもウソではない。そう書いてあるのだ。

騙されたと思ってちょっと見て欲しい。まずこれが、日本一低い山「天保山」

こっちは、日本一低い山「弁天山」

そして最後は、日本一低い山「日和山」。どう見ても3つとも「日本一低い」って書いてある

これ、厳密には「○○という条件で、ここは日本一低い山」という、日本一低い山争奪戦が各地で繰り広げられているのである。 イメージとしては、名物によくある「初代」「元祖」「本家」の名付け方に近い。それくらいのニュアンスの違いである。ホテルでいえば、「本館」「別館」「新館」みたいな(ちょっと違うか)。

いろんな表示を見てまわると、どういう条件で日本一低いのか書いてあった。関係ないが、「単位がミリメートルやん!!」とセルフツッコミが入るのが大阪らしい

「一番じゃなきゃダメですか?」という有名なセリフ(?)がある。低い山に限っていえば、やっぱり一番じゃなきゃダメなのだ。「日本で二番目に低い山」だとアピールが弱くなるし、下手をすれば「日本で三番目に低い山」という、さらに微妙な立ち位置にもなりかねない(私はそんな微妙なのも好きだけど)。 しかし、このような曖昧な表示では登山者の誤解を招くおそれがある。などと国民生活センターのようなことを考えたので、それぞれどのくらい日本一なのか、順番に登って確かめてみた。

低い山の王様「天保山」

低い山に関心がなくても、天保山の名前は知ってる人が多いだろう。大阪の「海遊館」があるのが天保山(地域名)であり、その海遊館の横にひっそりとそびえるのが、日本一低い山「天保山」だ。

天保山の最寄り駅は、大阪市営地下鉄「大阪港駅」。市街地にあって交通の便がよいのが特徴で、駅を出ると視界にいきなり観覧車が現れる

5分ほど歩いた先の突き当たりが運命の分かれ道。左へ行くと、家族連れでにぎわう海遊館へ。そして右へ行くと、天保山がそびえる公園に

その、何の変哲もない公園入口。海が近い

まずは公園の正面にある階段(13段)を上る

そのまま公園内の平地を直進

私の足で118歩、1分ほど歩いた先に、再び階段(8段)がある

ゲートボールをしている地元の方々を横目に進むと……

三角点と共に、山頂の表示が出現。お疲れさまでした

別に公園の案内をしていたわけではなく、これが天保山なのだ。 気になる標高は4.53メートル。いろいろと突っ込みどころはあるが、とにかく「山」感がないのが気になった。公園の一部というのもあって、ふもとからの高さを全く実感できないのが大きな理由である。 おまけに天保山の山頂よりも、公園内にある別の丘の方が高いのだ。

天保山山頂から望む、隣の丘(山ではない)

その丘の上から望む、天保山山頂。山とは何なのかを考えさせられる

残念ながらずいぶん前に撤去されてしまったが、昔は丘の上に挑発的な看板があった(2001年撮影)。いい看板なので復活してほしい

天保山は日本一低いのか

天保山の起源は、公園の入り口に日本画と共に記されている。なんでも、「川浚え(かわさらえ)の土砂を積み上げてできた」山らしい。つまりは、人工の山ということになる。

できた頃の天保山はこんな感じだったらしい。今とは比べものにならないくらい高い。地盤沈下によって、どんどん低くなっていったとのこと

私は天保山に何度も訪れているので、ある程度の変遷が分かる。数年前までは、特に但し書きもない、本当に「日本一低い山」だった。

2011年の山頂。この頃は何の註釈もなく「日本一低い山」と書いてあった

風向きが変わったのは、2014年のこと。天保山よりも低い「日和山」が、国土地理院に山として認定されたのだ。日和山についてはこのあと訪問するので、詳しくは後ほど。

そしてどうなったかというと、「二等三角点のある山の中では日本一低い山」になった。この注釈は、今のところ商店街に設置されてる看板にだけ書いてあった

知名度も、そして低さも間違いなく日本一だった天保山。それが突如あらわれた(なぜ突如あらわれたのかも後で分かる)日和山によって、王者の座を奪われてしまったのだ。ああ、なんと過酷な日本一争いであることよ。 というわけで、天保山は厳密には「日本一低い山」ではなかった(日本で二番目に低い山)。 しかし、地元ではいまも「日本一低い山」として親しまれている。私も天保山には馴染みがあるので、無下に二番目と呼ぶのも気が引ける。ここはひとつ、「日本一低い山の一種」ということにしておきたい。

商店街のお店に行くと登頂証明書がもらえた。都会にいながらにして気軽に登山気分が味わえるスポット、それが天保山

孤高の存在「弁天山」

次に紹介する「弁天山」は、四国・徳島県にある。私の地元でもあるため、実は毎年正月に登山している馴染みの山だ。もうかれこれ10年くらい元旦登山を続けている。

JR牟岐線「地蔵橋駅」から約1kmほど行った田んぼの真ん中に、突如出現するこんもりとした緑色。これが、日本一低い山「弁天山」である

天保山とは対照的に、まわりには田んぼや畑といった、のどかな風景が広がっている

登山道の入り口に鳥居があるのが特徴。山頂に神社があるのだ

最近では、富士山の世界遺産登録を祝う看板が出ている。日本一低い山として、日本一高い山をリスペクトする姿勢が見られる

富士山をかたどったライトアップをしていた時期もあった。よほどの富士山好きとみてとれる

登山道もわかりやすい。鳥居をくぐると、山頂まではゆるやかな石段が続くので、そこを道なりに登るだけ

山の左側から見るとこんな感じ。人がいるところが山頂

登山時間は約15秒。山頂には、記帳所(左)と祠(右)が鎮座していた

ここは天保山と違って、登山しているときに一応「山を登っている」という実感があった。また、周囲が田んぼや畑ばかりなので、山のこんもりした感じも際立っていて素敵だ。 家にジオラマを飾りたいと思うほどに、弁天山は愛おしい山である。

山頂からの景色はこんな感じ。こうしてみると、そこそこ高さがあるように感じる

ちなみに山頂の記帳所の中には、かつて登頂したという福山雅治と、

キンタロー。の写真(わざわざポスターを作ったのか?)が貼ってあった。先の富士山リスペクトもそうだが、こういうミーハーなところが田舎っぽくて良い

賽銭箱に取り付けられた、謎の盗難警報器のことも気になる

毎年登っているので分かるのだが、昔はこのようにただの木の賽銭箱だった(2005年撮影)。何があったんだ弁天山

そして肝心の低山競争については、天保山など我関せずといった感じで、堂々と「日本一低い」を自称している。もちろん、天保山を抜いて日和山が日本一になった今でも、弁天山は揺るがない孤高の存在を気取っている。なぜなのか。

弁天山は日本一低いのか

弁天山の標高は6.1メートル。天保山の4.53メートルと比べると、実に1.3倍もの高さがある。高い! いや、正確には低いけど、高い。 しかし、弁天山にはある特徴があった。ふもとに設置されている由来の看板を見てみると……

「自然で古来よりある山では」日本一低い、という但し書きが。ここに書かれている他の低い山というのが、「天保山」と、この後に紹介する「日和山」だ

思い出して欲しい。天保山は、川浚えの土砂を積んだ人工の山だった。自然にできた山である弁天山は、そんな人工山なんて端から相手にしてなかったのである。 たしかに人が土を盛れば、そこが低い山になる。人が盛ったかどうかで山の価値が決まるものではないが、同列で比較するのは難しい。自然にできた低い山が、それをアピールするのは納得のいく話である。 弁天山は、厳密には「日本一低い山」ではない。純粋に高さを比べると、日本で三番目である。しかし、自然にできた山として大きなアドバンテージがあるので、弁天山もやはり「日本一低い山の一種」ということになるだろう。

弁天山にも登頂証明書があって、山の向いにあるラーメン屋でもらうことができる(10年前にもらっていた)

さて、最後はたびたび名前が出てくる「日和山」へ。

新世代の日本一低い山「日和山」

さて、最後はいよいよ、天保山を抜いて日本一低い山になったという「日和山」だ。ところ変わって、場所は東北・仙台にある。

車を使わずに日和山へ行くのは難しい。しかし、ここはぜひ苦労して公共交通機関と徒歩で行ってみてもらいたい。まずは仙台駅から電車で15分の「陸前高砂駅」へ

そこから路線バスに乗り換え約5分、「中野新町」というバス停で下車(仙台駅から路線バスに乗るルートもある)

この先は交通機関がないため、約5kmの道のりを徒歩で行くしかない

進むにつれて、徐々に景色が変化してくる。電柱がやたら目立ってみえるほど、周囲に人工物がない

荒野のような平地が延々と……。殺風景すぎて不安になってくる。空がこんなにも広く見える

なぜここまで何もないのかと言うと、実はこの辺り、震災の津波被害を受けた地域なのである。工事中の区画や、行き止まりになっている道も多い。元はどんな土地だったのだろう、どれくらい人が住んでたのかなあ、などと考えを巡らせているうちに、だんだんと海岸線に近づいてきた。

立ち枯れの木がやけにフォトジェニックで、いっそうの寂しさを誘う。スマホで現在地を確認しながら歩かないと、どこに向かってるのか分からなくなる

やがて道の果てに堤防が見えてきた。ここまで山の気配はまるでないのだが、

突如「日和山」の看板が出現。ついに着いたようだ

心の準備もできぬまま、いきなり登山口に差し掛かる。階段になっているので登りやすい

慎重に階段を登ること4歩。日和山の登頂に成功した

山頂からふもとを望む

えーと。これは……。 自分のなかにある「山」の概念が音を立てて崩れていくのを感じた。これは間違いなく「日本一低い」という名前通りの山だ。圧倒されて言葉を失った。

とはいえ、果たしてこれは山なんだろうか(禁句)

日和山は日本一低いのか

なぜ最近になって、日和山が天保山を抜いて日本一低い山になったのか。それは、東日本大震災が影響している。もうお分かりかと思うが、津波で削られて低くなったのだ。

海が目の前にあるので、きっと津波をもろにかぶったのだろう

気になる標高は3メートルとのこと。しかし、周囲がなだらかに盛り上がっているので、ほとんど高さを感じさせない。実感としては、1メートルくらい。

かつては「日本で二番目に低い山」だった日和山は、「元祖・日本一低い山」を名乗っていた(天保山が地図に載る前は、日本一低い山だったため)。その名称は今も看板にひっそりと残っている

事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、まさか「日本一低い」の称号が更新される日が来ようとは、誰も思ってなかっただろう。もともとは人工の山だけど、それが自然の力で日本一に成り上がった(成り下がった?)のだ。 他の「日本一低い山」である天保山や弁天山を見たあとなので、余計に感慨深いものがあった。 日和山は、名実ともに「日本一低い山」だ。他の山も「日本一低い山の一種」として敬う気持ちは変わらないが、日和山に心を揺すぶられたのは確かである。

このほかにも、大阪府堺市に「一等三角点のある山としては日本一低い山」といわれる「蘇鉄山」があるらしい。未訪問なので、近いうちに訪れてみたい。 また、「低い山」にまつわるエピソードは、日本だけではない。『ウェールズの山』は、まさに低い山がテーマの、実話を元にした映画だ。 ストーリはこんなの。村自慢の「山」を測量してみたら、山と認定するにはわずかに高さが足りなかった。このままでは、おらが山が単なる「丘」になってしまう! その危機を脱するため、村人が山を盛るのである。人力で。 山を人工造成したり、山なのか丘なのかといったような話は、世界共通みたいだ。低山に興味を持った方は、ぜひ合わせてご鑑賞いただきたい。

土砂を積み上げてこの規模の山を作ったという天保山も、冷静に見るとすごい

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