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yanxia2008

【大学は軍事研究を排せ】

2016.6.2(水)

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大学・研究機関等の軍事化の危険性を、国民、科学者・技術者、大学研究機関等、ならびに日本学術会議に訴える

2017年2月24日 世界平和アピール七人委員会

武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫

 内閣府が“専門家”による国家安全保障と科学技術の検討会を発足させることにしたと、報じられている。国の科学技術政策を決めて予算に反映させる総合科学技術・イノベーション会議(議長:安倍首相)における軍民両用技術の研究推進政策の具体化に向けて、早急に作業するというのである。  これは2012年の第二次安倍内閣の発足以来、特定秘密保護法成立と防衛大綱・中期防衛力整備計画の閣議決定、「防衛装備移転3原則」の閣議決定による武器輸出の解禁、「防衛生産・技術基盤戦略」の公表、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立、共謀罪の企みなど、平和主義・民主主義・基本的人権尊重など日本国憲法に則った精神を踏みにじり、国の将来を危機に陥れかねない法律制定や閣議決定をかさね、軍国主義への道をひた走っている動きの一環である。  この動きの中に、2016年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画に記載された「国家安全保障上の諸課題への対応」があり、学術を軍事研究に積極的に動員する動きが公然と進められている。  安全保障関連法の成立によって発足した防衛省の防衛装備庁は、重要課題の第1に「諸外国との防衛装備・技術協力の強化」、第2に「厳しさを増す安全保障環境を踏まえた技術的優位の確保」を挙げている。そして「装備品の構想から研究・開発、量産取得、運用・維持整備、廃棄といったライフサイクルの各段階を通じた、一元的かつ一貫した管理が必要」なので、プロジェクト管理部に、文官、自衛官を配置し、プロジェクトマネージャーの下、性能やコスト、期間といった要素を把握して、効果的かつ効率的に行っていくための方針や、計画を作成し、必要な調整を行うと述べている。  この方式は、米国国防総省の国防高等研究開発局(DARPA)方式の踏襲であって、自由な研究の成果が民生にも軍事にも利用できるというデュアルユースではなく、目標を決め、そのために事前に何をしなければならないかを選定し、これを繰り返して最初に手をつけなければならない課題を選び出す。最初の課題だけを見れば、民生にも軍事にも応用できるテーマに見えるが、上で見たように“防衛装備”という「武器あるいは武器に関する技術」の開発の第1段階であって、軍事に支障のない範囲だけが民生用に提供されることになる。

 このような情勢の下で、2004年に開始された防衛省と大学・研究機関を含む民間との共同研究協定が2014年度から急増し、2015年度からは「安全保障技術研究推進制度」による大学・研究機関等への委託研究費が、年3億円、6億円、110億円と拡大されている。  さらに米国の軍機関から日本の大学・研究機関等に長年にわたり研究資金が提供されてきたことも、報道機関の調査によって2017年2月に明らかにされた。

 私たち世界平和アピール七人委員会は、国民一人一人が判断し声をあげるよう訴える:日本の科学・技術の成果が、武器あるいはその部品として諸外国に輸出され、米国やイスラエルなど海外との武器の共同開発によって実際に戦闘に使われ、殺戮に手を貸すことになってよいのか。諸外国より優れた“防衛装備”の開発を公然と唱えることによって世界の軍拡を促しているのではないか。「敵基地攻撃の装備を持つ方がよいという議論がある」と政権党の副総裁がいう。これが戦争を放棄した憲法の下での日本の姿であってよいのか。

 科学者・技術者に訴える:全体像が隠されて、最初の基礎や萌芽的な段階だけを見せられて、平和にも役立つといった素朴な感覚で防衛省の予算を受け、海外の軍資金を受けてよいのか。私たちは、制約や秘密を伴う研究はいかなるものであっても受けるべきでないと考える。

 大学・研究機関等に訴える:軍機関からの資金導入の場合の注意などといった生ぬるい感覚でよいのか。私たちは、構成員の間で広く議論を重ね、毅然たる規定を作り、内外の軍機関からの資金は受け入れず、大学・研究機関等の内部では企業との間でも、制約や秘密を伴う研究は避けることを求める。そのためにも一定規模以上のすべての外部資金の実態が公開されることを求める。

 学術団体、学協会に訴える:軍資金であっても直接の兵器開発研究でなければ問題ないといった感覚は支持できない。国内外を問わず、軍隊、自衛隊からの援助を受けず、その他一切の協力関係を持たないでいただきたい。

 日本学術会議とその会員に訴える:2016年6月以来、毎月公開で議論を重ねてきた「安全保障と学術に関する検討委員会」は2017年2月の委員会で「中間とりまとめ」を確認した。多様な意見が存在する組織の共通の見解として、理想的でないにしても、委員会の努力を評価したい。ただ3月の最終回委員会でさらに詰めるべき点が残されているし、幹事会、4月総会でどのように扱われるか、状況は予断を許さない。  政府が判断を誤り、情報操作によって国民に真実を知らせない中で、戦争に全面的に協力した科学者の反省から、第2次世界大戦終結から3年半後の日本学術会議第1回総会で行った「日本学術会議の発足にあたって科学者としての決意表明」、翌1950年4月の声明「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、1967年5月の会長見解と10月の「軍事目的の科学研究を行わない声明」を名目だけでなく継承し、総会が国民の信頼を損なうことのない判断をされることを期待する。さらに、風化・空洞化を防ぐために繰り返し広く科学者の中での討議を重ねていくことを期待する。

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