2013.11.10(日)
記者 「NSAの盗聴疑惑をどう思うか」 O野寺防衛相 「信じたくない」 記者 「日本政府はどう行動するのか」 O野寺防衛相 「国民からだけでなく、あらゆる権力機構、司法からも我が国の秘密を守るために『特定秘密保護法案』をご審議いただいている。ご理解を賜りたい」 …… というまことしやかなデマが流されているとかいないとか
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【クローズアップ2013】:NSA盗聴、同盟国も対象 対テロ、米の主張矛盾
2013.11.10 毎日新聞
◇欧州「敵視」に怒り 日本強く出られず
米国家安全保障局(NSA)の盗聴・情報収集活動が次々に暴露され、欧州連合(EU)本部や日本などの在外公館も対象だったと報じられている。米国は「対テロ目的で限定的」と説明するが、収集範囲はあまりにも膨大で、欧州側は不信を深めている。同盟国ながら「標的」になったとされる日本は、「事実なら許されない」と事態を重大視しつつ、まずは米側の説明を待つ構えだ。 オバマ米大統領は1日、訪問先のタンザニアでの記者会見で「どの国の情報機関も情報をつかもうと活動している」とNSAの正当性を強調したうえで、同盟国の信頼に背く情報収集は行っていないとした。 6月17、18日の主要8カ国首脳会議(G8サミット)ではNSAの活動を「テロ対策」と説明。情報収集の合法性とテロ防止への貢献を強調し、政権批判に対抗してきた。 しかし、今回明るみに出たNSAの活動は、同盟国を含む各国の在外公館からの盗聴で、「テロ対策」との説明は説得力に欠け、欧州諸国は強硬に「説明」を要求している。また、米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者(30)に次々に極秘の情報収集活動の実態を暴露され、スパイ容疑などで訴追しながらロシアに逃亡され身柄確保もままならない失態に、米世論は不信感を強めている。 米調査機関ピュー・リサーチセンターと米紙USAトゥデーの世論調査では、48%の米国民がNSAの個人情報収集をテロ対策として容認できると回答する一方、CNNテレビの調査では50%がオバマ大統領を「信頼できない」と回答し、5月の調査から9ポイントも跳ね上がった。 英紙ガーディアン、米紙ワシントン・ポストなどによると、NSAの民間を標的にした極秘情報活動では、2007年1月までの約5年間に米国在住者3018人、外国在住者3万4646人が標的になった。世界中の大容量通信回線が接続される米国は、情報収集がしやすい環境にあると言える。一方、NSAによる在外公館の通信傍受は、日本やEUなど38の大使館や国連代表部に及んだと報じられた。ドイツでは「月5億件」の通信が傍受されたと独誌シュピーゲルは指摘している。【ワシントン白戸圭一、西田進一郎】
◇仏大統領、FTA交渉延期言及
NSAの盗聴活動報道に、欧州側は激しい怒りを表明している。メルケル独首相は1日、報道官を通じ「今は冷戦時代ではない。友人を盗聴することは受け入れられない」と述べ米国を批判。オランド仏大統領は、来週から始める米EU自由貿易協定(FTA)交渉を先延ばしすべきだと発言した。 独誌シュピーゲルによると、NSAは各国を、特に関係が近く傍受対象としない「第2グループ」と、対象とする「第3グループ」に区分。独仏は後者に含まれていた。同盟国のつもりが、「敵」と同一視された形だ。欧州諸国が参加するブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部からEU本部を盗聴したとも報じられ、欧州大陸諸国の対米不信は深まった。 一方、欧米の情報機関はお互いに情報を融通しあっているとされる。ドイツ連邦情報局(BND)は、米国からの情報提供で国内テロを未然に防いだ事例もあり、米国をどこまで追及できるかは不明だ。独検察は調査を始めたが、DPA通信によると「まだ正式捜査ではない」(報道官)という。 EU側は11年から米国に「個人情報保護協定」を結ぶよう要求、交渉を続けている。テロ対策で個人情報を米国に渡す場合、目的、使用方法を裁判所が限定する内容だ。テロ関連事案でも個人の人権を尊重する発想がEUにはあり、米国との交渉は難航している。【ブリュッセル斎藤義彦、ベルリン篠田航一】
◇安全保障情報、米頼みの側面
NSAが通信を傍受していたとの英紙報道を受け、日本政府は外交ルートを通じて米側に真偽の確認を求めている。ただ、同盟国である米国への配慮に加え、EUのケースと違いNSAの盗聴目的が不明のため、米大使を呼ぶなど強硬な独仏両政府とは一線を画し、まずは米側の説明を見守る姿勢だ。 「報道が正しいと確認されれば、同盟国だからといって許されることではない」。外務省幹部は事態の重大性を指摘した。ただ、10年ほど前に在米日本大使館に勤務した省庁幹部は「国益のためならどんな情報収集もやるのが海外の常識。米国は同盟国だが、大使館が盗聴されていたとしても全然驚かない」と話す。政府は在外公館に秘話装置付きの電話や盗聴ができない部屋を設置するなど、以前から対策も講じてきた。 米国との関係では、日本は軍事面を含む機密情報の交換を担保する情報保護協定を締結している。安全保障面での情報収集は「米国頼み」(外交筋)との側面もあり、傍受を厳しく非難した独仏ほど強気に出られない事情がある。 ただ、経済・通商面では日米の利害が対立する場面も多い。甘利明環太平洋パートナーシップ協定(TPP)担当相は2日の記者会見で、TPP交渉への影響について「直接的な関わりはない」としたが、「日本は情報流出に関し脇が甘い。各国が国益を踏まえて相当なことをやってくるという緊張感をもっと持つべきだ」と強調した。早稲田大学大学院の春名幹男客員教授は「経済、通商分野の情報が盗聴されたなら抗議すべきだ」と指摘する。
政府は大使館などを通じて米側に事実確認をしているが、米側が傍受を認めた場合でも、事柄の性質上やりとりの詳細は公表しない方針だ。【影山哲也、岸達也】