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Historical Archives

#003 3年目の3.11に当たり、福島から訴えます

a citizen in Fukushima, Japan 

2014.3.2

【 私の意見 】

 

1 原発事故は収束せず

 

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 福島第一原発事故は収束していません。いまなお継続中です。

 現在、4号機燃料プールからの燃料棒の取り出し作業が今年末まで続けられていますが、作業途中に地震が発生したときの燃料棒破損による放射性物質の大量飛沫拡散、1000基に及ぶ汚染水タンクは傾斜許容度5/100という危うい仕様(通常1/100以下が技術的許容度)とされていることに伴う、地震による倒壊及び大量の汚染水の海洋への流出懸念、豊富な地下水脈による脆弱な地盤に建設された原発施設の地震による倒壊の心配など、何らかのアクシデントがいつ何時、再発するかどうか分からない危険な状態が継続しており、一時も目を離すことは出来ません。

 フクイチ原発事故という人類の「負の遺産」がもたらしている現実を、世界も貴学会も,決して目をそらしたり黙認してはなりません。

 

2 マスメディアの罪

 

 汚染水の問題は時折報道されますが、福島県では、厳しい現実が継続しています。

 それにもかかわらず、概して、福島原発事故の結果、福島県で「今」何が起きているか、マスコミで全国報道されることは極端に少なくなりました。国内メディアは実情を無視し、あの過酷事故は、全国から忘れ去られているようです。むしろ、外国メディアの方が的を射た報道をするケースが多いのです。

 「脱原発」が争点となるはずだった東京都知事選では、マスコミは政府の争点隠しに終始協力しました。

 「原子力ムラ」の影響が、マスコミ界にも、いかに浸透しているかを物語っています。

 

3 事故の教訓

 

 民主党政権は20年後の脱原発方針を決めましたが、もともと原子力発電推進政策を推進してきて責任があるはずの自民党は、政権を奪取後、逆に、新たなエネルギー政策基本計画政府案で原発の再稼働を進める意向を示しました。原発の海外輸出を含め、事故の教訓が全く活かされていません。

 

4 除染と低線量被ばくの問題

 

 避難区域の除染は遅れに遅れています。国は昨年暮れ、避難指示区域の住民の全員帰還をあきらめる決定をしました。町村そのものの存在さえ許されない事態になることも考えられます。

 仮設住宅に住み、あるいは自主避難で全国にちりぢりになり、将来に希望を持てない避難住民は、帰還するか否か,移住するか否かで苦痛、苦悩の日々を送っています。それ以外の地域でも、比較的高い線量のあるところでは、住民は、表面的には以前の生活を取り戻し、自らの思いを口に出さないまでも、常に低線量被ばくの不安を抱えながら生活しています。

 政府・自治体(県・市町村)は、年間1ミリシーベルトの目標があるにもかかわらず、線量の目標値を示さず発注し、大手ゼネコンに除染費用の巨額支出を続け、地域に住民を帰還させる作戦を展開しようとしています。

 住民の低線量被ばくの懸念を払拭する答えが見つからない以上、この試みは正しくありません。人権侵害に当たると考えます。

 

5 中間貯蔵施設

 

 汚染土壌などの中間貯蔵施設を被害地元に建設しようとしています。

 発生者(東京電力)の責任において処理すべきなのに、被害地元にさらにリスクを負わせる道理が、はたしてあるのでしょうか。

 

6 文明史観を変えよ

 

 私は、脱原発運動家でも原理主義者でも、右翼・左翼でもありません。平凡な一市民です。

 しかし、この事故を経験して、本来、人類が踏み込むべきでなかったパンドラの箱であり、人間の手に負えない原子力発電というものに社会が依存する文明史観を、いまここで改めるべきと考えるに至りました。

 

7 脱原発 

 

 脱原発はイデオロギーではありません。人間の命を守るための最低限の思想です。

   福島県は世界に向けて「脱原発」を宣言しました。

 貴学会は、この問題を過小評価し、矮小化すべきではありません。  

 自然科学だけでなく、人文科学をも総動員した真摯な議論を期待します。

 

 

【 福島のいま 】

 

◎ 福島県では、今なお約13万6千人(ピーク時16万人以上)が県内外に避難しています。うち県外避難者は2013.1.16現在48,364人(ピーク時62,831人)です。全県民の約7%が避難生活を送っています。

 

◎ また、子ども3万人以上が県内外に避難しています。うち県外に避難している子どもは約1.7万人です。

 

◎ 福島県の震災関連死者数は、避難長期化で1,656人となり、直接死1,607人を超しました。その9割は高齢であり、避難区域の住民です。生活が一変した上、帰還など将来の見通しが立たずにストレスが増していることが要因となっています。

 

◎ 課題は、1広域避難、2避難の長期化、3避難先の多様化と孤立、4家族離散(震災前は一緒に住んでいた家族が離散をしたケースが全体の3割近くを占めています。とりわけ3世代以上の家族において離散する傾向が高く、48.9%が離散)が挙げられます。

 

◎ 東京電力福島第一原発のタンクで高濃度汚染水100トンが漏出しました。初歩的、原始的対応のずさんさと、その隠蔽体質がたびたび露見しているのです。

 

◎ 損害賠償に関し、原子力損害賠償紛争審査会による「指針」 は、被害者と加害者の自主的解決のための「最低限の目安」でしかないはずのところ、東電は、実務上の「上限」にコントロールしています。

 

◎ しかも、原子力損害賠償紛争解決センター(いわゆるADR)に仲裁を申し立てることになっていますが、このADRで指針以上の解決をした例は、ごくわずかです。さらに東電は、被害者がADRに申立中、賠償支払を一旦「中止」するという措置をとったり、ADRの和解案を拒否したりする事例も発生しています。

 

◎ 除染については、「除染特別地域」を指定して国が土壌や廃棄物の除去を行い、それ以外の地域を「汚染状況重点調査地域」として自治体が「除染実施計画」を策定・実施中です。

 

◎ しかし、国の作業は遅れに遅れ、工程表は2〜3年以上先延ばしにされました。自治体の除染も一部で行われていますが、人手不足などで遅れが目立ちます。このため、住民の不満が爆発し、昨年の市町村長選挙では、県都福島市をはじめ現職の首長が相次いで敗れるという異例の事態になりました。

 

◎ 福島県は2014年2月7日、東京電力福島第一原発の事故当時に18歳以下だった子ども(36万人)の甲状腺検査で、結果がまとまった25万4千人のうち75人が甲状腺がんやがんの疑いがあると診断されたと発表しました。

 発生率は通常100万人で0~2人程度と言われますが、この結果を見ると、福島県では、がんの発症率は1,750人に1人の割合となり、異常に大きな数字です。

 

◎ しかし、2014年2月、県民健康管理調査検討委員会は、甲状腺基本検査では「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価したほか、福島県で開かれた国際ワークショップでも、福島県民健康管理調査で見つかっている小児の甲状腺がんは「放射線の影響とは考えにくい」とする見解を示すとともに、1万人に2〜3人という現在の推移が続くとする考えを示しました。

 

◎ チェルノブイリ原発事故後の検査例から、小児甲状腺がんの発生は被ばく後4,5年経ってからという知見があるとしていますが、チェルノブイリでは、旧ソ連政府が最初の3年間被ばく実態を隠蔽し続け、小児甲状腺がん検査を開始したのが4,5年後になったという実態を軽視しています。

 

◎ 4号機から使用済み核燃料の回収が進む一方、増え続ける汚染水対策では、決定打を打ち出せず、また4号機燃料プールの冷却が初歩的な作業ミスで一時停止するなど、ずさんな対応が相次ぎ、厳しい状況が続いています。安倍首相が世界に向けて発した「福島原発はアンダー・コントロール状況」発言は大いなる虚言でした。

 

◎ 復興庁原発避難者向け復興公営住宅の第二次計画によると、 整備戸数は全体で4,890戸です。但し、人件費や建設資材の高騰などで入札が不調、延期になるケースが多数発生、整備が遅れています。

 

◎ オリンピック東京誘致に大騒ぎの影で、福島県民の棄民化が進んでいます。沖縄、水俣の構図に似てきています。核実験から60年を経過したビキニ環礁、マーシャル諸島の避難島民の姿ともダブって見えます。

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